凄味と包容力…ひとことで言えばそんな一夜。
ずっと前者ばかりを武器に日本のロックシーンを牽引してきたエレカシ。
昨日の日比谷の空。幸せな空。
台風が嘘のように、開演時間前に去った。
開店前数時間から何百人も並ぶ物販の列。
ソールドアウトするグッズ。
なんだか異様な高揚感。
エレカシって…こんなに人気あったっけ・・・?
今やもうFC会員でも当選が奇跡になってしまった恒例の野音コンサート。
私が初めて行った2008年の野音は、一般発売で、しかも発売日から数日後にチケットサイトで余裕で買った記憶がある。ちゃんと指定席、しかもそこそこいい席だったなあ(笑)
それが今では、1人1枚のみ、厳重なIDチェック。
指定席はおそらくほぼ全てFC会員のみ、一般発売で運良く取れた人は最後列立ち見席。
しかも今年は開催が1日だけ。
当選メールが来た時は正直狐につままれた感じでしたな・・・
ありがたく、ありがた〜く赴く。
Mステ特番出演決定で急遽開演前に1曲だけ生中継となった。
事前に段取り説明してくれたテレ朝の女性スタッフさんの言葉にいちいち温かい拍手で答えるお客さん(笑)
メンバーがTV用のちょいシックな衣装で登場、大歓声。
既に完全に出来上がっているお客さんは、OA直前にモニター音声から流れたブルハにはノリノリ、嵐にはぽかーん(笑)
宮本さんの「ほらこんなに盛り上がって」の一声に間髪入れず拍手。
エレカシファン、好きだわ。
やっぱ生中継は緊張感あって楽しい。
私が経験した10年ほどの野音史上、一番高揚感あるオープニングかも。
スタジオのタモリさんから「そっちは暑いの?」と呼びかけられ、センターのメインカメラを探して返事される宮本さん
「はい、暑いですね〜すごくいいお天気になって・・ありがとうございます!
いや〜43位なんて、ミュージックステーション、もー感激しちゃって、ホント嬉しいです、ありがとうございます!
今もね、歓声があがったんですよ〜」
(客、間髪入れず歓声・・・笑)
元気が出る曲特集のため「俺たちの明日」をTVサイズに2番だけキッチリ演奏。
私達もキッチリ盛り上がって応援。
帰宅して録画見たら、まー、お手本のような熱血ライブ映像でした!
「43位に入るなんて嬉しい」を、この後ライブ中にも3回くらい言ってて本当に嬉しそうでした。
我々ファン的にはいつだってエレカシの曲なら全て1位なのだが(笑)そのなかでも同点1位が300曲くらいあるから困る。
今日だって「一番良かった曲」が20曲くらいあったからなぁ…
無事中継が終了、OKでるまでちゃあんと拍手し続けたお客さんも見事なプレー。
「みんな協力ありがとう!なんか、貴重な体験だったね。え〜とまた後で出てきますんで(笑)それまでみなさん、どうぞご歓談を」会場爆笑。
17時開演。
全身黒に着替えた4人が登場。
「さきほどはありがとうございました〜!
いや〜晴れてよかった。いや雨だっていいんだけど、みんなだってその覚悟で来たと思うけど、そりゃまあ、雨よりは晴れてたほうがいいわけで・・・
じゃ、よろしくお願いします!・・いや、ヨロシクって変だな(笑)」
「今日は二段階のロケットスタートです、ロケットスタート。ロケットがどうやってスタートするのか知りませんが」
「地元のダンナ」で軽快に始まる。
なんだか何もかもが爽やかだ。
「悲しみの果て」も自然体。
やっぱりこの日もMC少なめ、テンポは全てゆっくりしっかり。
ダブルアンコール含めて全31曲、およそ3時間くらいだった?
最近30周年として出したベストアルバムを中心に全国ツアー中なので、野音はそうじゃない「どちらかと言うと俺が気持ちいい曲」(笑)と言うことで少々マニアックなものばかり。
心に残ったのは
曙光、九月の雨、シグナル、武蔵野、風と共に、秋、Tonight、涙の数だけ…
なんて贅沢なチョイス!
「おまえはどこだ」「涙の数だけ」はファン歴10年目にしてようやく初生聴き。
こういうのが聴けるライブをもっと作って欲しいな!
心に残った曲たち。
「Tonight」「真夏の星空は少しブルー」
ファンには人気の低いアルバム「愛と夢」だけど、私はかなり好きなのだ。最近よく歌ってくださって嬉しい。
やっぱりすごくいい。今日の野音の印象が「物凄く色気のあるライブ」だったのは、20代30代前半の作品を今50代で歌ってくれたからこそ。
アルバム「ライフ」も同じ。この日の「秋〜さらば遠い夢よ〜」はまさに琥珀色をしていた🥃。まさに今、という季節感と共に。
「曙光」
この日一番心に残ったかも。「若い時、25歳のときの曲です」素晴らしかった。バンドもすごかったなあ。
「今宵の月のように」
「一番のヒット曲、好きな曲なんです。野音にはぴったりなんですよね」と、いつもの曲。
一体何回聴いただろうか、いや彼らは一体何回演ったんだろう…
アコギを弾きながら♪く〜だらねえと〜♪と、あのアドリブ風ヴァージョンで始め♪溢れる熱い涙♪までをしみじみ歌ったあと、♪いつまでも〜♪からバンドがすべり込んで来る。
最近の傾向としてすべての曲をゆっくりしっかり歌う宮本さん、すっかり音源通りにテンポの落ちた「今宵」、その噛んで含めるような言葉がこのバンドと私のいろんな思い出を蘇らせてくれた。
私史上最高の「今宵」がまた塗り替えられた気がした。
「月の夜」
開場した時にステージをみたらハモンドがあって、あ、今日は細海魚さんかな?だったら「月の夜」絶対聴きたい!と思ったのだ。
はたしてまさに!
月は見えなかったけど、月や星や秋や夏やいろんなものを見せて、聴かせてもらった。
やっぱり細海さんはずーっと跳ねてて。
神がかった迫力、ひっそりとした優しさ。
細海さんのキーボード好きだ。
「武蔵野」
野音には欠かせない曲。この日激しい曲では超キレのよかったトミのドラムが、ここではあたたかい。ラスト、歌が終わってから空白を受けて、ドラムだけが残るライブ仕様が好きだ。
「シグナル」
これも野音には絶対聴きたい曲。泣ける。宮本さんは客席の男性たちを指差しながら、たいせつにたいせつに歌っていた。♪どのみちオレは♪の最後のつぶやきが全てを語る。
「男は行く」
圧巻!!「曙光」と共にこの日の二大巨頭。
身を2つに折りたたんで自分の全てを振り絞る歌係。歌い終わるや否や、無言で退場。いつもならすぐ拍手が起こるところ、シーンとしたままの客席。ゾッとするほど凄みがあった。
すごい、を通り越して、この日はホント正直怖かった。
第二部あたまに「友達がいるのさ」
これも野音必須。上下側、まんべんなく走り回る、いつものスタイル。歌詞とともに連帯感がひろがる。
「ベイベー明日は俺の夢」
なんつータイトルだよ、って思うその50倍くらいいい曲なんだよなあ(笑)
目下わたしの目覚ましアラームがこの曲なのだが、こうやってライブで聴くと、「元気の出る歌」として今や皆に愛されてる「俺たちの明日」にとって替われる曲なんじゃないかと思った。
「3210」
ここにきて、ちょいちょい出ていた「凄み」の極致に。
次の「Rainbow」になだれ込むときの一瞬の空白がすごい。
「ガストロンジャー」から「ゴクロウサン」へ繋げるという暴挙(!)、その1曲ごとのギャップがひどく、気持ちを振り回される。
そして「風と共に」
ちょっと声が疲れてきた?感じながら、やっぱりこれ、本当にいい曲だ。
「みんなのうた」になってよかった。
そういえば今年の野音、お花がいつもより多かった気もしたけど、NHK関係からのお花が多いのが目立ちましたね〜
ん〜、年末になんかイイコトが起こるといいですねえ・・・
(期待)
アンコールでは「花男」「ファイティングマン」からのダブルで「待つ男」という怒濤の流れ。
そこで、下手壁に持たれてスタンばってる丹下さんがヘドバンしているのがよく見えました・・
曲のイントロでちょいちょいアドリブでやってくれるスキャットや、楽器と対峙してやるインプロなどはもう、声じゃなくて楽器。
宮本さんの声の凄味、言葉の凄味、音楽の熱量。
4人(+サポート2人)の間に瞬時に光る電流。
鳴り渦巻き…からの間…からのド爆音。
人間が音でできることってすごいんだなぁ。
あらためて唖然。
そうそう、メンバー紹介でヒラマミキオさんを
「オレが弾いてないところを全て弾いてくれるミキオさん。シャイです」と言っていて笑いを誘ってたけど、何かの曲のあとで宮本さんがミッキーに「○○していいからね」みたいに話しかけてらしたような。
遠慮しないで弾いていいよ、みたいなことだったのかしらん。
わかりませんが。
そんなステージ上の、緊迫感だけじゃなく、プレイヤー同士の気持ちの流れが見えるのも、ライブの良さだね。
「みんなありがとう!エレファントカシマシを…(止まる)あ、愛して…くれてありがとう…なんて言っちゃうとアレですけど」
と言ってから照れるフロントマン。
「今日はみんな、エレカシと一緒に素敵な時間を過ごしてくれてありがとう!
そう、うん、音楽を愛するみんな…」
愛ってコトバを素直に言えて、それが本物だとわかる年輪。
ラスト、細海さんとミキオさんに挟まれて肩をつなげて「ストーンズ挨拶」をする4人。
トミと石くんの間の宮本さんは、二人の肩にぶら下がって足をブランブラン。
なんか・・・いつもどおりの彼らをみるとホッとする。
落ち着き、熱量、天真爛漫、色気、安定、プロ・・・
蝉の声とじっとりと纏わりつく熱い空気で始まり、虫の声と風で送り出されるエレカシ野音。
いつもどおりの野音。
でも…
来年同じことができるかどうかわからない。
聞こえない見えない歩けないかもしれない。
いないかもしれない。
だから今日の奇跡。
そう思ったら「この4人はどうかこのままで…」と願わずにはいられなかった。
振り回されてびっくりさせられてどやされて泣かされて叱られて
褒められて慰められて励まされて笑いかけられて
包んでもらった。
帰り道、乗った地下鉄が反対方向だったことに20分してから気づいたのは…
不覚。
乗り間違いなんて、5年にいっぺんくらいしかやんないのに(笑)