コンクールのバッハ

雨の週末。
昨日は、お手伝いしている合唱団「Cantus Animae」が出場する、全日本合唱コンクール(全日本合唱連盟主宰)の全国大会のため、上野へ。
久しぶりの文化会館。少し行かない間に楽屋のあたりもすっかり綺麗になっていて。

「全国大会」は日本全国の各々の支部(地方)の大会で選ばれた代表が一堂に会し、今度は全国という規模でその演奏の素晴しさを競う大会。
先日の東京都の大会もにぎやかだったが、全国から集まるとなると何だかもの凄い大掛かりなイベントである。
出場者、関係者、合唱大好きという大勢の聴衆・・・その熱気でホール内もロビーも大にぎわい。普段、普通の演奏会ではなかなか経験しない、何か特別な空気が満ちあふれている。
本当に、日本人とドイツ人の合唱好きはスゴイ。
(ついでに言えば、日本人とドイツ人のリコーダー好きも同じくスゴイ・・・笑。日本の音楽教育が最初ドイツをお手本にしていたことに無縁ではないのだろう)

お手伝いした合唱団は、金賞そして台東区長賞、あわせて来年の全国大会のシード権という見事な結果を手に入れられた。おめでとうございます!
思えば「コンクール」という場で自由曲にバッハのモテットを選曲する、という難しい技を決めたわけだが、そういう話を聞くたびに私は自分がまだピアノ科だった学生時代を思い出すのだ。

私の出身音大では、ピアノ科学生は卒業試験で好きな曲を弾くことができる。何十年もの間、多くの学生が選ぶのは決まってロマン派か近現代、それもショパン、リスト、スクリアビン、ラフマニノフ、プロコフィエフ・・・・・ベートーヴェン、シューベルト、モーツァルトにはまずお目にかかれない。ましてや間違ってもバッハのバの字も見ることはできない。
4年生の秋頃、担当教授だったハンガリー人の先生と相談し、私が卒業試験の曲として取り組んでいたのはシューマンの「ファンタジー」。10代の頃から盲目的にシューマンが好きだった私にとっては記念碑的作品で、大好きだったし、喜んで練習していた。もちろん、1学年にピアノ科の学生だけで400人近くいるわけで、当然同じ曲を選ぶ人はゴロゴロいるのは珍しくもなく、まあそんなことは百も承知であんまり気にしていなかった。
が、そのうちに4年生の春に参加したバッハアカデミーでマタイ受難曲を弾いた感動が、沸々と蘇ってきて、どうしてもバッハが弾きたくなってしまったのである。そこで私は急遽、バッハの「半音階的幻想曲とフーガ」に変更したいと先生に申し出た。幸い日本人の先生ではなかったのでそう強くは反対されなかったが、それでも「ロマン派以降でないと、試験では不利なのではないか。バッハなんて地味すぎて点数が入らないに決まっている」と周りから散々言われ、反対されまくった。が、私は先生を説き伏せてとうとうバッハに決めてしまったのだった。
結局試験では、珍しさもあったのか、幸い良い点がついて卒業演奏会にも出演させていただいた。その日の演奏会の最後が出番だったのだが、私の前はたしかスクリアビン、バラキレフ、プロコフィエフなどが並んでいた。その後でバッハ。じつに気持ちが良かった。

身の上話が長くなったが、つまり日本ではまだまだ、特に「声楽やピアノがどうしても中心になりがちな」音楽大学や、その他巷のあちこちで、「バッハは地味、バロックは暗い」なんていうイメージがまかり通っているという驚きである。
いや、今回の素晴しい合唱が認められたのは「もはやそうではない」証拠なのだけれど。
小学校の音楽の授業では、もしやいまだに音楽史は「バッハ」から始まっているのだろうか?
だとしたら、この国の未来はない、と言いたいところである。
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by saskia1217 | 2007-11-12 00:27 | 感じろ、考えろ、思え! | Comments(3)
Commented by mjfh0916 at 2007-11-13 10:12 x
地味?暗い?世間の方々のイメージはやっぱりそうなんでしょうかーー?あの複雑な響きがなければ、もはや合唱の実感がわかないんですけどね。saskiaさまの伴奏で歌われた皆様、受賞の喜びもさることながら、響きの一体感を十分に楽しまれたことでしょうね。いいなあ!!うらやましい!!!
Commented by ななぞう at 2007-11-13 20:32 x
マタイ受難曲との出会いがやがてチェンバロへの道に・・となったのでしょうか? 私もシューマンのファンタジー大好きで毎日のように聴いていますが、まだマタイ受難曲は聴いたことがありません。 このブログ来訪者失格かも。 スミマセン。で、その後、どんな風にチェンバロへの道をたどっていったのかはまたおいおい聞かせてください。 私は音楽の授業はあまり好きではありませんでしたが、音楽の授業で聴いたあの堂々たるトルコ行進曲は忘れられません。あのsaskiaさんの弾いたトルコ行進曲こそ私と音楽との初めての出会いと言ってもいいぐらいのものでしたよ。 素人的には音楽史はそれぞれでお勉強してもいいのでは、、なんて思います。ダメ?
Commented by saskia1217 at 2007-11-14 00:27
mjfh0916様
大学時代、私が所属していた「芸大カンタータクラブ」は、学内の学生たちからさえも「暗いクラブ」と言われて敬遠されていました。それはきっとバッハのせいではなく部員のせいだったんだと思いますが・・・笑。
今回はこちらのほうが合唱団から楽しさをいただきました。


今日もまた日が昇る・・出かけてゆこう!


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