数日前にTVで、あるニュース映像を見て以来、ずっとムカムカしていたことがあった。
トリノで金メダルを獲得した荒川静香選手が、文部科学省を訪問した際、文科大臣が口にした言葉。
(ロシアのスルツカヤ選手が転倒したことに関して)
「人の不幸を喜んじゃいけないけど、こけた時は喜びましたね」

これを聞いたときはさすがに唖然としたが、その場でこの言葉をまともに耳にした当の荒川選手が、表情を凍らせて絶句していたことも印象的だった。彼女がその時感じたであろう驚きと非常な情けなさが、こちらにも伝わってくるような空気だった。

政治家に失望することなど今日日珍しくもなく、それにいちいち腹をたてていてはキリがないのだが、今回は特に「文部科学省」という、いやしくも一国の文化を担うところの最高責任者の発言だったことを考えると、失望を通り超して、悲しいやら腹立たしいやら、この国に住んでいるこの国の国民であること自体「恥」であるようにさえ思えてしまった。

彼が荒川選手の金メダルを喜び、非常に嬉しく思っているのはわかる。しかし公の席での大臣という認識以前に、一人の人間として、ついこういう言葉が出てしまうということに、私は非常な驚きを感じた。喜びを表現するのに、もっと他の言い方はいくらでもあっただろう。精一杯演技をした当のスルツカヤ選手に失礼なのはもちろんのこと、何よりも、100%自分の力で結果的に勝った荒川選手に非常に失礼である。この一言で、この大臣が彼女の金メダルを祝う意味や気持ちが、じつは本物ではなく、すべて表面的な賛辞として空虚なものだったことが露呈してしまったように思う。
1人のスポーツ選手、1人の芸術家、1人の文化人というものが、いったいどのようにして作られるのか、そして本当に素晴らしい業績というものが、どれほどの厳しさと精神的な高さとで作られるものなのか、この大臣には全く理解できないのだろう。
もちろん他人との競争であり、他人の失敗が結果的に自分の成功を導くこともあり得る。でもその本質にあるものは、どの選手、どの芸術家、どんな職種のどんな人間にとっても、結局は「自分との戦い、自分を乗り越えて行くこと、自分を全うすること」であると、今回の荒川選手の金メダルは私たちに教えてくれたはずである。
この国の文化を担う大臣が、こんなことも感じられない人間であるとしたら、これは本当に由々しきことだ。

「文化」というと堅苦しい響きに思えることもあるだろう。でも「文化的レベルの低さ」というのは結局、感情や想像力の欠如、そして人間というものに対する敬意、人間の持つ力を信じること、そういう理解力の貧困さなのだと思う。

この映像を見て不快になった人は多かったとみえて、その後文科省には抗議のメールなどが殺到したらしい。今晩になって、この大臣は「一部配慮に欠けた発言をした」と、スルツカヤ、荒川両選手に「お詫び」をすると発表したそうだ。でもそれも「抗議があったから、謝った。失礼だった」止まりであったとしたら、あまり意味はないのだが・・・
いったいいつになったら、この国で「本当に尊敬できるような」政治家に出会えるようになるのだろうか・・・・

閑話休題。
しかし荒川フィーバーは相変わらずすごい。
彼女がフリーで使った「Nessun dorma」(プッチーニ「トゥーランドット」のカラフのアリア、奇しくも開会式でパヴァロッティが歌っていた)は、携帯着メロで3万件のアクセスだという(でも着メロが人と同じって確率も多いってことか・・・ははは)。クラシックでは桁違いらしい。そのアリアの入ったCDももちろんすごく売れているらしい。
一番驚いたのは、私が毎週楽しみに見ている、木曜日放送のフジのドラマ「小早川伸木の恋」の先週の回で、主人公が同僚とバーで飲みながら「結婚の本質」みたいなシビアな話をしている場面では、なんと早速「You raise me up」(荒川選手が、その「ケルティックウーマン」のヴァージョンをエキシビションで使用した)がBGMに使われていたことだ(ドラマでは男性ソロヴォーカルだったけど)。

「は〜〜〜〜、早速かぁ??」

挙げ句の果てに、「荒川スペシャル」なる蕎麦とか(「イナ・バウアー」をあらわした反り返った海老の天ぷら、大根おろしと梅干しの「日の丸」、それに「メダル」の金粉がのっている・・・)、かの「100人乗っても大丈夫!」のイ○バ物置には「是非『イナバウアー物置』『荒川物置』を作って欲しい」というメールが殺到したとか・・・(呆)・・・etc.etc.
キリがありません。

あやかるのはいいけど、皆さん、ほどほどにね。
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by saskia1217 | 2006-03-06 23:32 | 感じろ、考えろ、思え! | Comments(0)

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