東京の空〜エレファントカシマシ・日比谷野音コンサート〜

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それは、アンコール4曲のうち3曲目の「武蔵野」を歌い始めたときだった。
宮本さんの声がおかしい。急に音程が取れなくなって、それが数フレーズ続いた。
泣いていた。
宮本さんが泣いていた。

エレファントカシマシ、野音ライブ。エレカシライブは5月のCCレモンに続いて2回目。
そして野音は初めて。子どもの頃、昼間にあそこを駆け回って以来だ。
4時30分頃、地下鉄の霞ヶ関駅から日比谷公園脇に出る階段を昇っていると、大音響が耳に入ってきた。公園入り口までくると「今をかきならせ」をフルヴォイスで歌う宮本さんの生声がガンガンに響いている。は〜、これが「野音名物」の「外で聴けちゃうリハ」なのか。入場を待つ列に並びながら、リハの様子が手にとるように聞こえる。メンバーに色々と指示を出しているのも聞こえる。しかし、あんなにフルで歌って・・・。かなりギリギリの時間まで音出ししていた模様。ほんとにいっつも全力なのね。頭が下がる。

随分と日が延びて、5時半はまだまだ明るい。なんとか雨も降らず、ちょっと重めな曇天模様。「今日は曇りでよかったな〜・・・でもまあ、雨なら雨でバケツの水50杯くらいかぶっちまうからいいんだけどさ」
あ〜、野音伝説の水かぶり、ですね(笑)。お客さんだけずぶぬれになるのが(ステージのみ屋根がありますからね)いたたまれないってことなのか、宮本さんは雨天決行の時は必ず水をかぶるらしい。ある意味、そんな「雨の野音」も体験してみたいなんて思っていたが・・・(でも、人間はいいけど、機材とか楽器とかは、やっぱりマズいんじゃあ??)

セットリスト全24曲、殆どぶっ通しで歌い続ける。もちろん、こっちも一度も椅子になんか座れるわけがない。アンコール4曲を入れて、終了したのは8時半。
半ばあたりでようやく空が暗くなってくる。日比谷の空は広い。黄昏始めた頃のグラデーションのような、水墨画のような、言いようもなく美しいほの暗さのなかに、ステージの絶妙なライティングが映える。歌う人も聴く人も、胸がいっぱいになる。東京を愛する宮本さんが、あの空を見ながら歌っているその心情までが、手に取るように伝わってくる。
「野音ライブは格別」といわれているのが、よくわかった。
涙のアンコールの後「リハのときは平気なんだけど、こうやってみんなの前で歌うと、涙腺ゆるんじゃってね」なんて。

毎年この時期に必ずあるこのライブ、きっと古いファンは何年も聴き続けているのだろう。アンコールで「今宵の月のように」のときに「野音のみんなにはつまらないかもしれないけど、大切な曲なので」なんて前フリ。
今日は特に前半、初期の曲や、私も初めて聴くシングルのカップリングなども混ざっていた。
野音名物(?)の「即興の歌コーナー」では、メンバー紹介をしながら「日比谷の歌」?
「昨日からずっと〜、みんなに何を聴いてもらおうかと、考えてきて〜」のような歌詞。語る言葉が全て歌になってしまう男。ある意味しゃべってるより自然な感じというか。う〜ん、天才。

エレカシの曲に多い「夜」「月」関連の曲もたくさんあった。あいにく月は見えなかったが、心の目で月を輝かせることもできたような、そんなミラクルな時間。
24曲+アンコール4曲の、どれもに血が通い、どれにも一寸の手抜きもないベクトルで出来ていた素晴しいライブ。もちろんどれもこれも嬉しかった。「うつらうつら」「赤い薔薇」「真夏の星空は少しブルー」「月の夜」「月と歩いた」「珍奇男」・・そして大好きな「武蔵野」

私の涙腺が反乱を起こしたのは「遁生」だった。最近ずっと聴いていたアルバム「生活」のなかの一曲。
「23歳の頃、実家の2DKの自分の部屋で、夜遅く火鉢に火を入れ、ギターをごしゃごしゃ弾いていた頃の歌」だそうで。(3時くらいになると一酸化炭素にやられて頭が痛くなっていたとか) 
このタイトル、普通辞書に載っているのは「遁世」という言葉。「仏門に入る、あるいは隠居する」つまり、世から離れているということ。でも宮本さんが選んだ文字は「遁生」。隠れて生きていること。
「長いですよ」と呟いてから、この12分あまりの歌を淡々と弾き語る。3000人のお客が、全員スタンディングのまま水を打ったように静まり返った。とても東京の街の中心、3000人がそこに居るとはにわかには信じられない。街のざわめきも鳥の鳴き声も、隣りの人の息さえ聞こえない。クラシックの演奏会でも、あんな静謐は滅多に経験がなかった。何千人でも何万人でも、そこに居る人をグッと集中させてしまうあの引力。

「これから先は死ぬるまで
表へ出ないでくらす人」

そう始まるこの歌は、最後のほうで曲調を変える。

「歌を誰か知らないか?
つまらぬときに口ずさむ
やさしい歌を知らないか?」

アルバムでは続けて絶叫しているこの部分を、今日宮本さんは限りないピアニッシモで歌った。
涙が溢れた。

「ロックは生命を肯定する」
その言葉通りの仕事を成し遂げたミュージシャンは、3時間絞り尽くした後でもまだ、キラキラと輝いて見えた。
アンコール最終曲、まだ誰も聴いたことがなかったあの新曲の、輝かしい完成を待ちつつ・・・
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by saskia1217 | 2008-06-29 02:30 | エレファントカシマシ | Comments(0)

今日もまた日が昇る・・出かけてゆこう!
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