矯正ギブス

・・・を見た。そして試した。
ホントです。

けど、鍵盤楽器用の「矯正ギブス」!
国立音大の楽器学資料館にて。

昨日、今日と日本音楽学会の全国大会に出かける。
伝統音楽、舞踊、マーラー、バッハ、ホルン・・・
朝から夕方まで、ふんだんにある発表やラウンドテーブルのなかから、興味あるものをあちらこちらとハシゴ。
合間に、楽器学資料館のガイド付きツァーに参加、試奏可能な鍵盤楽器を弾かせていただく。
昨日はシュタインの1820年のピアノ、今日はブロードウッドの1850年のピアノ。

昔のピアノのあの透き通った音は、どうしたって現在のピアノには望めない。
深すぎない鍵盤をたたくと、その感触がそのままハンマーに伝わり、そのまま弦を「たたいている」という実感。自分の指があたかもハンマーになったような感覚。
心を溶かし、心をうつクリスタルな音。ペダルを踏んだ時の、あの素晴しく広大な倍音のかかり方は、180度視界100%の大海原を見るようだ。
チェンバロもそうだが、ダイナミックレンジが広い楽器の魅力は本当に計り知れない。
図体は大きくなくても、「響く」という本当の「音楽」の基本を体験させてくれる、そんな昔の楽器の数々は、けして「古楽器」という一言にはあらわし尽くせない。

そうそう、「ギブス」の話。
資料館の出口の小さいテーブルの上に、なにやら小さい道具が2つ置いてある。
触ってもいいと許可していただいたので、指を置いてみる。
写真が撮れないのでお伝えできないのが残念だが、ひとつはイギリスのもので木製の鍵盤のついた小さな仕掛け。手前には手首を置く同じ高さの台がある。台に手首を乗せ、5つある鍵盤に5本の指を載せ、鍵盤を弾くように下へ押す。
えらい力が要る。そう、鍵盤は超絶的に重くできている。
ま、指の筋力アップのつもり、エキスパンダーの「指版」とでもいえる代物。
名前は、忘れました、すみません。

そしてもう1つは、フランスの金属製のもの。しかけそのものは大体上記の木製のものと同じだが、こちらは「鍵盤を押す」のではなく、上下2方から各指を金属で固定し、ネジでとめる。そして、バネの力がかかる中、指を上←→下または手前←→向こうと動かす。
さすがに金属製となると、見た目がスゴい。ジムにある筋トレの器械を連想させる。

いずれも19世紀の「矯正ギブス」だが、これはもはや「思い込んだら」なんてレベルではない。
完全に怪我をする。
天井から指を吊って「試練の道を」歩んだ結果、完全に指を壊し二度ともとにもどらなかったシューマンのことが思い出された。

19世紀、ヴィルティオーゾの時代。
「速く、強く」という、ごく最近までの日本の音大にありがちだった、あの意識に近かったのだろうか。
こんな器械のある時代に生まれなくてよかった。
つくづく。
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by saskia1217 | 2008-10-26 23:47 | 感じろ、考えろ、思え! | Comments(0)