「ほんとの」千手観音に会ってきた!〜仁和寺と御室派のみほとけ展@東博
2018年 02月 25日
先日やっと「仁和寺と御室派のみほとけ展」@トーハクに。
空海の三十帖冊子全巻公開が前期、葛井寺の千手観音をはじめとするいくつかの秘仏が後期…で残念ながら2回は行けず、1041本の手を見たくて後期に!
しかーし。
みんな見たいものは同じ(笑)たぶん。
そしてみんな「◯年に一度」とか「秘仏」とか好き。
ツイッターで混雑状況見ながら、まーいつ行っても並ぶのは仕方ないと覚悟しながら出かけた。この日は幸い暖かい晴天、待ち時間20分はそう辛くない…が、中が物凄い混み具合。
ロッカーがなかなか空かないから皆ダウンコートや帽子、着たり持ったり、リュック背負ったりで一段とぎゅうぎゅう。
日本の博物館美術館てなんであんなに混むんだろう…ルーブルとかそんな混み方見たことない。
もっと快適にストレスなく、ちゃーんと展示物が観たい!(心の叫び)
運良くロッカー見つけ身軽になったので、めげずに突入。
仁和寺の歴史…さすが代々天皇が門跡を務めただけあって、いろんな天皇の肖像画や自筆の書がズラリ。
立派に装幀された昔の人の手紙見るとき「あー、本人は、何百年も経ってから見ず知らずの人にこんなプライベートな手紙を見られるなんて思ってもなかっただろうな」とちょっと可笑しくなる。
実際にどんなものだったのかよくわかっていないという密教の秘密の修行法が書かれた「孔雀経」が興味深かった。
その本尊である孔雀明王の像も何か不思議な感じで。
そういえば、閻魔様で有名な深川の法乗院も孔雀に乗った方がいた気がする…
孔雀明王…あそこもたしか真言宗だったなぁ。
大きな大きな曼荼羅、空海さんの修行を思い出す虚空蔵菩薩像、背後の菩薩が前の仏様を抱いている珍しい構図の五秘密像…
「白描図像本尊図」という、いろんな仏画のいわゆるお手本「ひな型」が大変面白かった。いずれも中国からもたらされたものだけど、キリスト教美術でも同じように聖人たちの立ち位置や配色など構図の定番て決まっていたことを思い出したり。
密教で使う法具も、元からもたらされたもの、鎌倉時代のものなどいくつか展示されていたのだが、それらは大変美しく細工も凝っていて、もはやほぼ美術品のような感じ。
最近、実際に真言宗の法具を見せていただいたり説明していただいたりする機会があったのだが、普通お寺で使っているシンプルなものと役割は変わらないはずなのに、こんなふうにガラスケースの中で照明が当たっているのがなんだか不思議だった。
仁和寺が持っている医学薬学関係の書物も大変興味深かった。
空海さんのことを考えれば当然だけれど、仏教、寺と言うものがただ感覚的な意味での信仰、祈祷という概念だけでなかったことを実感させる。
他にも、延喜式や般若理趣品、中国側から見た南北逆になっている日本地図、海彦山彦でお馴染みの彦火等々出尊絵、高山寺の鳥獣戯画の写しと思われるもの(地理的に近かったので虫干しの際などに写されたかも?というのが面白い)…
など目を引くものがいっぱい!
最後のコーナーがいよいよ仏像たち。
ここにたどり着く頃には、いろんなものを見てすでにヘトヘトなんだけど(笑)暗がりにポツポツと照らされた光のなかに立ち並ぶ仏様たちに期待が膨らむ。
仏像の迫力と言う意味では、先日見た運慶展で受けたような衝撃的な感動とは違ったのだけれど、一つ一つの仏様の持つ背景や魅力、素材の違いなどがとても楽しかった。
ちょっぴりお腹が出て可愛い出家前のお釈迦様「悉達太子坐像」、お腹に顔がついてる深沙大将、そして必ずどの方向から見てもすくっとまっすぐ立っていらっしゃる大日如来様…
一番好きだったのは大阪・金剛寺からおでましの五智如来坐像。
まばゆい金色も美しいのだけど、それほど大きくない5体の仏様たちがそれぞれお顔も、印を結ばれた細かい指先の動きまでも、ちょっとずつ違っていて、まとめて拝見するとそのバランスの一体感が素晴らしく、お一人お一人から、また全体から伝わってくるお優しさにいつまでも見ていたい仏様たちだった。
さて、この展覧会の目玉の1つ、仁和寺の観音堂の再現。
今回出ていらした仏様たちは、国宝とか秘仏とか、普段一般人には、いやそのお寺のお坊さんたちでも見る機会がなかったり、しかもお寺では望めない360度お背中まで拝見できる、という凄さがあったのだが、この観音堂コーナーにはオリジナルの33体もの仏様が一同に並ぶと言う、ものすごい風景になっていた。
しかも撮影自由、太っ腹。
あ、大好きな迦楼羅さんが!
鳥の顔に羽根、笛を吹いてる。
梵天さまの凛とクールなお顔が印象的。
中央の観音様の品格も素晴らしく、両端の風神雷神、ちょっと愛嬌あるおじいさんの姿の婆藪仙人、龍を頭に乗せた難陀龍王、太鼓を叩く緊那羅王…見飽きない。
あまりにも躍動感があって、この前見た歌舞伎座の「マハーバーラタ」で動き回ってた神様たちを思わず思い出した。
仏様たちの裏側に通じる回路の、京大が特殊な技術でスキャンしたという壁画も見事。湿度の関係でずれた板目や、雨漏りのシミ、おそらく掃除の時に拭いて付いた滲みなどもそのまま再現されてる。
観音堂を堪能した後は、もう一つの目玉、葛井寺の千手観音さまへ。
すごいや!(笑)
とにかくすごい、手が!
1041本、よく付けたなぁ…
解説パネルには、その内部構造や制作方法、何本かの手にもたれた持物の意味などのオモシロ情報が。
ほんとに千本以上の手を持つ千手観音はこれしか確認されていないそうで、今回外に出品されていたいわゆる40本の手を持った千手観音さまたちもそれぞれ素晴らしかったのだけど、さすがに隣にこれがデーンと鎮座されてると圧倒される。
持物の意味はどの千手観音像様もほぼ同じなのだが、「あらゆる仏に会える」「すべての神々を操ることができる(髑髏)」のような深遠なものから、「早く良い友人ができる」「腹痛が治る」「目が良くなる」「学問ができるようになる」「物忘れをしなくなる」「果物や作物がよく実る(葡萄!米じゃないんだ!)などごく庶民的なものまで(笑)…
人々の願いなんて何百年何千年たっても変わらないものなんだな。
会場には仁和寺から何人ものお坊さんがいらしていて、「お坊さんと話そう」みたいな個人的に話を聞くコーナーから、御朱印に日付を入れるサービスまで、フルに働いていらした模様。
近年のお寺ブーム、仏教ブームはまだまだ勢いが衰えていないと感じるのは、いっときのブームを見過ごさないで各宗派ともどもたくさんのお寺やお坊さんたちの努力がまだ続いているからだと思う。
素晴らしい展覧会でした。
買ったお土産を眺めて・・・笑。
仏像がらみは一つもなくて、結局ぜんぶ空海さん関係。
あ。
「空海もなか」は餡を自分で挟むタイプ。
さすが銀座・空也さんの監修だけあって、皮は金沢、餡は北海道から。
皮の食感と香りがとても良くて、ものすごく美味しかった!