そんなに急いで・・・
2006年 07月 07日
そのことはまぁ、やれやれという感じなのだが、そのニュースに入る前にキャスターが
「それでは次の話題。『りくじ』のニュースが入っています」
と言っていたのである。
私には聞き慣れない単語だったので、台所仕事の手を止めて、思わず画面に目をやってしまった。
そうなのか、「陸上自衛隊」のことを「陸自」というんですね。
初めて知った・・・
これはワープロソフトを打っていて素直に変換するところをみると、一般的に使われている「略語」なのだろう。でも私は今まで一度も聞いたことなかったので、ちょっと吃驚してしまったんだけど。
最近いろいろな人、特に自分より年下の人たちと話していると、本当に信じられない言葉に出会うことがある。で、説明をよおく聞いてみると、その殆どがいわゆる「省略された言葉」なんですね。
大学なんていうところでは、かなり頻繁にそんな体験をする。もちろん、私の学生時代にも、長ったらしい授業名とか施設名とかを自然に略していたことはあった。
「音楽研究センター」→「音研」
「ソルフェージュ」→「ソルフェ」
なんて、世間的にもごく当たり前の略語だろう。
しかし最近よく聞くようになった
「フランス語」→「フラ語」
には最初は吃驚したな。
フランス語はまだいいほうかもしれない。
「ドイ語」って、なんなんですか? 何語だ、いったい!?(・・・・=「ドイツ語」)
こんなのは可愛いほうかもしれないが、広い心を持ってしても(笑)さすがに許しがたいのは、
「あけおめ、ことよろ」
である。
なんなんだ〜〜〜〜〜っっ!
挨拶、それも目上の人に向かって、これを吐き捨てるように口にしている若者たちを見たときは、正直、日本も終わりだな〜、と思ってしまったよ。
挨拶は、あたたかいものである。
言葉は、発音したときに意味を失ってしまっていては、死んだも同然。大切な相手に屍を放り投げるようなものだ。
そんなことなら、いっそ口にしないで自分の存在を知らしめないほうがずっといい。
・・・と久しぶりにちょっとマイナス面に目がいってしまった。
でもこれは自分自身も十分やっているかもしれないことで、言葉は本当に大切に大切に扱わなければいけないなと思わされる。
特に自分の専門分野の話をしたり書いたりする時、相手に対しての配慮が足りなくなることは時々誰にでも起こり得る。例えば教会で、「ロマ書」という言葉を連発する牧師の話を聞きながら、その箇所を見つけようと聖書をくり続けているうちに、説教が終わってしまった、なんてことも起こる。(ちなみに「ロマ書」→「ローマの信徒への手紙」のこと。「ロマ書」という呼称は昔からあったので、これは牧師のみが悪いわけではないが、初めて聞いた人にとってはもちろんそんなことは知る由もない)
ま、「ドイツ語」って発音するくらいの時間は、みんなあるでしょうに・・・
まさに
「そんなに急いで何処へ行く?」
である。
たしかに、自分の関係している分野については、
そうでない人への配慮が足りなくなることはありえますね。
気をつけなければ。
「そのことばがわかる人=仲間内」というような感覚は、
当事者同士は楽で快適ですけれど、
そこへまじった部外者にはあまりこころよいものではない場合もありますものね。
私も基本的には安易な省略には大反対であります。
「あけおめ、ことよろ」
は失礼ですね。
もっとも、それが失礼になる場合とそうでない場合があるということを意識して、
かしこく使い分けができるならいいのかもしれません。
ほんとにまあ、TPOですよね。