不条理

不条理劇・不条理演劇 [ふじょうりげき・ふじょうりえんげき]
人間の生と死の不合理性をテーマにした演劇。1950年代に出現し、主要な作家としてベケット、アダモフ、イヨネスコらがいる。

クリスマスの夜。渋谷のギャラリーにて不条理劇を観る。
演じるのは「風琴工房」という劇団。演出は詩森ろばさん。
11月にKKPを観にいった銀河劇場で、たくさんのチラシを貰った。そのなかにこの劇団のチラシも混ざっていた。いくつかのプロジェクトのなかのcrossing2という企画が、この不条理劇ばかり4作品を集めた公演だった。
その頃ちょうど、別役実さんの「コント教室」を読んで唸っていた私は、その本で語られていた別役氏の「受付」、そしてイヨネスコの「授業」をどうしても一度観てみたいと思っていたのだ。
そこにその演目を両方やる公演のチラシが目に飛び込んできた。すぐにチケットをとった。

プログラムは2種類、それぞれ2演目ずつ。
ひとつは安部公房「鞄」(「棒になった男ー第1景」より)、そして上記の「受付」。
もうひとつが岸田國士「命を弄ぶ男ふたり」、そして上記の「授業」。
つまり、両方観ると3時間10分ほど。でも長くなかったんですね、けっして。
(間に1時間ほど時間があったので近くのファミレスで食事。クリスマスの渋谷はさぞとんでもないことになっているだろうと恐れていたのだが、なるほど、さすがに「渋谷のファミレス」は空いていた・・笑。そしてそのファミレスでは、ローストチキンを勧められることもなく、店内BGMがWAMでもヤマタツでもなく、非常に快い休息を取れたのであった・・・)

役者さんたちの殆どが、たぶん20代くらいの若い方が多く、エネルギーに満ちていてどの作品も楽しかった。
観たかった2作品に関してはあらすじしか知らなかったが、今回はなかば意図的にシナリオを読むことなく、ただ「観に」」行ってみた。オペラでもお能でも、どうしても事前に下調べをしてから行く癖が昔からあった。なんだか不安だったのだ。(絵や彫刻を見にいくときだけはしなかったが)それが最近は、あまりそういうことをしなくなった。そのほうが気持ちも楽だし、素のままでとにかくそのまま観てみるのが一番だ、と思うようになった。

「鞄」は2人の女性の会話のなかに、擬人化された「鞄」が参加するという情景。普通の家庭にころがっている恐ろしい何か、を感じさせる作品。「鞄」を演じる俳優さんが日替わりだったらしいが、それによって見え方も色々違ってくるとのこと。
「受付」もかなり怖い作品。ある雑居ビルの、とある神経科クリニックの受付、という実に日常的な場所とそこで起こる会話が、じつは背筋が凍るくらい「怖い」ことに繋がっていくことが、じわじわと見えてくる。それも実に明るい受付嬢の言動でその恐怖はエスカレートする。受付嬢を演じた女優さんは見事だった。
「命を弄ぶ男ふたり」はあらすじもまったく知らずに観たが、とても面白かった。この作品は怖いというよりも、まさにコントのような感じ。鉄道自殺をしようとしている男が二人、線路の脇で出会ってしまい、そこからそれぞれの「自殺願望の理由、境遇」などが明かされてゆく。人間は極限だと自分で思っているときに、どんな行動をとるのか、という悲しい面白さが終始貫かれる。この二人の俳優さんもよかった。
そして「授業」。これは不条理劇のなかでも最も有名な作品の1つ。ある教授のもとにひとりの女学生が個人授業を受けにやってくる。算術やら言語学やらの話がぐるぐる渦巻かれるなか、最後に女学生は教授に殺される。その家の女中は「またですか、先生」と、教授と一緒にその死体を片付け、また次の生徒が呼び鈴を鳴らす・・・。
演出家によれば「どこの上演でも女生徒が受動態であ」ったので「能動的に殺されていく」演出をしたそうだ。なるほど・・・見方によっては「過激」な演出でしたね。でもすごく笑えた。後半、終盤に向かって女生徒が執拗に繰り返す「先生、わたし歯が痛いんです」という言葉はいったい何をあらわすのか?そして何故彼女は殺されたのか?いや、この場合「何故彼女は殺されようとしてここにやってきたのか?」・・・いろいろ考えると面白い。答えが表現されないところが「不条理劇」のいいところなのか?それをどのあたりまで明解にしてしまうのが「いい演出」なのか?・・・考えることはいっぱいあった。

しか〜し!
どの作品もホントーに「セリフの渦」。
登場人物は多くても3人だものね。そりゃ必然的にセリフの量も多いわけです。
役者さんてホントにスゴイ。いつもながら思うこと。

ということで、プログラムには演出家の考えた「サブテキスト」が少し書いてあったりしたのだが、もちろん、どの作品も色々な演出が可能なわけで、いまややっぱりどうしてもシナリオを読みたくなった。

不条理 [ふじょうり]
[名・形動]
1 筋道が通らないこと。道理に合わないこと。また、そのさま。「―な話」
2 実存主義の用語。人生に何の意義も見いだせない人間存在の絶望的状況。カミュの不条理の哲学によって知られる。

わかったこと。
「不条理劇」は、全然「不条理」じゃない、ってこと。
いや〜、好きだなあ、不条理劇。
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by saskia1217 | 2007-12-26 02:51 | 感じろ、考えろ、思え! | Comments(0)

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