KKP・・・TOOK OFF!

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子どもの頃、遠足の前夜に眠れなかった、という人は結構多いだろう。
私はそういう子どもではなかったし、大人になってからも、飛行機の中であるとか、外国でのコンクールの前夜でさえも熟睡できるタイプである。(別に自慢にはならないが)

その私が、だ。
昨夜は所謂「遠足の前夜」状態になり、朝4時まで眠れなかった。じつに不覚である。
今日は、夏からずっっと待っていたKKP(小林賢太郎プロデュース)第5回公演「TAKE OFF」
天王洲アイルの銀河劇場。
何をそんなに緊張するのかわからないが、会場に出かけて自分の席に座るまで、なんだか妙に脳を含む全身がこわばって足下がフラフラしていたのが自分でも可笑しかった。
「お前が出るわけじゃないだろ〜が!」

それで?

心からたのしかった!!

という、ありふれた言葉は書きたくない気持ちが体全体に充満しきっているが、じつは今言えることはこれしかない。

今年の初め頃にふとしたことからラーメンズのコントを見始めてからというもの、DVD、動画サイト、出版物・・・あらゆる手段をもってラーメンズ、KKP、小林賢太郎さんの作品とパフォーマンスを追いかけてきた。今更私ごときが言うことではないが、どんな言葉をもってしても適切に賞賛できないほど圧倒的なそのエンターテイメント。「努力する天才」たちの中でも天下一品の小林さんに対する、各業界からの絶賛の嵐は絶えないが、私はとにかくこの方の「ライブ」に接するまでは、いろいろな考えや行動をあるところで一旦止めておこうと思っていた。それは小林さんがご自分の全てをただただ「ライブ」に賭けておられると感じていたからだ。

で、今日は初の「生」。
暗転の中からフッと浮かびあがったステージ上の小林さんを見た時、10代の頃にホロヴィッツを聴きにいった時と同じ感覚・・・「生なのに生の感じがしない」という何とも不思議な気分に包まれた。きっと、ありえないくらい映像を見尽くしてきたために、どこか「キャラ化」した小林さんが脳裏に刻み込まれてしまっていたのだろう。
いや、観ていくうちにストーリーや登場人物にどんどん入り込んでいけたのだが、アドリブでさえ彼そして彼らの「素」では全くない感じ、そういうものが微塵も出ない舞台に、心地良い緊張感があった。役者として当然のことかもしれないけれど。

いつものように、可笑しさ満載の言葉のやりとりが胸のすくようなテンポで進むシーン、それと前後してやってくる「皆の胸を打つ」シーン、そのメリハリの良さ。歌あり、ミュージカルみたいなシーンあり、とサービス精神も満開。
「こんな専門的なこと、小林さんどうやって勉強したんだろう」と息を呑むような飛行機オタクのセリフはいつもの「徹底度120%小林賢太郎クオリティー」を感じさせたし、ストーリーのわかりやすさも手伝って、全体的にリズムがいい、バランスもいい、長さもちょうどいい、という印象。たくさんの小さい波があって、でも大きな波はひとつ、というのも成功の原因だったのかも。

「いいお話」だったな〜。「ベタなお話」とも言えるかも。
でも小林さんの書くお芝居はやっぱり、人間のいいところ、を一番素直に出している気がする。
そしてそれがいいと思う。小林さんのコントや漫画に接しても感じるのだが、それがこの方の根本を成しているんだと思う。ブラックな面が上手いだけに、煙にまかれそうになることもあるけれど、本質はいつもそこにかえってきていると感じる。

それから小林さんはよく「グッとくる名セリフ」を、ご自分の役ではなく、誰か他の役に言わせることが割と多いように思うけれど(例えばコントにおいては片桐さんだし、KKPだとPAPER RUNNER の編集長「室岡さん」だったり、LENSの駒形警部だったり・・・)、今日は小林さん扮する「シノダさん」が珍しく、ベタだけどいいセリフを言ってましたね。

「価値のある遠回りはどんどんしなさい」

これもまあ、「部活の先生に言われた言葉」として、だったところが「らしかった」ですが(笑)。

もうひとつ、お芝居後半で、皆を裏切ったシノダさんが、久ヶ沢さん扮する「オリベさん」に暖かい言葉をもらったことに驚き、
「どうしてあなたはそんなに優しいんですか。普通こんなことしたら許せないでしょう!!」
と絶叫したのに対しての「オリベさん」の返事。

「俺がだれかを許さないと、俺もだれかに許してもらえないんだよ」

は〜〜。
私はスーパーで目の高さの棚に売ってるものを迷わず買ってしまうような、至って普通の人間なので、こういうセリフがもろ直球でキテしまうのだ。
でもそういう自分とか、その瞬間水をうったようにシーンと静まり返るお客さんたちの心とか、そういうものは大事にしたいと思う・・・・思わされた作品だった。

「TAKE OFF」には「離陸」「出発」いろんな意味があるけど、「人を救い出す」という意味もあるんだって。今日買い求めたフォトブックのすみっこに小さ〜く載ってた。
そう、「救い出された」私。

だめだ。
観たその日なんて、何か書けるわけなんてない。
無理だ。

大体、終演後に会場で書くアンケートという代物、劇場という特殊な空間で一期一会の出会いをした演者とお客が唯一結ばれることができるほそ〜い糸でありながら、終演直後という茫然自失のお客がロビーの壁を机代わりにして、劇場閉館を無情に告げてまわる係員の声を背にしながら書くのは、あまりにも惨い。
いつも思ってはいたが、今日という今日は本当にもどかしかった。これだけは伝えたい、今日の舞台でここに心が震えた、なんて肝心なことが適切な言葉で出てこず、代わりにダラダラと自分の話を書いてしまったりする。今日のは特に後日ファックスできるものではなかったし。
小林さんはいつも膨大なアンケートを当日や翌日に読まれると聞いているから、きっとそのためなのでしょうけれど。

インタビューなどではいつも、コント師という職業をご自分で「人を『笑わせる』仕事」と表現してらっしゃるのだが、今日舞台を観て、彼がやっているのはまさに「人を『幸せにする』仕事」だとはっきり言えると確信した。
舞台に立って何かしら表現する側の人間は、そこに来てくれた人を「幸せに」しなきゃいけない、やっぱり。黄金律だ。
そしてそれは、世界で一番素敵な仕事。そう思う。

ぐるぐる渦巻く意識のなかで、はっきりわかっていること、何回言っても言い足りないこと・・・。
小林賢太郎さんと同じ時代に居させてくれて、神様ありがとう!
こんなことに出会えることってあるんだ。
生きてて、ほんとうに良かった!
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by saskia1217 | 2007-11-03 05:39 | 感じろ、考えろ、思え! | Comments(0)

今日もまた日が昇る・・出かけてゆこう!
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