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初めての火の国

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週末、合唱団とのお仕事で熊本へ。
小雨の羽田、8時15分発熊本行き。新しいD滑走路まではバスなのだが、搭乗前に皆が「787、すっげ〜」と写真を撮りまくっていたので、何だかわからないけど一応撮っといた(笑)。
ボーイング787ドリームライナー。後で調べたら、な〜るほど「中型機なのに航続時間が長い」ので国際線でもOK、という新型の優れものらしい。
乗ってみたら、窓が電子カーテンだったり、トイレが温水便座付きだったり、いいことはいっぱい。だが唯一不満だったのは、エコノミーの椅子のリクライニングが背もたれは倒れず、座席部分のみが前にスライドできるだけという、あんまり「リクライニング」じゃない感じ。天井は高くなったというのに、まだちょっと圧迫感がある。隣りのオジサンもCAさんに文句いってたな(苦笑)。

空港には合唱団(スコラカントールム熊本)の方がお迎えに来て下さってて、車で市内へ。
今回のリハは2月の本番を行う日本ルーテル福音健軍教会。高い天井とステンドグラスが印象的。ガルニエのポジティフを使ってシュッツ、バッハ、ブルックナーを練習。
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午後遅く、今度はチェンバロのある市内のお寺に移動。これも本番使わせていただく久保田さんのフレミッシュ。最近時々あるが、お寺の本堂にチェンバロって本当に似合う。
ここではモンテヴェルディを練習。
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練習後、団員の皆さん、指揮の雨森先生とご一緒にお食事。楽しい時間を過ごす。

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翌朝早起きし、ホテルの朝食をとりながら見事に雨が降りしきる外を眺めやる。ま、雨だって構わない。かねてから訪ねたいと思っていた藤崎八旛宮を目指すが、その前にホテル近くの手取天満宮に寄る。大通りに向かって大きな赤い鳥居が建ち、そこからまっすぐ奥にある趣のある菅原神社だ。
ご神木の立派な銀杏が美しい。
今は静かだが、さすがに受験シーズンには賑わうらしい。
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「あせかき地蔵堂」、これは長安寺というお寺がここにあった名残らしい。国内に天変地異が起きた時にこの阿弥陀如来様がどうにか皆を救おうと汗をふきながら力を尽くされるので、この石が濡れる、という言い伝え。

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雨の中、てくてく歩くこと20分ほどで藤崎八幡宮へ。
毎週欠かさずみている大好きな番組「GRACE OF JAPAN」で数週間前にやったばかりのお宮なので、楽しみにしていた。お〜、テレビで見たこの光景!
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八旛宮の「まん」の字は写真のとおり「方」ヘンのこの字。後奈良天皇の勅額の通りになっているとのこと。熊本城の鎮守だった由緒あるお宮。
935年に朱雀天皇が、九州鎮護のために京都の岩清水八幡宮から分祀したと言われている。もともと熊本城のある茶臼山にあったけど、お城同様西南戦争で破壊され、神社は今の地に移されたという。
大通りに面した大きな鳥居からまっすぐに、松が植えられた参道が延びる。雨の日曜午前中、人も少なく静か。
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立派な二の鳥居と楼門をくぐると、正面に拝殿。そして奥に申殿(もうすでん=宮司が祝詞を奏上するところ)と本殿。
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ただあまりに雨が冷たく寒かったせいもあって、摂末社を細かくみるのをすっかり忘れてしまい、肝心の「藤井恒社」を見損なってしまったな〜、「藤崎」の名前の由来なのに(藤崎宮の社紋は下がり藤)。回廊に続いてある神楽殿は見られたけど、能楽殿は閉まっていて見えなかった。お天気がよかったら、元あった場所の楠も見に行きたかったな・・・次回いこっと。

さて、引き返していざお城へ。
地図でみるとけっこうありそうだが、歩いてみるとそうでもない。
歩いてみて、この街の大きさの感覚にちょっとした懐かしさを感じて気づいた。そう、ヴュルツブルクの感じ(笑)。おそらく熊本のほうがちょっと大きいとは思うけど、川があって山があって、山の上にお城があって・・・なんか似てる気がした。
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須戸口門から入るころ、どしゃぶりに近くなる。係の人に効率よい巡り方を教えて頂いて中へ。
そびえる石垣を見上げながら、とりあえず天守閣を目指す。
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わざわざ歩きにくくバラバラなサイズに作られた階段。見た目には芸術的だ。
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この入り口を入ると急に中が近代的になる。
ポイントポイントに、あ、テレビでよく各地のお城の紹介するときにみるコスプレした戦国武将さんたちが・・。これが「おもてなし隊」かあ、なるほど〜。武将っぽい話し言葉を崩さないまま、観光客の通行整理をしたり、坂を登るお年寄りの手をひいたり、雨のなか甲斐甲斐しく働いていた。
(しかし、それとは別に所謂「コスプレ」軍団の若い女子たちの集団が、かなりの数お城の各所で『撮影会』をやってたのは個人的には残念だったな。誰にでも開放されてる場所なのだから誰が来てもいいんだけど、見学のためのスペースや通路を大量の荷物で塞いだり、撮影のために広がって邪魔になったり、キャーキャー騒いだり、かなり迷惑だったのも事実。何とかならないのかな、あれは。おもてなし隊の武将さんたちは、優しく注意してはいたけれど)
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さあ、辿り着いたよ。
おっきい。お城の下に樹などがなくだだっぴろいので余計「そびえてる感」が大きい。
再建されたこの天守閣の中は各階展示になっていて、お城の模型、各時代のお城や熊本の歴史がわかるようになっていて、展示以外は撮影OK。
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もともとこの位置にあったというトイレ・・・っていうより「雪隠」っていったほうがしっくりくるな(笑)。
展示に隙間からこんな眺めも。
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最上階からの眺めは、雨でもなかなかだ。東西南北、さすがの見渡し。
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すぐ眼下では、まだ修復が進んでるのが見える。
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天守閣から降り、本丸御殿を見にゆく。ここは行政と生活の空間だったところ。
復元が3年前に完成したばかりのピカピカの御殿には、靴を脱いであがる。新しい木材や畳の香りがいい。
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台所。
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ところどころに風情ある屏風など。
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視界が開けたところにこの風景。近くにいたおばさま達が「あ〜、これよこれ、よくあるじゃない、こっちから向こうまでパンパンパンって襖開けながら進んでいくやつよ〜!」と興奮していた(笑)。そうそう。
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奥へ向かって鶴、桜、桐、若松・・・と名づけられた広間が続く。
そして見事だったのは縁側。ここからは市中を一望できる。
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「広縁」「落ち縁」「濡れ縁」の3段から成る縁側。「濡れ縁」しかない実家の縁側をな〜んとなく思い出していた(笑)。小さい頃は意味もわからず「ぬれえん」と呼んでいたっけな。歩きごこちが素晴らしい。歩いただけで、それがどんなにいい木なのか素人にもわかるくらい。

そして観光客皆が目指す、話題の一番奥の広間「昭君之間」。莫大な予算をかけて復元された豪華な装飾。係の人に訊いたら、手前の広間もそのうちにその名の通りの装飾が施される予定はあるというが、ただ予算が・・・とのこと。100年後でも、いつか全てが描かれるといいですね。
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そして、この欄間にも力が注がれているとのことだった。光と影さえも計算され尽くした美しい細工。
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茶室。
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扉絵。
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御殿から出て、止まぬ雨のなか宇土櫓に向かう。
ちょっとした石垣も、雨のお陰で違った顔になっている。
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途中「首掛け石」や「地図石」などのスポットも通過。
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本丸天守閣は、後ろから見ても壮大。傘も気にせず、顔が濡れるのも忘れて思わず見上げてしまう。
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さあ、宇土櫓に着いたよ。
ここには殆ど人が居ない。寒い中、入り口の係のオジサンたちが傘と靴用のビニール袋を手にお客さんが来るのを待っていた。
(つづく)
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# by saskia1217 | 2012-12-03 22:03 | 感じろ、考えろ、思え! | Comments(0)

楽しい時代劇

「のぼうの城」のネタバレしてます。



先週やっと、「のぼうの城」を観てきた。
平日の午前中だったから余計だったのだろうが、年配の方ばかり20名弱・・・。
同じ映画館の「エヴァンゲリオン」は若い人で長蛇の列。むぅ〜ん。

予告からして、いわゆる「厳格な時代劇」ではない雰囲気は知っていたけど、観たらやっぱり楽しかった。ところどころ、ちょっとマンガチックすぎるシーンも無くもなかったけど、そういうものだと思って観れば気楽に楽しめる。
キャストも、正直最初は萬斎さんと佐藤浩市さん以外特に興味は無かったのだけど、石田三成の上地雄輔さんが意外に良かったかも。あの、何かちょっと気が弱そうに描かれてるところが合ってたな。
なんといっても、観た後一番印象に残ったのは佐藤浩市さんで、やっぱり存在感があるというか、どんな雰囲気の映画でも、どんな役でも、深い印象を残す演技が出来る人なんだなあとあらためて思い知らされた。特にファンということでもなかったけど、映画でもテレビでも、いつでも「あ〜よかったなあ」と思う俳優さんなんだよね。だから今回も楽しみだったのだ。
昔仕事中に落馬して結構な怪我をされて以来、少し恐怖感もあったと何かのインタビューで話していらしたけど、今回あらためて乗りなおしたという乗馬もじつに見事で爽快。
成宮寛貴、山口智充ご両人もそれぞれ熱演だが、上滑りするようなところもひっくるめて各々、二段階の意味で役に合っていたと思う。
お姫様役の榮倉奈々さんは、この作品ではちょっと・・・う〜ん。私の個人的な感想だけど、演技も棒だし、スタイルが着物に似合わないし、役に合ってないというか印象が薄いというか・・・描かれ方が難しい役なのかなあ。以前、井浦新さんと共演してたテレビドラマでは印象的ないい演技をしてた記憶があるから、向き不向きなのかもしれないけど。
豊臣秀吉の市村正親さんは、入浴シーンで「テルマエ・ロマエ」を思い出してしまってちょっと笑っちゃったけど、出演時間が短いわりにはインパクトがあったですね。
その市村さんの秀吉が水攻めをする冒頭のシーンは、やっぱり昨年1年公開を延期したということが正解だったと納得させられるリアルさ。それでも洪水シーンはだいぶ変更したりカットしたりしたそうだけれど。後半、忍城の水攻めシーンもかなり迫力ありました。
農民たちの田植え歌なども、今見るとその少し芝居がかった空気に驚くこともあるけど、きっと本当にこうだったんだろうなあ、みたいなものも伝わったし。

一番面白かったのは、昔の戦法がいろいろ出てきたことで、知識として知ってはいても実際はこういう戦い方だったのか〜といちいち感心。
火縄銃は一度発砲したら次に点火するのにものすっごい時間がかかるもどかしさとか、そのことを巡ってのタイミングとか、城内に攻め入る、または封鎖するのにどんな策があったか、とか。
しかし、洋の東西を問わず、大将どうしの名乗りをあげてからの一騎打ちには、悠長という以前に気品とかプライドとか礼儀とか、侍や騎士の生き様を感じるね。

総じて、観てよかった〜楽しかった〜、だったけど、ところどころ何人かのキャストのセリフが早口すぎて聞き取れないところがあったのがちょっと残念。
萬斎さんは全て鮮明で気持ちよかったけど。そして、最初からあの「踊り」が想定されていたなら、やっぱりこの役はこの人しかいなかったでしょうね。
つい数ヶ月前に飛鳥山の薪能で拝見したお姿や、学生時代(私はひとつ下の学年だった)、学内を凛として歩いてらしたことなんかを思い出してました。

全てのストーリーが終わってのラストシーンに、現代の行田が映るとは思ってなかったからビックリ。当時の名残の地名が次々と映るのがよかったですね。
小学校低学年のとき遠足で行ったさきたま古墳。あの頃はただのだだっぴろい丘で、何が面白いんだろうと思ってた。とはいえその数年後、世間を賑わせた「邪馬台国ブーム」にすっかりハマることになるのだけど(笑)。子供の頃からどんだけミーハーなんだ、自分。
石田堤、見に行かなきゃなあ。
埴輪もつくりにいきたいし(笑)。

そのバックにフルで流れる、エレカシの「ズレてるほうがいい」。
映画を見て作ったという経緯が、その話をきかなくてもわかるくらい「ピッタリ感」がすごくて、古墳の映像を見ながらその歌詞をあらためてかみしめながら聴いた。
(ん〜、音量が物足りなかったぞ、池袋ヒューマックス。いつも自分が聴いてるのが大きすぎるのか?・・笑)

そう、もうひとつ。
この映画に描かれている「でぐのぼう」成田長親は、その哲学や人間性ひっくるめて誰かに似てる・・と観ている間中思っていたが。
遠藤周作の「おバカさん」。
あの主人公にちょっとだけ、部分的かもしれないが似ている。
あれはたぶん「キリスト」なんだけどね。

たまにはいいよね、映画。
# by saskia1217 | 2012-11-25 04:20 | 感じろ、考えろ、思え! | Comments(0)

秋の日の池袋

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今週の初めの池袋・法明寺。
ジュンク堂あたりから鬼子母神にかけての界隈が好きだ。
威光稲荷と法明寺のコンビは、どの季節にいっても素敵。
一歩明治通りに顔を出すとあの喧噪なのに、ここは別世界のように静謐な空気が流れる。
黄金の樹々と青い空、落ち葉の匂い、たくさんの猫との会話。
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ここまでくればもう、文字通り数歩で鬼子母神。
行ってみてから気がついた、そうだ、あの大銀杏はちょうどいま見事。
夕方、暮れかかる手前の境内は少し薄暗くひんやりしていたけど、そして相変わらずお堂の中は目をこらさなければ見えない黒さだったけど、次から次へと引きも切らずにお参りに来る人たちの温もりで、あったかいものが流れていた。

そうそう、この日のランチは「ラシーヌ」の「パワーランチ」。
雑誌やテレビに紹介されて久しくても、相変わらず超混み合うこのパン屋さんは、ジュンク堂の角を曲がって少し行ったところにある。
名前のとおり、ちょっとお腹いっぱいになりすぎたくらいパワーのあるプレートだった。
パンのおかわりが効いたかな・・・。
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# by saskia1217 | 2012-11-24 03:51 | 感じろ、考えろ、思え! | Comments(0)

いろいろしみじみ勉強になった夜

もう先週のことになるけど、とあるライブにヨガ師匠が出演されるというので、そういやダンスはいつも見ているけど歌っているのは聴いたことがないな〜、と思い、聴きにいってきた。
高田馬場の四谷天窓。
四谷なのに高田馬場・・・・って、誰もが思うよね、やっぱり(笑)。
この日出演したあるアーティストさんも、これをまんま歌ってたよ、♪四谷なのに〜なんで高田馬場〜♪って。
ま、もともとは四谷にあったロック中心のライブハウスの、こっちはアコースティック中心の2号店だったのが、6年前にここに移転したらしい。

で、当日行けばふつうに入れるかな〜と思いつつ、一応確認しとこ、と思い前日に電話してみた。会場に電話すれば普通にチケット予約が出来るものだと思っていた自分。
電話したら「お目当てのアーティストはどなたですか?」という、思っても見なかった質問がかえってきた。
「は?」「はい、あのどなたを見にいらっしゃいますか?」「は?・・・あ、あの〜」「はい・・・(と優しく待機している係の人)」「特定の誰かってことじゃないんですけど」「・・・・」(以後なが〜い沈黙。以下略)
知り合いが出るってのは事実だけど、特に誰が目当てってわけじゃないし、全員を同等に楽しみに行きたいんだから、正直なところ正しくは「特に誰でもありません」て答えたい。
ああいう複数の出演者が出るライブって、それぞれに割当のチケット数があるんだってね。そんなことライブ終わってから知ったさ。
今まで殆どワンマンライブしか行ったことなかったし、何組かの対バンでも大抵イープラスとかぴあで買ってたからさあ。
モノを知らないってのは困るねえ(苦笑)。

この日のライブの主催者は石ヶ森光政さんというアーティストさんで、その方を中心に3人の出演者がそれぞれ共演したりソロをやったり。
で、3日前に急遽決まったゲストが石野真子さん・・・だったもので、その往年のファンの方々が大勢みえるのでは(前回もこの組み合わせで結構混んだという話)とうっすらは予測していたが。
ええ、思った通り、50〜60代とおぼしき男性が多数、開場時間に詰めかけてた。会場に入ると彼らは速攻「支度」を始めた。石野さんの名前入りの昔の暴走族の特攻服みたいのを着て、頭にも名前入りハチマキ、手にはおっきなペンライトみたいなの・・・でもって早速「コール」の練習。
いや〜、まだ生き残っておられたんですね、昭和名物「親衛隊」。

小さい子供たちも来ていて、ライブオープニングは「子供の時間」。ギター石ヶ森さんとヨガ師匠青田さんが歌い踊る「ホットケーキの歌」は、シンプルでいい歌だったし、ダンスもけっこう強烈。あの狭い空間で、そして最前列のお客と1mくらいしか離れてないとこで男2人が踊るのもちょっとコワイものがあったが、その振り付けと表情に子供たちはキャ〜キャ〜大喜び。
沖縄出身のアーティスト兼田優一さんはギター弾き語りで「チューリップ」フルバージョン(ひっさしぶりにきいたよ、チョウチョが出てくる3番まで・・笑)や「アンパンマン」などをいい声で披露。「ご一緒に〜」歌いたかったけど、アンパンマンて歌詞知らないのよ・・・。
そして石野さんがラフなパーカ姿で登場、オジサンたちの熱狂的コールに観客がビビるなか、ゆったりした笑顔で1曲。ついこないだまでメジャーでバンド活動していたという酒井由里絵さんも、軽くピアノで参加。

子供の時間のあとは、アーティストそれぞれが順番に持ち時間。
石ヶ森さんはギターを弾きながら、酒井さんはベースで何曲か。女子のベースってやっぱりいいですね。もし自分がバンドやるなら絶対ベースはやらないけど(・・もうたくさんだよ、低音担当は・・笑)。
石ヶ森さんの歌はサワヤカ系というか前向き系というか、メロディーも歌詞も綺麗な感じ。なんか「フォーク」のイメージそのままというか。声も特に強い個性があるという感じではなくて、素朴な響き。近距離で聴くからなおさらなんだろうけど、お部屋で歌ってくれてるような「普通」感。

兼田さんは沖縄の方によく見受けられるハリとツヤのあるピッカピカの声の持ち主で、こちらもやはり前向き系。この日やった曲がたまたま全てそうだったのかもしれないけど、このお二人はよく共同作業をされてきたようで、あ〜そのあたりが合うのかなあ、と思ったり。
こちらは「お客さんを参加させる」タイプなので、まあ、そういうのが苦手じゃない人にはとっても楽しいんだと思う。あ、私も普通にやる方ですが、あれって分量とか長さとかタイミングとかが微妙に難しいんだよね。やりすぎると飽きちゃったり嫌になってきちゃったり。
ただ、お客さんに対するサービス精神と、グイグイいくパワーはすごいなあと感心。

青田さんはギター弾き語りで、平家物語の扇の的のくだりを曲にしたオリジナリティー溢れるひととき。文語だったことも手伝って曲冒頭あたりはちょっとエピック期のエレカシ風味。そのうち那須与一が矢を放つ段になると、より「語り」が多くなり・・・ライトを浴びて、ものすごく気持ち良さそうでした。ギターもよかった。
あとから話を伺ったら、結構ギリギリまで苦労して作られたとか。「物語り」って、緩急のリズムとか、緊張と弛緩をどう配分するかとかが難しいと思うなあ。
また他のオリジナルも聴いてみたいです。

石野さんのソロは石ヶ森さんのギターにのせて。
親衛隊垂涎のレア曲(?)「わたしの首領(ドン)」は、連絡行き違いのせいで急遽決まった出演に焦った石ヶ森さんが3日前に動画サイトからアレンジを取って「さっき合わせた」っちゅう、緊張感溢れる熱演。
石野さんは私より年上なのだが、さすが、あの近距離で拝見しても綺麗で、というか可愛くて、スレンダーで、何よりも笑顔と立ち居振る舞いと、そしてそこここで発言するコメントに余裕があって気が利いてて、すべてが終始ホワンとした優しさに包まれていて、感銘を受けましたよ。
ものすごく女性らしい。何もかもがチャーミングなんだよなあ。
ホントに一世を風靡したアイドル、筋金入りですよ。
あんなふうに歳をとりたいものだ。

で、親衛隊などにはもちろん慣れていらっしゃるのだろうけど、あらためて目の当たりにすると、彼らに対する接し方がとても見事だったのがひじょ〜に印象的だった。
いいバランスで受け答えもしながら、いい感じで失礼なくあしらって、でも終始「ありがとね〜」と優しく声をかけながら。
親衛隊は彼らなりの気遣いで、他のアーティストそれぞれに「コール」をしてくれてたり、いちいち絡んでくれてたり、石野さんの出番が終わってもちゃんと最後まで楽しそうに参加していたり好感は持てたんだけど、何せ石ヶ森さんや兼田さんのちょい静かな曲でも、最後の音が終わるか終わらないかのタイミングで「○○ちゃ〜〜〜ん!」て大声出してしまうので、それだけがちょっと残念だったですね。明らかに不快感を示してるお客さんもかなりいらしたし。
でもまあ、彼らはずっとあれが「盛り上げる」ってことだと信じてやってきたのだろうから仕方ないんだけど・・・。
ん〜、正直、今後あの方たちが同席するとしたら、ちょっとあのライブは遠慮したいかも(苦笑)。石野さんのステージは好きなんだけどなあ・・・。

最後に酒井さんがピアノの弾き語りで何曲か。
「ラブソング」は殆ど作ったことがない、というのに個人的にはちょっと好感度アップ。
声もよく、今現在の若い彼女の素直な気持ちが表されてる歌詞。いまとにかく言いたいことはこれだ、ということはよく伝わったから、これから時を経て違うタイプの曲も書いてくれるようになるのかなあ、とか思いながら聴いてた。
メジャーだったというのもうなづける、今後を期待させる魅力がたしかにあった。
親衛隊のオジサンたちからも人気があって色々と声をかけられていたけど、彼女の反応が素直で、あしらい方も可笑しくって(「はい、次はかけ声がないほうがいい曲です!静かにきいてくださいね」なんて、可愛い感じで言っちゃったりするから)、こっちはスカッとしたな(笑)。

とにかく、石野さんご本人はもとより出演者全員それぞれが、あの親衛隊の雑音に嫌な顔ひとつ見せずニコやかに接して、で、まあなんとか自分の歌も守り切っていたのが、みんな偉いなあと思った次第。格闘してるみたいだったもの(苦笑)。ほんと、お疲れさまでした、と言いたい。プロはそうあるべきなんだけどさ・・・
でも、勉強になりました。

私は子供の頃そんなに歌謡曲をたくさん聴いていたわけじゃないし、誰かのファンだったこともないのだけど、それでも石野さんの歌は知ってたし、映像も脳裏に残っていた。
昔みたいにバンバンテレビに出てはいらっしゃらないけど、ライブ活動やその他のお仕事で生き生きと過ごされてる姿、もちろん10代の頃とは声も違うし(どっちがいいってことではなく)今は同じ曲でもどちらかというと自然体で柔らかい歌になっていること、けして「力いっぱい」ではないけど余裕があって優しいもので満たされていること、大きなステージでも小さなライブハウスでも変わらずに大切にして自分の魅力を出せるということ、お客さんに楽しんでもらうことに徹することができること、それがけして強引ではないこと・・・そんなことを目の前で感じることができてよかったと思う。
プロってそうだよなあ。
長く続けるってそういうことだよね。

そして「ファン」もね。
「長くファンでいること」についても、色々と想いを巡らせることになった夜。
いくつも「勉強」をしました。
正直、石野さんが出演されることにそれほど期待をせずに行ったのに、ライブ終了後結局なんだかんだいって彼女のパフォーマンスが一番心に残った、っていう事実。
特にファンじゃなかったのになんかファンになっちゃうような気分。
あっぱれ。

帰ってから動画を検索、この日も披露してくれたあの名曲の「新旧」。
ライブでは後者のパフォーマンス、ほぼそのままでした(これはきっと最近に近いステージなのかな)。
こうやって比べて見ると、私がこの日感じたことがおわかりいただけるかと・・・。
懐かしい「狼なんてこわくない」。うろ覚えだったこの右手の「狼」のフリ、ライブでは私たちに教えてくれながら歌う石野さんと一緒にやっちゃいました(笑)。



オマケ
「わたしの首領(ドン)」
※「首領」って・・・オジサンたちの特攻服と重なって、当時の「族」を思い出してしまう(苦笑)。
しかし「狼」もそうだけど、不思議と何度も聴きたくなるこの中毒性、阿久悠×吉田拓郎、恐るべし!

# by saskia1217 | 2012-11-22 03:16 | 感じろ、考えろ、思え! | Comments(5)

遠き社に想いを

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ある晴れた日、ようやく時間がとれて、楽しみにしていた「出雲展」へ。
週に2日、時には3日上野に来ているというのに、博物館、美術館、動物園にゆっくり来る機会がなかなかとれない。
見たい展覧会の看板を横目で見つつ、仕事に来る日はそんな時間は取れないから別日に来よう・・・なんて思ってるうちに期間が終わってる、そんなことの繰り返し(涙)。
でも、この日公園歩いてて思った。上野って・・・仕事じゃなくて来ると、ほんとにすっっごくのんびりしていいところなんだなあ〜、って。
いつも視界に入る範囲しか見ずに、駅から大学まで一目散に歩くし、帰りは大抵真っ暗だし(苦笑)。

国立博物館なんて特に、ホントに何年ぶりだったろう?
本館の展覧会に辿り着く以前に、もう庭園や樹々に目を奪われ、あまりの美しさに歩みが止まってしまう。
出雲大社、それは私が今、全国で一番行きたい神社。
由緒もさることながら、とにかくその佇まいが好きなのだ。鋭い角度で天に向かってそびえる千木と、無骨な力強さをたたえた鰹木、くすんだ木の色・・・私にとってドンピシャのその「神社像」に、平安貴族によって美しく飾られた朱色の社殿よりも、ずっと近しいものを感じてしまう。
出雲は、その一帯にあるいくつかの関係の深い神社も含めて、憧れの地。
今年は古事記編纂1300年、そして来年は60年に一度の大遷宮。
(しかしそうすると、来年は大変な年なんだなあ、伊勢も大遷宮ですからね。そうそう、来年の「神社検定」新設弐級のお題は「遷宮」だそうで・・・)

今回の展示物の中でお目当てだったのはやはり、2000年に大社の境内から発見された「宇豆柱」と、荒神谷・加茂岩倉の両遺跡から出土した大量の青銅器。
そして、大社の祭祀を代々担ってきた出雲国造家である千家家に伝わる諸々の品。

その品々のなかでも「宇豆柱」の存在を記した有名な「金輪御造営差図」の公開は貴重。鎌倉〜室町時代の記述。
出雲大社(もと杵築大社)の本殿が過去においてどのくらいの規模だったのかについては、宇豆柱が発見された今でも諸説あるらしいけど、今回も出品されてた大林組による復元模型はその高さを16丈(約48m)としたもので、これは上記の図に信憑性をおいたもの。
2000年の発見以来、テレビ番組や本でこの模型やCG画面、大林組による復元ドキュメンタリーなどでよく見てはいたけど、実際に目の当たりにしてみると1/10のこの模型の迫力はかなりだった。実寸だったらどんだけだろう!
そしてこの模型と向かい合って展示されていたのが、その本殿を支えていたであろう宇豆柱の現物。1本の直径が1〜1.35mの杉の木3本を一組の柱としてある。これも迫力あった。
さきほど「出雲大社の木の色が好き」と書いたけど、少なくともこの時代の柱はどうやら朱の跡もあるらしいから結構赤かったのかもしれない。
大国主大神が国を譲るのと引き換えに手にした社、このくらいのスケールがあったとしても当然なんだろうなあ。

次のコーナーの中心となっていたのは、ものすごい数の銅鐸、銅剣、銅鉾。いずれも国宝。
1984年に荒神谷遺跡から出土した358本という膨大な数の銅剣から42本が展示、ケースの中にズラッとならんだその景色は圧巻。これが互い違いに並んで出土したという写真を見ると、もっと驚愕。もとは金色に光っていたという復元模型も展示されていて、それが358本て・・・。
埋葬用にわざわざ作られた剣だが、これだけのことをされる埋葬者ってどれだけ力のあった人なのだろう?
そして翌年、そこから7mの地点で出土した銅矛16個の全てもここに。うち7本には「研ぎ分け」と呼ばれる、刃に美しい模様がつけられている。
その銅矛と一緒に出土した銅鐸6個。銅矛と銅鐸が1つの埋納坑から発掘された例はここだけという貴重な発見。いずれも高さ20㎝ほどのものだが、本物だと思うと一段とゾッとするものがあった。
それから1996年に、荒神谷から3.5キロ南東の加茂岩倉遺跡から出た39個の銅鐸からも展示。
いろんな大きさ、高さ、そして細かい模様。ひとつひとつじっくり見ると面白いんだけど、その数がすごいからクラクラしてくる。
これらの作られた場所、他の地方との流通事情など、込み入った、しかし興味深い話はいっぱいあるらしいので、これからもっと調べてみたいな。

他にも、美保神社に伝わる古筆手鑑、端正な美しさにうっとりする鰐淵寺の観音菩薩立像(台座に「出雲」の文字があり、これがおそらく現存する最古の記述)、佐太神社の平安時代の扇など、昨年のちょっとした神社の勉強で知った憧れの神社各社からの出品は、特に印象に残るものが多かった。
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それほど広くない展示会場を3度くらい行ったり来たりして思い残すところなく、建物をあとにする。
玄関を出ると、真っ青な空と明るい光に一気に現実世界に戻される。
あまりに美しいこの現世、2012年11月の東京に大きく深呼吸。
もったいなくて、大きなユリの樹の下のベンチに座って一休み。買い求めたばかりのパンフレットや絵はがきを見ながら、色々と反芻したり、覚え書きをメモしたり。
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日の当たる目の前のアスファルトを、のそりのそりとあちらへ渡ろうとする小さなコオロギが視界に入る。
大丈夫かなあ、無事に踏まれずにあっち側まで歩けるだろうか・・・そう思った矢先、勢いよく歩いてきた男性の足が真上に!
うわっ、やっぱり、と思ってもう一度見ると、コオロギはジッと動かない。
あ〜あ・・・寿命ってこんなもんか・・・と思う間にヨロヨロと歩き出したコオロギ。
生きてた!
そして反対側からやってきた別の男性が、再びフラフラ進むコオロギをじっと見ながら、ゆっくりと避けて歩き去って行った。

運命ってすごいよな。
土となり、空気となり、水となって消えていったおびただしい数の先祖たちとそのまわりにあったモノたち。
消えるのが当たり前だった筈なのに、はからずもこんなに遥かな時まで残ってしまったモノたち。
人間は、地球は、宇宙は、いったいいつまで続くんだろう。

そんな、中学生のときに毎日考えていたようなことをどうしてもまた思い巡らしてしまう午後。
ベンチから立って歩き出すまでには、けっこうな時間が必要だった。
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# by saskia1217 | 2012-11-19 20:25 | 感じろ、考えろ、思え! | Comments(0)

今日もまた日が昇る・・出かけてゆこう!


by saskia1217