今日もまた日が昇る・・出かけてゆこう!

by saskia1217

イスラエルの香り

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何年か前に、イスラエルに演奏旅行に行く機会があった。それはバッハ・コレギウム・ジャパンの初めてのイスラエル公演だった。
今考えると、本当に貴重な経験だったし、あの土地に行けたことは本当に意味があった。じつに幸せな体験だったと思う。当時、丁度アメリカのイラク侵攻だったかで、イスラエルは外務省の渡航危険地域にも入っていて、じつは出発のその日まで、本当に飛べるのかどうか定かでなかったような、ぎりぎりの状況だったのだが。

テル・アヴィヴに滞在したのだが、そこでの演奏会に加えて、エルサレム郊外の教会でヘンデルの「メサイア」の映像の収録もあった。「メサイア」の他に持って行った演目は、バッハのヨハネ受難曲、カンタータなど。文化的には殆どヨーロッパの雰囲気、水準と変わらず、素晴らしい音楽家や芸術家を擁するテル・アヴィヴではあるが、キリストを十字架につけたユダヤ人たちの物語をあからさまに激しく描写する受難曲の演奏を、果たしてこの国の聴衆は、どう受け止めるのだろうか、という不安と期待があったことも事実。
だが、彼らは熱心に対訳を見ながら、まるで全身を耳にするように身を乗り出して受難曲を聴いてくれた。何度も出て来るイスラエルの土地の名前や、よく知られた人名などに敏感に反応しているのも伝わって来た。終演と同時に起こった熱狂的な拍手と、翌日の新聞紙上の絶賛。その全てに、非常に感動したのをよく覚えている。

テル・アヴィヴの素敵な海岸。そこから徒歩で行ける、聖書にも出て来る小さな港町ヤッファ。聖地エルサレムの数々の教会や寺院、嘆きの壁やヴィア・ドロローザ。オリヴ山に本当に茂るたくさんのオリーブの木。茶色く乾いた山々から遠くに見下ろせる死海。
そして、銃を装備した兵隊たち。

簡単だった入国に比べて、出国は大変だったのも強烈な思い出の1つ。団体だった私たちは行き帰りともパリ経由だったのだが、テル・アヴィヴの空港で搭乗手続きをする時には、ランダムに選ばれた数名が別室に連れていかれ、あれこれと質問に合ったのだ。もちろん怪しまれたということではなく、あくまでも形式上ではあるのだが、とはいえキッチリと取り調べをされたのにはオドロキだった。イスラエルで何をしていたか、などが質問の主なものだが、じつは私もその数名の中に入ってしまい、英語でいろいろ聞かれた。私のパスポートには8年間に渡るドイツ滞在のビザや、ポーランド、チェコなどのビザなどがベタベタと貼ってあったこともあり、ドイツでいったい何をしていたのか(笑)、という質問もあったように記憶している。まぁ、これも興味深い経験だった。

それにも増して、思う存分満喫したのが、地元の味。
さわやかでフルーティーな地元の絶品ワイン、地中海に面した国々ではおなじみの、ニンニクや豆類、オリーブや羊の肉などの豊かな食材を使った、実に美味しい料理。
そして、このトルコ風コーヒー。
実はその時買って帰ってきたコーヒーが、まだ保存してあったので、最近せっせと味わっている。作り方は簡単。コーヒーの粉を鍋に入れ、水を入れて湧かす。沸騰するかしないかぐらいで火を止め、「出来るだけ上澄み」だけをカップに注ぐ。そして「出来るだけ上澄み」を静かに飲む。
なんとな〜く、普段飲んでいるドリップ式コーヒーとは違う味なんですね。粉に直接お湯を入れるという点では、ドイツなどでは結構一般的なプレス式のものと変わりないように思うが、なんていっても「鍋で煮る」というその作業が、なんともいえなくいい。

ちなみにこのカップは、ブレーメンの有名な紅茶やさんTee-Handels-Kontorのカップ。青と白の色はブレーメンの象徴。後日ブレーメン本店にも行ったが、これはライプツィヒの支店で買ったもの。帰国以来、殆ど毎日愛用しているカップ。

イスラエルのコーヒーを飲みながら、このところまた不穏になってきた彼の地に思いを馳せる。お世話になった陽気なバスの運転手さんはどうしているだろう。おみやげを買ったアクセサリー屋さんの面白いおばさんは危ない目にあっていないだろうか。あの時聴衆だった街の音楽好きのお客さんたちは、あれから何度も起こったテロの犠牲になってはいないだろうか・・・

ロンドンでテロ犯が未然に捕まったニュースを受け、「パレスチナ問題が解決されない限り、テロは無くならない」と、今日もテレビでどこかの評論家が話していたが、それを十分望みつつも、はっきり言って「パレスチナ問題が解決する」ことなど、もしかしたらないのではないだろうか・・・
ペシミスト過ぎる?
いやいや、これだけ原爆の恐ろしさを訴え続けても、なかなか伝わらないことを思ってみても、本当の平和はどこにあるのだろうか、と思ってしまうのも無理はないような気もする。
ただ、自分に出来ることは何か、と考え続けること、それだけは忘れたくないものだ。
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by saskia1217 | 2006-08-12 23:51 | くいしんぼうメニュー | Comments(0)