「それが疑問だ」

雪の日、劇団四季「ハムレット」千穐楽を観る。
「四季」初体験!・・・で、それがよりによってわざわざストレートプレイ(笑)。
ミュージカルが嫌いなわけではないが、実はそれほど積極的な興味が湧かない。きっと生で観たらものすごく感動するに決まってるけど、今はどちらかというとストレートプレイだけをかなり大量に観たい気分。

少し前にテレビで蜷川さんの「ハムレット」を観て、これを舞台で観たいなと思っていたらちょうど四季がやっているという情報を得て、そのまますぐチケットをとったのでした。だから「四季」も「ハムレット」も生は初めて。
幕が開いた瞬間から色々と驚くこと多し。

まずセリフのスピード。機関銃のような超速セリフの蜷川演出の映像ばかり観ていたせいもあるだろうが、そのあまりのゆっくりさに唖然。だからすごくわかりやすい。特にセリフを聞いてから頭の中で文字に変換して理解するまで少々時間がかかることもある「ハムレット」のような場合、ものすごくいい。ただ時々、私の耳にはまるで「棒読み」のように(スミマセン、他にいい表現がなくて)響いてしまうこともあったけれど、舞台がすすんでいくうちに、それが同じスピードでも役者さんによって自然、不自然の差があることがわかってきた。
何かに似ている、この話し方・・・そうだ、ちょっと昔の「大河ドラマ」。私が子どもの頃は、NHKの大河ドラマはどれもセリフがとてもゆっくりで、現代語なのに文語体で話しているような雰囲気があったのだ。今は残念ながらまったくその面影がないけれど。セリフのわかりやすさとは別に、シェイクスピアにはやっぱりそんな一種の「浮つかない空気」も必要なのかもしれない。
が、反面、それが緊迫した場面、役の切迫した心情、などを表現する場合に、どうしても前向きのベクトルに欠けてしまうようにも感じて少し残念にも感じた。リアリティが薄くなってどうしても「つくりもの」のように響いてしまう(私には、ですよ)。敢えて悪く言えば所謂素人からみた「演劇チック」なわざとらしさ、のような・・・
セリフは終始、基本的にはずっと同じスピードで統一されていた印象だった。それともあれが「四季」っぽいのかな?ミュージカルも観たことないのでわかりませんが。

それと少し関連するけれど、私は個人的に特にミュージカルの女優さんにありがちな「作った(ように聴こえる)高めの声」が実はかなり苦手なのだ。不思議なことに男優さんにはあまり感じないのだが・・・。今回オフィーリアをされたのは素人の私でもお名前を存じあげている超ベテランのミュージカルスターの方だったけれど、やっぱり私にはオフィーリアのセリフや動きだけが浮いてしまっているように感じて(あるいはそれが狙いだったのかもしれません)彼女の部分だけどうしても入り込むことが出来なかった。これはごく個人的な好みの問題なので、もちろん上手いとか下手とか俳優さんの評価とは関係ないことですけどね。

ところで。
「生か死か、それが疑問だ」っていうの、ちゃんと流れの中で聞くとホントにいいセリフだったんですね〜〜、当たり前だけど(笑)。

で、3時間半の舞台を見終わって思ったこと。
やっぱりこの脚本(作品)、ハムレットとオフィーリアは決して主役でもなんでもないな〜ってこと。言い尽くされてることですが。(でもカーテンコールはこの二人が主役扱いなんですよね〜〜、ちょっと不満)
ハムレットは力演だったと思うけれど、私の印象にはあまり残らなかった。よかったな〜と思ったのはどちらかというと、ホレイショー、そしてポローニアス。レイアーティーズとクローディアス、それに王妃ガートルードもよかった(役の年齢設定のせいもあるだろうが、彼女の演技は薄っぺらいところがなかった)。あと、ハムレットで実は美味しい役はやっぱり「墓掘り人1」だろう。この日の役者さんもとてもよかった。
そう思って「何故だろう」と考えたところで、自分の変な傾向に気づく。私はきっと「主人公の(良き)友人役だいすき」体質なのだ(笑)。例えば「ドン・カルロ」で私が好きなのはロドリーゴであって、絶対にドン・カルロじゃない。「タンホイザー」で好きなのは断然ヴォルフラムだし。「良き友人」じゃないにしても「カルメン」ならエスカミーリョのほうがずっといいと思うし、「フィガロの結婚」なら伯爵のほうが面白い。ははははは。

それと「音楽」。
そうはいってもセリフとかぶって使われるようなところは少なく(ラストのホレイショーのセリフなどは効果的だった)、殆どが転換(暗転、入退場)のところで短く使われることが多かった。
オペラじゃないんだし、仕方ないとは思うのだが、先日の蜷川ハムレットでも思ったことをまた感じてしまった。
「生だったらいいのにな〜」
なんか「ちゃらちゃら〜」っていう電子的な音がそれもスピーカを通して聴こえてくると、テレビドラマみたいにみえちゃうんですよね、急に。(テレビならいいのに大きい場所でやるととたんにチープなものに変わってしまう)
音楽が悪いわけじゃないのに、使われているのがチェンバロの音なのに電子音だったりすると、やっぱりちょっと気分が萎えてしまう。(これ、蜷川版でも全く同じことがありました)
予算とかいろいろあるのでしょうが。

まぁとにかく素敵だったのは何と言っても衣装ですね。本場イギリス演劇界を代表するデザイナーの美術、衣装は重厚で美しいだけでなくかつシンプルで、登場人物の口から出る言葉以上のところを語りもしていて、言うまでもなく時代考証的にも違和感のない素敵なものだった。
葬儀のシーンでの葬列や、棺を担ぐ男たちの黒い頭巾などは、ヨーロッパの博物館で見た彫刻や絵そのもの。すごく訴えるものがあった。
黒を貴重にしたセットは素晴しかったんだけれど、やっぱり黒い舞台を3時間以上見続けるのは、目には辛いですね・・・(いくらラーメンズで慣れているにしても・・・笑)。

さてさて、雪の「自由劇場」は玄関のガラスに彫り込まれた大きな葡萄模様も美しく、中の色調もかなりいい。客席はどの席からも観やすいし、ステージの奥行きも使い勝手が良さそうだ。座席は座り心地がいいが、ちょっと左右が狭い。左右に男性が座ったりしたら少し窮屈。
それと客席数に対してロビーがかなり狭い。マチネーだったこともあり、開演前は昼食替わりに持参したおにぎりやサンドイッチを食べる人でかなりごった返した。座るところも少ないので皆仕方なく立ちっぱなしで飲み食いしている。それが素敵な正面入り口からまっすぐ視界に入るのが残念。その日は地方からの観光バスでいらした団体のお客さんもあり、ツァーコンらしいおじさんがロビーのど真ん中の床にやおら段ボールを広げてお弁当とお茶を配り始めるし、おばさまたちは数少ないソファにズラ〜っと陣取って大きな正方形のお弁当を手に「おにいさん、おにいさん、こっちにもお茶お茶!!」と叫ぶ有様・・・・(苦笑)。
たとえまあ、マチネーであっても、これからお芝居を観るっていう最低限の空気は欲しかったですね・・・それがちょっと勿体なかった。
せっかく劇場が素敵だったから。

そういえば。
「四季」といえば石丸くん。「くん」なんて言ったらいけませんね。石丸幹二さん。
そう、今や日本のミュージカル界において欠くことのできない、大切な大スター。
じつは彼は大学の2年後輩で、バッハカンタータクラブでずっと一緒にカンタータを演奏し、また有志で作っていたオペラプロジェクトでも一緒にモーツァルトのオペラをいくつも制作・上演した仲間のひとりだった。当時そのプロジェクトでは「誰でも聴きに来れてわかりやすいオペラ」を目指して、映画並みの料金と日本語訳でモーツァルトのオペラを年に1本のペースで上演していたのだ。当時中心になって動いていた友人たちは今、皆それぞれヨーロッパのオペラハウスの専属になったり、ザルツブルクなどの大きな音楽祭で歌ったりしている。
石丸くんもキャストだけじゃなくて、制作面でもとても熱心に動いてくれたのを思い出す。
残念ながらつい最近彼は「四季」を退団してしまったので、あの「ハムレット」を石丸くんで観てみたかったな〜(過去キャスティングされていたようなので)と、ちょっと悔やまれる。
まあ、きっとこれからもどこかで活躍してくれるはずだから、機会があったら是非彼の舞台を観たいと思っている。

やっぱりいろんな劇団の、いろんな演出家のものをたくさん体験したい。
古典も新しいものも。
今週はまたひとつ、楽しみなお芝居があります!
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by saskia1217 | 2008-02-05 00:39 | 感じろ、考えろ、思え! | Comments(0)

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