単細胞

・・・という言い方を最近はあまり聞かないが、昔はよくそう言ったものである。
つまり私みたいな人のことを。
(とはいえ、ミジンコやミドリムシには、実に失礼な話ではある)

ひとつのことを考えだすと、他のことに気がまわらない。または、すぐにいろんなことをやりたくなるくせに、実は複数のことを同時にやるのが下手くそだ。
目下最もそれを実感しているのが、語学。

学生時代、フランス語の授業を受けて校門を出たところで、外国人観光客に「国立博物館はどこですか?」と英語で聞かれ、「ここをまっすぐ行った左手です」と言おうとして、ど〜してもleftが思い出せず、どんなに振り絞ってもgaucheしか口から出なかったことがあった(呆)。
じつに単細胞である。

最近では、通訳としてお手伝いした公開レッスンで、講師がドイツ語よりも英語を使う頻度が高く、その切り替えが私にとってはなかなか上手く行かないことがあった。ただでさえ最近フランス語ばかりやっているので、錆び付いたドイツ語を起動させるのにも少し時間が要る。そこにいる全ての人が英語を理解する人とも限らないし、こちらは立場上聴講している全ての人に、講師の発言の詳細をくまなく伝える義務があるので、そのへんのバランスが難しかった。
単細胞は治らないようだ。

いろんな外国語をやってみるのはたしかに大好きだ。今まで、ともかく理由はなんであれ(笑)、ちょこちょこといろんな言葉にトライしてきた。例えばオランダ語、フラマン語、スペイン語、チェコ語、ポーランド語・・・でもそんなわけで限りなく広〜く浅〜くなので、その殆どはとてもとても「使える」までにはならず、辞書を引けば何となく文章がわかった気がする、程度止まり。ま、もともと「動機が不純」だったから仕方ないけどね・・・

ここ数年、曲がりなりにもしがみついて続けてきたのがフランス語なのだが、これがまた結構やっかいである(某都知事とは違う意見ですけどね)。語彙が増えない、時勢がうまく使えない、活用が覚えられない・・・などの典型的ダメダメな症状である。
ご多分にもれず、一番最初に触れたのは英語、それから高校に入った頃にドイツリートに出会い、ドイツに強烈に憧れて始めたドイツ語。最初の大学ではドイツ語と英語とフランス語を履修、英語の先生がとってもいじわるだったのでどんどん英語は嫌いになり(笑)、反動もあってドイツ語ばかりに熱中。次の大学ではフランス語とラテン語、オランダ語を少し。ラテン語は前期だけで挫折(笑)。反面ドイツ語のほうは、高校から通い始めた代々木にある某語学学校でも、すでにその頃にはすっかり古参になり、事務やお掃除のアルバイトから、付設レストランのウエイトレスまでやっていた。
おかげで骨の髄まですっかりドイツに染まった私は、留学したのも当然のごとくドイツ。学生生活と社会人生活、なんだかんだで8年近くドイツに腰を落ち着けてしまうことになる。

で、ドイツに住むようになると、そこは地続きのヨーロッパ、当然他の国にも行きたくなるし、仕事で行かねばならないケースも出て来る。ドイツ語だけでなんとかなるのは、オーストリア、スイス、オランダ、チェコ、ベルギー・・・この辺になるとだんだん怪しくなる・・・ポーランドはもう殆どダメでしたね(ちなみにあそこは歴史上フランス語ならOK)。
それも国際的な催し、学会とかコンクールとか観光だと、結局のところ全員の共通語は英語になってしまう。急に英語を使うのもかなり大変だったが、1日2日たつとどうにか耳も慣れて使えるようになってくる。

一番困ったのが、ラテン系の言葉の国だ。
つまり、フランス、スペイン、イタリア。
イタリアの小さい街のホテルなんかだと、「英語?ダメだね〜。フランス語ならわかるよ」とかいうオジサンによく出会った。スペインはもうランゲンシャイト(ドイツの大手辞書出版社)のミニ会話ブック片手に、なんちゃってスペイン語でやるしかない。
(でもスペイン領カナリア諸島では、張り切ってスペイン語をやっていってもちょっとガッカリする。ドイツ人観光客であふれるLanzarote島はみなドイツ語で事足りてしまった。フランス人がよく行く隣りの島じゃ、フランス語が使えるらしい)

で、肝心のフランス。
一頃は「フランス人は絶対自国語を通し、英語なんてしゃべってくれない」という時代も確かにあったようだが、今はもちろんそんなこともなくなっている。
でもせっかく、朝起きてパンやさんにクロワッサンを買いにいくのなら、フランス語を使いたいでしょ?!
で、今考えると本当にヒドいのだが、どこのお店に行ってもただひたすら「Je voudrais・・・(欲しいんですけど)」と言ってから品物を指差し(笑)。これもよくあることだが、そこから相手が何か話しかけてきたらもう終わりである。フランスはパリとディエップしか行ったことがないのだが、こんなことを続けているうちに、私のフランス語コンプレックスはどんどん積もり積もっていくことになる。

ちょうど今から8年前に帰国したとき、あまりにも暇だったこともあり、またこのコンプレックスを何とかせねばと思い、結構いやいやながらにフランス語の語学学校に通い始めた。あれから随分たつのにフランス語は一向に上達していない気がする。その国に住むとかいう切迫感がないせいもあるだろうし、歳をとって確かに単語の覚えが悪くなっていることもあるかもしれないし(悲)、「不純な動機」がないせいかもしれない(苦笑)。

なんと来週は、フランス語のとある試験を受けることになっている。結局今回も直前になってお尻に火がついている始末。
それでも気がつけば、フランス語が前より好きになっている事実は、少なくとも喜んでいいだろう。
フランス語をちゃんと習い始めてからは全くフランスに行っていない。
でもいつか、パリの朝クロワッサンを買う時に、おばさんの言葉ににこやかに答えてみたいものである。
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by saskia1217 | 2006-06-12 01:13 | 感じろ、考えろ、思え! | Comments(0)