「いただきます」

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さて。
永平寺での(まだ言ってんのかオマエは!・・・ちょっといいお話を書くのでおゆるしを)

・・・永平寺での起きてる間ずっとのお作法のなかでも、特に大事で複雑なのが食時作法(じきじさほう)ということは書いたのだけど
禅堂へ入る→自分の単へあがって坐禅を組む→展鉢(応量器=食器一式を広げる)・・と始まり、食べ終わって食器を洗いもとどおりに袱紗にしまうまで全てが、細々とした決まり事のみで進むのだが、その動作の合間合間に必ず入るのが「果誦(かじゅ)」というお唱え。
それが・・・
「○○の偈」
偈(げ)っていうのは「韻を踏んだり詩のかたちになっているお経、または仏様などを讃える文」って言えばいいのかな。

薬石(夕食)は仏教ではもともと摂らなかったものなのでお作法も略式になり、短い「食前の偈」「食後の偈」だけ(またはそれらのかわりに「五観の偈」)
小食(朝食)では「展鉢の偈(てんぱつのげ)」「念誦」「施食の偈(せじきのげ)」「五観の偈(ごかんのげ)」「供養の偈」「三口食の偈(さんくじきのげ)」「折水の偈(せっすいのげ)」「歎仏の偈(たんぶつのげ)→これは首座のみが唱える」
そして一番正式な食事である中食(昼食)には小食バージョンにもうひとつ「出生の偈(すいさんのげ)」が加わる!(お唱えがいっぱい!)

これから頂くものの効能や、自分以外の生き物に食べ物を施す祈りや、今から口に入れる動作に伴う誓いや、食器を洗う水に感謝や・・・場面場面に応じてその内容のものを唱えるのだけど
この中でたぶん一番有名で、場合によっては薬石のときも、つまり三食ともに唱える食前のお唱えが
「五観の偈」
ときどき仏教系の学校の食堂に掲げてあったりするらしいから、見たことのある方もいるんだろうな。
私は全く知らなかった。
永平寺に行こうと決める前に見ていたEテレの「お寺の知恵拝借」で初めて知った。

「五観の偈」
一つには功の多少を計り、かの来処を量る。
二つには己(おのれ)が徳行の全缼(「卸」の左側に、右に「欠」)をはかって供(く)に応ず。
三つには心(しん)を防ぎ過(とが)を離るることは貪等(とんとう)を宗とす。
四つには正に良薬を事とするは形枯(ぎょうこ)を療ぜんが為めなり。
五つには成道の為の故に今此の食(じき)を受く。

これは曹洞宗の言い回しで、同じ禅宗でも臨済宗では少し言い方が違うらしい。
日本曹洞宗の開祖・道元は若い頃中国に渡った時、学んだ寺で「食事」を非常に重んじていることにとても感銘を受け、その精神を持ち帰ったと言われている。
その道元の、食べ物に関する代表的著書「典座教訓」(料理について。作る方)と「赴粥飯法」(頂き方。お作法など)、その後者にこれが書かれていることから広まったそうだ。
道元のオリジナルというよりも、唐の時代の南山禅宗の僧が書いたものを宋時代にまた別の僧がまとめたもの、を道元が引用したらしい。

1 この食事がここに来るまでいかに多くの人の手数と労苦が費やされたか、そのことに心を留めます(感謝)
2 自分は果たして、それをいただくだけのことをしてきただろうか?欠けたことは無かっただろうか(反省)
3 美しい心を曇らす、生まれつき持っている三毒(貪り、怒り、おろかさ=妬み、に近い)を抑え、修行の心をもっていただきます(修養)
4 食事は空腹を満たすだけではなく、心身の弱まりを治す薬としていただきます(目的)
5 心身ともに健やかに仏の道を成ずるために、いまこの食事をいただきます(理想)

読んだだけで、なんか胸に手を当てたくなるよね。
毎食毎食「いただきます」「ごちそうさま」と言いながら、「お米粒残すとお百姓さんに悪い」と言いながら、ときには時間がなくて急いでかき込んだり、テレビを見ながら心ここにあらずでダラダラ食べたり、人とぺちゃくちゃ話しながら何を食べているのかも無意識だったり・・・そんなこともしてきた。
そんなことも仕方ない、けどせめて「いただきます」「ごちそうさま」を言う瞬間だけは、この5つをギュッと凝縮して込められたらいいなあ、と思う。

「五観の偈」も好きだったのだけど、応量器を広げる前に唱える「展鉢の偈」もけっこう好きでした。
お釈迦様の一生を5文字×4で言い表すコトバから始まる。
「念誦」の冒頭に雲水さんのリーダー(堂行?)が唱えるコトバが、あの「陀羅尼」みたいに当て字なんだけど音が好きだったな。
「にゃんにさんぽうあんすいんし、にゃんぴんそんしゅにゃん」
ていうんだけど。
その挙唱に続いて皆で唱えるのが十の佛名なのだけど、その合間合間に鳴らされる戒尺の音がまたいいんだよねえ。
私の単は(食事の時みたいに)外に向かって坐る場合、ちょうど真向かいあたりがその食時作法担当の雲水さんだったので、その方が唱える偈文の発音や、戒尺の打ち方や、食事全体のお作法やスピードが目の当たりにできたので、とても興味深かった(ま、そんな余裕が出てきたのは3日目くらいだったけど・・苦笑)。

永平寺から帰って2週間。
相変わらず野菜の煮物ばかり食べ、日付が変わらないうちに寝て、テレビはつけない毎日。
そして今のところまだ、毎食前に「五観の偈」を唱えています(笑)
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by saskia1217 | 2016-10-19 21:00 | 感じろ、考えろ、思え! | Comments(0)

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