久しぶりに下北。
ホントに滅多に来ないんだ、この街。
嫌いじゃなく好きなんだけど、よく知らないから来るとまだ緊張する。
外苑前での午後からの病院がものの5分で終了し、かといってあの辺りはどうも落ち着かない。渋谷も嫌だ。夜まで随分と時間があったが、とりあえず下北へ行けばもっといい気分になるだろうと、高校の頃通学に使っていた懐かしい井の頭線に乗って移動。
京王の渋谷駅は異常に立派になっちゃったけど、駒場東大前駅の雰囲気はそのままで、ピアノの試験当日の朝に私が上から下までまっさかさまに落下した(苦笑)長くて急な階段もそのままに、車窓を通りすぎる。
1時間ほど街をブラブラ。
いつも歩く街と違って、あっちでもこっちでも風景がいちいち語りかけてきて、シャッターを押すのが忙しい。全てが画になる気がする。
そう。
今日は、曽我部恵一さんのライブに行こう、と。
数日前、何故だかどうしてもどうしても無性に聴きたくなって、とっくにsold outになってたけど、ダメもとで「若干枚の当日券」に希望を託して出かけて行った。ダメならダメでいいさ。下北に来た、それだけでいい日に違いないから。
途中で寄った喫茶店を出て、まだ開場まで2時間近くあったけど、ライブハウス「440」は初めてだったのでちょっと様子を見に。開け放ってあったドアからおそるおそる覗いて声をかけると、テーブルに置いたパソコンをジッと見つめる男性がひとり。係の方を呼んでくださったので、当日券についておききしたあと、腹ごしらえにCCCへ行こうと駅のほうへ戻る。
CITY COUNTRY CITY 、ここは大好きなお店で、ときどきパスタを食べにくる。
下北に来たときは必ず寄る、というか、ここのパスタを食べに下北に来るというか。
このちょうどよい大きさの、いつ来ても空が見える明るい空間が好き。昔ドイツで住んでいた屋根裏部屋を思い出すんだ。
最初はなんで来たのか、さっき思い出した。ラーメンズ→やついさん→曽我部さんだった(笑)。
オーナーは曽我部さんなのだ。やついさんがしょっちゅうここのパスタの写真をブログにアップしていたのが、ものすごく美味しそうだったので。
今日は「オクラ、茄子、カブ、トマトのペペロンチーノ(フェットゥチーネ)」を、サラダとコーヒーを付けて。
本当に、いつ来ても、どれを食べても最高に美味しいここのパスタ。私は東京一だと思ってる。
もっと近所だったらきっと通っちゃう。
夕方来たのは初めてだったから、お気に入りの席から刻々と変わってゆく美しい夕方の空に驚いて、それだけでもう来て良かったと思った。ゆっくり美味しさをかみしめながら、ここは空が綺麗ですね、に始まって今日のライブのことなんかを、お店のスタッフさんとお話。
「入れるといいですね」と送り出され、のんびり歩いて440に戻る。開場までまだかなりの時間があったけど、長時間立って待つのは慣れている。(ライブとかフェスに行ってると嫌でも体力ついちゃう!)
私の後ろに並んだ、愛媛からの女性お二人とずっと楽しくお話できたおかげで、蚊と戦いながらもあっという間に時が過ぎた。スピッツのファンで嵐もフラカンも好きという彼女たち「マサムネさんはエレカシを正座して聴く」という有名な話から「宮本さんてホントにいつも白いシャツなんですか?」なんていう質問とか(笑)。
果たして、当日券組は全員入場成功。ラッキーだった。
毎月やってるこのシリーズ、いつもはいろんな人が複数出演みたいだが、今日ばかりは急遽曽我部さんお一人ということで、なおさら人気の回だったみたい。
最後列の立ち見覚悟でいたのが、これも運良くカウンター席の椅子に案内していただき、見晴らしも音も良くって嬉しかった。
3時間たっぷり、休憩なしのノンストップ。MCもほとんど無し。
私は曽我部さんの曲をほんの4〜5曲しか知らない。それも「聴いたことがある」程度。
けれど、昨年のアラバキでchaboさんのセッションにちょこっとゲストで出られた時、あ〜なんていい声でいい歌を歌う人なんだろう、と思ったのが心のどこかにずっと残っていた。
いつかライブでソロを聴きたい、それを急に数日前に思い出した。この人ならきっと、今の自分に何かすごくいいものを奏でてくれる、歌ってくれる、そんな気がすごくした。
だから、聴けてよかった。
ステージにふらりと出てきた曽我部さん・・・あ、さっき昼間パソコン見てた人だ(笑)。動画サイトで見てたPVとは全く別人のように細くなってらしたので(スミマセン)。
真夜中2時のマンションでも全然OKなくらいのPPPPPで響く声とギター、そして6本の弦がすべてふっとんで富士山のてっぺんまで聞こえるんじゃないかとおもうくらいのfffff。
この人のダイナミックレンジはいったいどうなってるんだろう。
だからお客さんの集中度もハンパ無く、まるでクラシックのコンサート会場にいるみたいだった。
今日は特にほぼ全部アコースティックだったからかもしれないけど。
アコギ、エレキ、バンジョー、キーボード、ピアノ・・・1曲だけリズムボックスを使い、すべて弾き語り。休憩が無いからそのかわりにと、インプロみたいなピアノソロが1曲。それも和音で始まって途中から2声になって、途中チラッとサティが出てきたりして、たゆたっていていい感じ。
何曲やったのか、そしてどれもこれもタイトルすらわからない曲ばっかりだったけど、何時間でも聴いていられる気がした。
誰にもわかる言葉、けして(ヘンに)特別じゃないのに耳に残るメロディーライン・・・その歌をききながら、この人はすごく優しい人なんだろうな〜、なんて思う。
強烈な叫びでさえも。
MCや曲間と、歌っている時がまるで別人みたいにみえる、不思議なミュージシャンでした。
ラストでちょっと激しい曲を続けた後、最後に、サニーデイ・サービスのもうすぐ出る「One Day」が歌われた。生まれ育った場所のイメージもあるのかな、「海」が出てくる曲が多い気がする。そしてそれがとても似合っているなあ、と。
タイトルわからなかったけど「君が主役、たったひとりで脇役もなく舞台に立つ君のために、歌っておくれ」みたいな詞のと、「昨日までのことはすべてマンホールに流れ」みたいな感じの詞の曲が印象的だった。
アンコールには「さっきQUEでもらったチラシの裏に書きかけの曲があるので・・」と静かな弾き語りを。そして「ここまで」と静かにストップ。
バンソウコウを探していたんだなあ、私。
今日、下北で、それを見つけた。
しかも、ものすごく上質な。
今日起きた全てのことにありがとう。
曽我部さんにもありがとう。
出会った人たちはみんな幸せな一日だったろうか。
あ。
夜が明けちゃった。
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