復讐

「譜めくりの女」という映画を観る。
渋谷アミューズにて。2006年フランス。先週土曜に日本公開された。
このところ演劇とかお笑いとかの舞台にかまけて(!)、映画のチェックを全くしていなかった。
昨日友人に誘ってもらって、最も苦手な夕刻の渋谷へ出かける。ん〜、まっすぐ歩けないところは大嫌いデス。

以下ネタバレ注意。



しかし「譜めくりの女」って、一体どういう邦訳タイトルなんだっっ!?
一般的には「譜めくり」と言われてもきっとそれほどピンとは来ないだろう。一方音楽家にとっては「譜めくりのどこにそんなスポットライトがあたるのか」(どんな重要性=役割をもたせるんだろう?)という疑問が湧く。
・・・ということで、よくわからないので観に行った(笑)。

ま、一言でいえば「音楽(家)の世界を借りた、心理サスペンスと復讐ドラマのミックス」だろうか。嫉妬とか挫折とか夢とか偶像とか葛藤とか・・・そんなものを描くのに音楽家の世界ほどやりやすいものもないだろうと思う(ホント)。脚本、監督はヴィオラ奏者でもある人で、そこのところはよくわかっていたんじゃないかと思う。

子どもの頃、あこがれのピアニストのせいで音楽院の試験に失敗した少女が、それが原因で音楽家への道を諦め(この時点でもう設定に無理があるが・・・)別の職業につくが、後に偶然そのピアニストに再会、ひょんなことからそのプライベートに介入、「譜めくり係」としてピアニストと密接に関係することとなる。あこがれであり、同時に最も憎い存在であったピアニストとその家庭を、彼女はほんの少しずつ実に巧妙に破壊してゆく・・・というストーリー。
ヒッチコックをオシャレで現代風でちょっとソフトにしたと言えばいいのか・・・所謂そういう「心理ドラマ」。

いやいや、実に「フランス映画」でした。必要最小限の登場人物、多くない台詞、美しい画、表情のアップの多さ、結末のやんわり感・・・これは日本以外では公開してもダメかも(笑)。
きけば、監督はこのホンを半年間の京都滞在中に書いたらしい。「能などを観て感じた『間』など、日本の影響を大きく受けた。俳優にもそれを要求した。」と話しているが、私には時おりその「時間的空間」がちょっと長過ぎてバランスが悪いな〜と感じた場面も少なくなかった(特に前半)。空いた時間というものが緊張ではなくて助長になってしまう、というような。画面が美しかっただけに(それだけで十分緊張感は保てたと思うのに)そこがちょっと残念。

いうまでもなく「譜めくり」が必要なのは大抵、鍵盤楽器奏者だけだ。それもソロの時はまず必要ないので、アンサンブルの時のみ必要となる。果たしてこの「譜めくり」という役割が、ピアニストにとって『それほど』重要なのか、という根本的かつ尤もなツッコミをしてしまうと、この映画は全く成り立たなくなってしまう。
それと、主人公がそのピアニストにそれほどの恨みを持つ動機が、ちょっと弱い。
ん〜、ヴィオラ奏者にはそこまで読み切れていなかったのか????

主人公を演じたベルギーの女優さんがミムラに激似だったが、長篇2作目という新人さんにしては「冷酷さ」「危険さ」「不気味さ」などが要求される難しいキャストを堂々と演じていたと思う。
使われていた音楽は自ずからクラシックが多かったが、主人公のテーマとして終始使われていたオリジナルのピアノ曲が、バッハのプレリュードっぽくて耳には心地よいものだった。まず、音楽院の試験のシーンで主人公が弾くのがその曲で、ラストシーンではそのピアノパートに弦が重なっていくアレンジで、なかなか効果的に使われていた。

そうそう、邦訳タイトル。つけるのはものすごく難しいんだと思うけれど、多くの場合「あっぱれ」と思うものにはなかなか出逢わない。
原題は、La tourneuse de pages(ページをめくる女性)なので、ほぼ直訳。これ以外思いつかないというのも事実。だけど、ニュアンスとしては「めくる人」くらいの軽さなんだと思う。「考える人」みたいな・・・。「○○の女」って書くと「女」がむやみに強調されてしまうように私には感じる。「マルサの女」のようなイメージ・・・。そうなってしまうとこの映画も「女と女の戦い」「復讐劇」みたいな違う強さのイメージが前に出てきてしまうのでは??

こういうフランス語の名詞の女性形って厄介だと思う。
例えば、F.クープランのクラヴサン作品のタイトルには「○○の女」と訳されているのが沢山ある。「勝ち誇った女」「神秘的な女」「勤勉な女」「貞淑な女」・・・でも、実はこれは実際「女」なのかは謎なのだ。一説にはフランス語で「曲」を表すpiece(アクソン略)がlaのつく女性名詞なので、動詞や形容詞が名詞化された時に語尾が女性形になってしまう、ただそれだけの理由しかない、とも言われている。

いずれにしても、観て損はない映画でした。久しぶりに聞いたフランス語の響きと、うつくしい映像。いい気分。
映画の後は何故か沖縄料理を楽しんでから帰った。泡盛の古酒が美味しい。
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で、これは帰り道、よしもと∞ホールの前を通りかかった時に発見。5〜6人で呼び込みしてました。あまりのインパクトに、許可をいただいて写真を撮らせてもらっちゃいました。ありがとうございました!
私も着てみたいっ。
いいな〜、芸人さん(笑)。よしもとの社員さんかな?

あ、明日は大喜利ライブ「猿」の『衣』。
Potsunen気分をまだ色濃く持て余している脳裏に、今度はいったいどんな爆弾を打ち込んでくれることやら・・・。
楽しみでもあり、でも・・・・ちょっぴり寂しい。
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by saskia1217 | 2008-04-22 04:49 | 感じろ、考えろ、思え! | Comments(0)