ちいさな陶酔
2013年 08月 15日
表参道を歩くなんてひさしぶり。
夏休みの表参道なんてもう、中高生、いや小学生もか・・・でギッシリ。
いやいや〜。
PASS THE BATONというお店はヒルズの一番原宿側にあって、入り口はすぐわかるものの、地下2階という立地のためか「ここにいくぞ」と思っていく人以外にはなかなか見つかりにくい感じ。その「秘密感」が魅力のひとつなんだけど、お店的にはどうなんだろ。
洋服や雑貨、それも骨董というかリサイクルというか、あとワケアリ商品なども含めて、すべてが大切に集められた、というのがよくわかるお店だった。国内の素敵なブランド、海外からの一点ものなど、どの商品にもその履歴が詳しく書いてあり、それが「PASS THE BATON」ということなんだって。
見とれちゃうくらい面白いディスプレイに迎えられてお店に入ると、素敵な洋服や雑貨のむこう、一番奥のガラス張りのスペースの床にバラバラとトイピアノたちがいるのが目に入って、思わず駆け寄る(笑)。
愛らしい!
色とりどり!
なんなの、この幸福感!
お店の方にきいて、全て弾いてもOKということで、しゃがんでひとつひとつ片っ端から音を出してみる。
いろんな形、いろんな国。
音の出るもの、あんまり出なくなっているもの。
この展示会はあくまでも「楽器」というより「ディスプレイ」としての商品価値も想定している、ということで、でも音があんまり出なくてもそれがかつてどんな音だったのか、っていう片鱗も見えたりするのも面白い。
不思議なんだよね。
ちっちゃな鍵盤に手をのせると、何も考えなくても、いろんな音楽が身体からひっぱりだされてくる。指から出まかせ。
楽器がそれを吸い寄せてくれる感じ。
楽器の力、スゴイ。
即興なんか得意じゃなくたって、なんだか「相応しい」ものが指先から流れてくるんだ。
きっと誰が弾いたって同じ。楽器がそうしてくれている。誰もを受け入れてくれる。
そうじゃない楽器が多いなかで、こういう感覚をくれる楽器があるのってすごい。
鍵盤の多いのは伴奏付きで、少ないのはメロディーだけぽつんぽつんと。
トイピアノって単音のほうが合ってるのかなって思ってたけど、楽器によっては和音つけてもとっても綺麗なものもあって。
いろんなメーカーのなかで一番魅力的だったのが、パリのMichelsonne製のもの。音がね、もう・・・沁み入る。残響が絶妙。
ポーランドで出版されてるカタログや、この展示にまつわるパフォーマーの方たちのCDなども。こういう楽器に力をいれて演奏活動をしてらっしゃる人たちもいるんですよね。
家に帰ってから試聴できるサイトにいってみたりして、またニッコリ。
いいなあ、こんな楽器が家にひとつあったら。
一緒に見にいったお友達が隣りでつぶやいていた。
「あ〜、もうこうやってずうっと聴いていられる感じ」
そう、そう。
雨の日とかに、一日こうやって弾いていたい・・・。
音楽って本来、優しいものだよね。
「可愛い」「優しい」「魅力的」、真の意味でね。
瞬間的な感嘆の言葉だけじゃなくて、もっとほんとに沁みる場所でね。
そんなことを耳元でそっと言ってくれるこの楽器、大事にしたいな。