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クール〜The Birthday&EOR in 恵比寿リキッドルーム〜

恵比寿リキッドルームで、The BirthdayとEORの対バンを聴いた。
どちらも名前と、そしておおよそのメンバーしか知らない(苦笑)バンド、つまり曲も全く聴いたことがない。
でも、特に音源聴くでもなく、バンドについても何も知らずにゆらゆらと出かけた。
でもね、そういうふうにライブに行くってすごく気持ちいいんだってこと、というか「普通はこうやって行くもんだよな、ライブとかコンサートって」という当たり前のことを、ものすごく久しぶりに思い出させてくれたこの日。
歌詞から曲から隅から隅までガッツリ聴き込んだり、スタンディングだったら今日はどの位置で聴こうとかでバカみたいに悩んだり、心配したり、はらはらしたり、自分が出るわけでもないのに何故か無意味にドキドキしすぎたり(笑)・・・
って、そういうテンション高くして臨むライブももちろん楽しいからいいのだけど、さすがにいつもそれじゃ見えるものも見えなくなってくる。

リキッドルームも初。
そもそも恵比寿なんてオシャレで(イメージ)業界くさい(イメージ)街、滅多に行く機会がない。
昨日は渋谷から並木橋方面へ歩いて、氷川神社へお参り→素敵なカフェでまったり→リキッド、という「明治通り散歩」になったが、カフェから通りをゆく人たちをぼ〜っと眺めているだけで、そこが池袋でも新宿でも、そしてもはや渋谷でもない独特の空気を感じる。
とにかくね、歩いてる人がまず、面白い。
バスケットボールをガンガンはずませながらランニングしてゆく外国の方とか、ハットで顔が見えない全身黒ずくめで足早に通り過ぎる「この人何関係の人なんだろ」的な男性とか・・・
かと思えば、柴犬を連れて立ち話に夢中の、エプロン姿の地元っぽいおばさん2人とか。

果たしてリキッドルームに着くと、想像してたよりずっとお客さんの年齢層が若い。で、女子も結構多い。4対6くらいか?
フロアは横長で左右と後方が高くなってるので、わりとどこでも見易そう。
場所もさして選ばずに、後方中央のPAの前あたりにノンビリと陣取る。

10分押しで、The Birthday登場。
フロントエリアで力強く拳をあげているのは、きっと熱心なファンなんだろうな〜・・なんて客観的に見るのも楽しい。
曲を知っていればそんなこともないのだろうが、チバさんが歌っている言葉の殆どがあんまりよく聞こえなかったので、タイトルどころか何を歌っている曲なのかもよくわからない。
それでもストレス感じることなく、正面からやってくる音をそのまんま浴び続けてた。
チバさんのギターも含めて、一人一人の楽器の達者なことがよくわかった。ドラムが好きでした。あ、ブルースハープはすご〜く良かったな。
何曲やったのかもはっきり覚えてないのだけど、割合どの曲も同じ声域、メロディーライン、ハーモニーのパターン、テンポ、歌い方・・・だった印象。
たぶん声域がそんなに広くないのと、声質もわりあい単色に近いせいなのかも。
アーティストに向かって「誰かに似ている」ってのは非常に失礼なことなんだけど、どこかブルーハーツを思い出させるような色もあちこちで感じた。
1曲、好きだな〜っていう曲があったんだけど、タイトルとかわかんないや。またいつかどこかで聴けるかな。

ここまでおよそ1時間半近く。10分弱のセットチェンジの後、EORが登場。
お客さんがそこそこ入れ替わったり、場所変えしたりで、客席の雰囲気や盛り上がり方もここでガラリと変わった。
照明の感じも、ステージ上の空気もちがう。ちょっとピリリとした緊張感。

いわゆる「インストルメンタル」の曲、バンドに対して、正直私はあまり興味がなかったので、音源を聴いたこともなければ、ラジオで流れてても聞き流してたし、ましてやライブにいくなんて思ってもみなかったんだけど。
エレカシのライブや音源でのアレンジやキーボードという面で聴き慣れた蔦谷さんの「本来の(別の)姿」を一度聴いてみたいとか、中村さんのドラムってスゴいんだよ、という実物を聴きたかったりとか、Birthdayも名前しか知らないからどんな音楽するんだろう、それも聴けるならお得かもとか・・・まあたまには思い切って全然違う音楽を聴きに行ってみようか、っていう出来心だったわけ。

EORの演奏が始まって、彼らもほぼMCなく次々と音楽を繋げていったのだが、最初「ふうん・・しっかし、この人たち一体どうやって合わせてるのかな、リハじゃどの程度決めごとするんだろ、コードとか尺とかインプロの順番とかかしらん」みたいにして(笑・・・だって気になっちゃうことがいっぱいあって)聴いてたのが、時間がたつにつれてその音の響きのゴージャスな渦にどんどん呑み込まれちゃってた。
圧倒的に強烈な響きの中に身を置いてると、まさにトリップというか、もはやもう「楽器」の音にきこえなくなってくる瞬間があって、もうそれがシンセなのかトランペットなのかはたまた人の声なのか、もう何が何だかわからなくなってくる。
自分がどこにいるのか、さえも。
言葉のない音楽って、歌の入る演奏には無いそういう心地よさがあるんだって思い出した。

不思議なことに、私自身が何十年もやってきたのはまぎれも無い「インストルメンタル」なのに、その「クラシック」という狭い枠のなかでさえも、なぜだか「言葉」のある音楽のほうが好きで、そしてそちらに絶対的な力があると感じて、そして信じてきた。
もちろん、自分が携わる「器楽曲」が下ってことじゃないが、言葉のない音楽は言葉のある音楽をいつも手本にしてきたようにも思えるし、結局は「何かを語らせる」という欲求、存在意義を持っている以上、言葉のない音楽はどこまでいってもその不自由さから逃れられない、とどこかで思っている自分がいた。

けど、昨日は無条件に楽しかったな。
下手なメッセージ性とか義務感とかは、べつにど〜でもいいもんね・・・というより、そんなとこを越えちゃってるもんね。
この日は下手のドラムと上手のキーボードが向かい合う形で、その間に上手からベース、ギター、トランペットが挟まるという「コの字」仕様で、5人のコンタクトが自然なかたちで密になるようになっていた。
ドラムの中村達也さんは指揮者のように両手を使ってリードしながら、曲間も含めて全体の流れが途切れないように音や、時には言葉や身体の動き、お客さんとのキャッチボールで繋いでゆく。それが本当に自然で面白かった。
ドラムの技術とかよくわかんないのだけど、この人のどこからあのリズムとパワーが出てくるのか、とにかくものすごい音楽家なんだってことは一目瞭然で、この人はこのために生まれてきたとしか言えないなあ、もう。
名手共通の、楽器がもう身体に一体化しちゃってる、あの感じ。スネアをppでただ一回叩くだけで、彼自身がしゃべってるのと同じ。
・・・って書いてるとなんかごくごく当たり前の「褒め言葉」みたいになっちゃうけど、そんな次元じゃない、普通じゃない。

ギターが居ないこのバンドのこの日のスペシャルゲストは、マーティ・フリードマンさん。
もちろん、この人が「時々タモリ俱楽部とかに出てる、音楽を語るちょっと面白い外国人」てだけじゃなくて(笑)すごい名手ってことは知ってたけど、そのギターはテレビでちょこっとしか聴いたことなかったからすごく楽しみにしていた。
周りとのバランスを絶妙にとりながら、出るとこは出る、でも出過ぎないうまさがあるなあと思った。想像してたよりずっと「オレ様度」が少なかったのは、EORの音楽がそういうものじゃなかったせいもあるのかもしれない。
途中「リンゴ追分」の冒頭を一節弾いたりしてたけど、あれは彼の定番なのかな?
何曲も続けてやってくれたのだが、それぞれの色が違っていて楽しかった。スローな、まるでバラードのようなものもあれば、全員炸裂ぶっ飛ばし、もあったし。

結論。
「インストルメンタル」は「限りなく熱いのにクール」。
出てくる音楽も、演奏してる人たちの立ち方も。
すごい熱量なのに、破綻寸前でのバランスが存在する。
それが、「言葉」というものに溺れる危険性のない「楽器」の魅力なのかもしれない。

家に帰ってから、私が唯一持っていたインストの音源、中村さんももちろん参加してるLOSALIOSの「ゆうれい船長がハナシてくれたこと」を戸棚の奥〜〜〜のほうからひっぱりだして、聴いてみたりした。
KKPのお芝居「TAKEOFF〜ライト三兄弟〜」のテーマ曲「HAE」が入ったアルバム。あのお芝居が、2回も見に行くほど好きだったというだけで入手したアルバム。以来、殆ど再生することがなかったけど、今こうして聴くと・・・・味わうのが楽しい。

のんびり行って、ほぉ〜って聴いて、汗もかいて、聴き入って、楽しい夜だった。
ライブって、いいよね。
つい最近、まさに蔦谷さんがブログで「難しい哲学書とか、複雑な人間の心情を描いた純文学とか、そんなの読まなくたってたった数分で感じることができるのがロックのいい部分である」って書いていたのだけど、それはゼッタイにロックだけじゃなくて、全ての音楽がそうなのだと思う。
世の中にはまだ、クラシック音楽が「難しい哲学書や純文学」(あるいは、〜のようなもの)を必要不可欠とする世界だと思い込んでいる人が多い。
違うのに、ぜ〜んぜん違うのに(笑)。
大好きだった中学の美術の先生がいつも口癖のように言ってらしたこと。
「ただ見ればいい、それだけ」
そして私たちは現代美術を山ほど見させられた。

みんなが、フラッと入ったライブハウスで誰が演奏してるのか何ていう曲なのかなんて関係なく、ただただそこにある音のシャワーを浴びるように、そんなふうに音楽を聴ければ素敵なのに。
だから。

いい音楽をしよう。
そう思った。
by saskia1217 | 2012-09-14 01:55 | 感じろ、考えろ、思え! | Comments(0)

今日もまた日が昇る・・出かけてゆこう!


by saskia1217