2017年 10月 04日 ( 1 )

歌舞伎初心者



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歌舞伎座10月昼公演のネタバレをしています

お能狂言は大好きで学生の頃からよく観に行っていたのに、何故か歌舞伎には縁が無く来てしまった。
無い、というより、本当に興味があればとっくに自分でチケット買って行ってたはずなんだけど。
嫌いというわけでもなく、ずっと、それほど興味が無かったのだろうなあ。
西洋で言えばオペラの位置にあるともいえる、いやそれどころか、日本が誇る最高の総合舞台芸術・・・
一度も観たことがないというのは日本人としてどうかと・・・

実は一度だけ友人と幕見で4階てっぺんからチラッと観たことはあったのだけど、その時はただフラッと入ったので演目とか筋書きとか役者さんの名前とか全然わからないまま、舞う場面や音楽を楽しんだ、というだけ。

今日、やっと一演目まるまる、同時にニュー歌舞伎座を満喫してきました。
日時の都合で昼公演しか行けなくて、それがたまたま新作。
初めてちゃんと観るのに新作はどうかなあ・・・とも思ったけど。
「マハーバーラタ戦記」

えーあの大作をどうやって歌舞伎に!
というより「すっごい長い歴史的叙事詩」ということしか知らない。
あ、そうか、でもあの「バガヴァット・ギーター」ならヨガの座学でずうっと読んでたな。
たしかあれ「マハーバーラタ」の一部だったんじゃ?
上村勝彦訳の岩波文庫と、向井田みおさんの訳で、結講じっくり読んだ。
なんてことが、神々の名前をうっすら覚えてたりすることに繋がったけど、果たして予習しなくて大丈夫なのか!

そんな不安から歌舞伎座HPをみたら、今回の脚本はなんと青木豪さん。
いまや演劇界では知らない人がいないくらいご活躍だけれど、むか〜し学生時代に青木さんとは何回かミュージカルの舞台でご一緒したことがある(笑)。
当時私は芸大生で、青木くんは明大の演劇科の学生だったはず。
同じ明大演劇科の高岸さん(現在芸大でも教鞭をとる俳優座の演出家)が企画していたご縁で「メリー・ウィドウ」とかやったんだった。
歌舞伎の脚本なんてスゴイなあ、青木くんビッグになったんだなあ・・なんて思いつつ、人物相関図を眺めたくらいで(しかも複雑だから見てもピンとこない)結局のところさして予習せずに出かけることに。

改装後初めて足を踏み入れた歌舞伎座。
まずは今日の演目にちなんだ限定のお弁当をゲット!(これ大事)
本日の主役「尾上菊之助さん好み」というタイトルの、インド料理と日本料理のコラボメニュー。
タンドリーチキンやドライカレー、和食も入って楽しい。
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お席の幅や前との距離、通路の幅なんかが以前より広くなってる、というのを実感。
今日もだいぶ目にしたけれど、とにかく外国のお客様が多いからね。
日本人にとってもゆったり座れるのは嬉しい、なんたって歌舞伎はお席にいる時間が長いから。

初心者の私には、慣れた方にはなんてことない諸々が面白く、気が弛む暇がなかった(笑)。
今日はかなり前のほう、しかも花道のすぐ脇でステージにも近かったので、色々なものが見えたり聞こえたり。
開演前にアナウンス付きで披露される何種類もの緞帳、開演時に幕の中からひとつめ、ふたつめ、とだんだん速くなって聞こえて来る柝、幕を引く係の人の足音や幕の持ち方・・

インドの話を歌舞伎に、しかも日印友好交流記念ということで、主役を務められた菊之助さんは実際にインドにも行かれ、あのハリドワールでガンジス川の沐浴や祈りの儀式をご覧になったり、色々体験されたとか。
あくまでも「歌舞伎」だから、動きとか音楽とか衣装とかどうなんだろう?
それが楽しみだった。
舞台美術ではインドを思わせる絵を描いた大きな屛風を幕ごとに変えて使ったり。

衣装もとても工夫されたらしく、和を基調に、着物の柄に梵字が入ってたり、インド風の生地だったり。
なかでも幕開けのインパクトが凄かった!
幕があくと板付きで梵天や帝釈天、シヴァ神など7人の神々が、全身まっ金金ピッカピカで、後光を背負って段にズラ〜ッとならんでこちらを見下ろしてる。
見た目全員、全身金なので、最初はどれが誰だかわからない。
持ち物で「あ〜大黒天」ってわかったり(笑)

音楽、セリフ、踊り、衣装・・・
すべてが場面場面で「歌舞伎」「現代劇」「インド風」と切り替わったり、ときどきそれが混じったものだったり。
ある場面(あまり本筋に関係が深くないところ)では完全に伝統的な音楽の形態と、伝統的な衣装と踊りがきっちりと。ステージ上に義太夫や清元がひな壇で並ぶ「出囃子」「出語り」状態、美しい女形と麗しいイケメンが踊る。
他の場面では、今ふつうにテレビの時代劇くらいの感じの「演劇」(いまはもう昔みたいな口調じゃなくなったよね)になり、また衣装はインド風でも所作やセリフは完全に伝統的なシーン(口上とかそうだったかな)があったり。
そして、時々フッと織り交ぜられるコミカル要素(双子の王子がザ・たっちのギャグ言ったり・・笑)。
それが、頻繁に使われた回り舞台や、花道の活用も相まって、緊張感と笑いのいいチェンジになっていて、長時間の舞台を飽きさせなかった。
脚本・・すごいよなあ。

戦闘シーンの馬や、お姫様が乗って登場する大きなゾウなど、動物もとってもよく出来ていて、しかも動きがすごいリアル。
距離が近かったので中に入っている人の手足がちょっと見えたりしたのだけど「どんな体勢!?」と思うくらいすごい組み方してたり、クビの動きが細かくてすごいなあと感心したり。
どんな役でもその役に徹して務めるって、すごいな。

音楽がね、また面白かった。
インドを思わせる民族楽器を黒子の恰好をした奏者さんたちが上手に陣取って演奏し、2階式になってるその上段には義太夫さんたち。
下手の黒御簾には太鼓や鼓などのお囃子(このすぐ前の席だったから、すごい迫力で素晴らしかった!)
ツケの使い方やダイナミックレンジの幅にも感動。
当たり前なのだろうけど、すべての演奏が、セリフのあるところでは弱くなって声が聞こえやすくなるのも面白かった。
ガムランのような旋律線やハーモニー、モダンなポップスか歌謡曲みたいなメロディーの曲、現代風な歌詞やリズムを義太夫が演奏したり。
作曲担当されたのは、特に音楽を専門に勉強されたのではないという主にパーカッションを操る音楽家の方だというけれど、さすが打楽器の扱いが素敵でした。
主人公の夢枕やお告げなどに、私の目の前の花道からよく神々が下から出現していたのだけど(笑)その時鳴らされる音楽には必ず「どろどろ」っていうのかな、あの幽霊が出て来るときの音、が使われていたのも面白かった。
笙も入ってましたね。
やっぱり「霊」的なものを表していたのかな。

さすが歌舞伎、大勢の配役、役者さんがたくさん出てきて、一人芝居の場面から花道まで使って全員で賑やかになる場面まで、豪華で楽しい舞台。
なかでも印象に残ったのは、まず、主人公「迦楼奈(かるな)」を演じられた菊之助さん。
オープニングではシヴァ神を演じられたのだけど、その声の通りっぷりとセリフの聴き取りやすさ、説得力はダントツだったので、その時点から「おお」って思ってました。
年齢や役の性格にもよるのと、自分の席の場所にもよるのだと思うけれど、やはり後を向いている時、反対側の花道にいる時でも、その声がはっきり聴き取れる役者さんてやっぱりすごいなあと思うのです。
あと、圧巻だったのは中村七之助さん。
主人公の敵でありながらどこか心が通じ合っている「悪役」鶴妖朶姫(づるようだひめ)を演じされたのだけど、声そのものも素晴らしいし、細かい表情やセリフの語尾の消え方などまで、その「悪役」の心理まで醸し出していたのが見事だった。
ラスト近くで尾上松也さん演じる阿龍樹雷王子(あるじゅらおうじ→バガヴァット・ギーターの主役!)と交える激しい一騎打ちでの立ち回りが凄くて、最期をとげる場面での悲劇性があまりに迫真で胸を打ちました。
そうそう、松也さんもとても重要な役で、清々しくまっすぐな青年戦士らしくて素晴らしかったです。
歌舞伎役者さんをあまり存じ上げないので、ふだんテレビのドラマやバラエティーなんかでしかお顔を拝見しない役者さんの「本業」がちゃんと観られたのも、本当に良かった。

全体的には、インドも日本も、そして現代と伝統も、それぞれを別々にするところと融合させているところが、すべて通して観たときにほぼ同じバランスで作られていたなあ、という印象。
この長い叙事詩から、作者がこの作品の中心として置いた(のではないか?)ことが、ラスト近くでちゃんとまとまって考えさせられるように出来ていた気がする。
「力と知恵、どちらが平和をもたらすか」
「ダルマを貫くということ」

みていてなんだかちょっと、ここ数日の日本の政治家を思い出したり(苦笑)
初めての歌舞伎、ものすごく楽しかったです。
私にはもしかしたら「純・伝統的演目」よりも良かったのかもしれないな。
けれど、また遠からぬうちに、今度は「純」なものを観に行きたいと思う。

観賞後、せっかくなので見学した「歌舞伎座ギャラリー」では、道具の馬やカゴに乗ったり、鳴りものを叩き放題やらせていただいたり(どろどろ、やってみた・・・笑)、幕間のお弁当や人形焼きのおやつも楽しかったし、お土産に「限定」商品を買っちゃったり、屋上庭園もぶらぶらできたり。
歌舞伎座まるまる堪能できた、最高の「夏休み最終日」になりました。
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by saskia1217 | 2017-10-04 20:37 | 感じろ、考えろ、思え! | Comments(0)

今日もまた日が昇る・・出かけてゆこう!


by saskia1217