六本木

六本木、たとえ東京生まれ東京育ちでも、私はまず全く行かない街だ。
地下鉄駅上の「俳優座」に行くとき以外は。

劇団俳優座LABO公演「コンスタントワイフ」を観た。今日は昼公演だったが完売で、お客さんは年配の女性が殆ど。お芝居を見始めてから、マチネを観ることは少なかったが、昼と夜とでかなり客層が違うのにもオドロく。当たり前なんですが。

それというのも、このサマセット・モームの作品、あらすじの「ちょっと見」や幕が上がって何十分かの間は、あたかも平日13時30分、TBSかフジのドラマ「っぽい」要素がまず真っ先に提示されるので、そういうセリフのひとつひとつに年配のご婦人方がじつに敏感に反応されていたのが、とても面白かったのだ。
この作品、モームのそう多くはない舞台作品のうちのひとつらしい。1900年代初頭のロンドン、裕福な階級の家庭で起こるちょっとした浮気騒動を発端に、夫婦、男女、親子などの関係を描く風刺喜劇。
チラシ解説には「モーム版『人形の家』」とあったように、「家庭のなかの女性」から「自立できる女性」へ、というわかりやすいテーマが、膨大なセリフとともにかなり延々と運ばれていく。
外科医の妻が、夫の浮気をとうに見抜いていながらもずっと「貞淑で理解ある妻」を演じ続け、じりじりと周到に自分自身の自立を計画し、成し遂げる。最後は夫にはもはや彼女を引き止めるすべもなかった、というお話。

中心を貫いていたのはもちろん「女性の本当の自由は何か」というテーマだったのだが、今日終演後に私のなかに残ったのは、そこではなかった。お芝居がすすむにつれて、もっと違うものがどんどん大きくなっていく気がした。観ているうちにだんだん笑えなくなってきたのだ。それはもはやただの「夫婦の浮気騒ぎ」ではなく、背筋がぞっとするような、人間同士の、それもオモテには出てこないような不気味な戦いに、音もたてずに変わっていく。舞台上の登場人物は多くの場面では皆かなり笑っているし、やりこめられた夫の情けない有様に客席には笑いが渦巻く。でも、なんだかゾッとするのだ。
言葉にするのは難しいのだが、「女性、ひいては人間のもつ本当の怖さ=したたかさ=強さ」、人が人を操る(操られる)その有様。
後半はそんなわけで、ずっと「モームはいったいどっちが言いたかったんだ?」と、その掌で転がされているような思いだった。

終演後、演出の高岸未朝さんに会う。
学生時代、何年間か一緒にオペラ制作をしていた懐かしい友人だ。学内のオペラ公演でも、学外で彼女がやっていたミュージカル劇団でも、ずいぶんと長いこと熱い時間を一緒に過ごした。(・・・と思っているのは私のほうだけかもしれないけど・・・笑)
当時から彼女の綿密で徹底した仕事ぶりに感服していたのだが、今日の舞台を拝見して、あれから20年近く、彼女は変わらずにその信念を貫いて丁寧にお仕事をしてきたんだな〜と感銘を受けた。

自由奔放であって、地に足がついている。
・・・って、難しいけど理想。
[PR]
by saskia1217 | 2008-02-28 23:50 | 感じろ、考えろ、思え! | Comments(0)

今日もまた日が昇る・・出かけてゆこう!
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31