A線上のアリア☆チェンバロ奏者 廣澤麻美 公式ブログ  Asami Hirosawas Blog


今日もまた日が昇る・・出かけてゆこう!
by saskia1217
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他不是吾〜永平寺参禅・四日目最終日〜

永平寺での参禅。
朝暗いうちの振鈴が心地よくなってきた。
4日目最終日、この日だけはちょっぴり遅い3時30分の振鈴。
4時から30分の暁天坐禅を終え、いつものように朝課のため皆で列になって法堂へのぼる。
真っ暗な中に微かな緑と水瓶から落ちる新鮮な水音に差し掛かるのが、毎朝本当に楽しみだった山門廊下。
中央を横切るとき、仏殿に向かって合掌低頭しながら、ああ、これももう今日で終わりなんだと思って胸が詰まり、丁寧に丁寧に頭を下げた。

この日私達が読んだお経は2日前と同じ5種。お焼香も。
広いお堂であんなに大勢のお坊さんと一緒に声を合わせて読経できるなんて、本当になんて贅沢なんだろう。
3回目にしてようやく、ずら〜っと並んだお経の文字の、どこを速く、どこを伸ばして読むのか、やっと慣れて来たところだった。
ちなみに、使った経本は

「永平寺日課経大全」(黒い本)
「永平高祖御垂訓」(黄色い本)

参禅中に朝課で読んだお経は
般若心経(10/3のみ)
参同契
五十七仏
大悲心陀羅尼
妙法蓮華経如来寿量品偈
消災妙吉祥陀羅尼

日本語のもの、漢字の音読みばかりのもの、陀羅尼といわれるサンスクリットの当て字のものなどいろいろあって面白かった。
なかには、子どもの頃からお寺で聴いてきたからなのか、どうも聞き知ったようなものも。
木魚に合わせたテンポが、最初ゆっくりでだんだん速くなったりするのが面白い。
音の点で一番好きだったのが
「南無喝囉怛那 岔囉夜耶」(なむからたんのー とらやーやー)で始まる『大悲心陀羅尼』や
「消災妙吉祥陀羅尼」の「入縛囉 入縛囉 𥁊囉入縛囉」(しふらーしふらー はやしふらー)」などかな。

そうそう朝課で毎回、供養するべき家系の名前を連呼するのだけど「徳川」「松平」「水野」なんかの先祖代々を呼んでいて、おーその人たちかあ・・・なんて思ったり。

大庫院で擎盤し、禅堂にて朝参。
五体投地の三度のお拝が、ようやくスムーズに出来るようになってくる。
小食、この日の粥はやっぱりお餅入り。
前日のよりもお餅の固形が大きめに残っていた。美味しかった〜〜!
そしてごま塩が白ごま!
これも本当に美味しい。

続いて作務、この日私は自分たちの寝る部屋だった控え室の担当。畳を帚で掃き、ちりとりでゴミをとる。
帚もちりとりも、中学高校以来持っていなかったかも。
皆で雑巾を濯いで終了。
そしてこの日は4日間お世話になった応量器も皆で洗う。
着ていた着物と袴を返す。
私服に着替え荷物をまとめてから集合、初日に動機などを書いた紙に感想を書き加える時間。
感じたことがたくさんある、言いたいこともたくさんある・・・裏まで書いても足りなかった(苦笑)。
化粧品やカメラ、財布などを返却してもらってから、もう一度全員で集合し、参禅係の雲水さんたちそれぞれが一言ずつ感想を言ってくださる挨拶タイム。
そう、この人たちとなんと4日もずうっと一緒にいたのだ。感謝の気持ち、親しみ、なんか情が移ってくるというか(笑)。お名残惜しいの一言。
「皆さんと一緒に過ごして、自分が入門したときのことを思い出し、初心にかえることが出来ました。皆さんもここからそれぞれの場所に戻っても、いつのまにかスリッパを揃えている、他人が消し忘れた電気を何気なく消している、のようなことが起こると思います。それを大切にしてください」
「自分は寺の息子に生まれ、何をやっても『寺の息子』と褒められたり貶されたりで反抗ばかりしてとても嫌でしたが、今ではここに修行にきて本当によかったと思っています」
「これは皆様の修行であって、私達はそのお手伝いをしているだけです。なのでおひとりおひとりがしっかりと自覚して行って下さい」
ほかの部署もきっとたくさん大変なお仕事があるのだろうけど、この参禅係というのもかなり面倒でやっかいな部署だったのではないだろうか。
こんな、な〜んにもわからないド素人の面倒を朝から晩までみるのだ。いろんな人がいる。飲み込みの悪い人、身体が弱い人、どうしても時間に遅れがちの人、そして身体の不自由な方も。
お二人とも23歳と伺って、いやもう本当に頭が下がる思いだった。
この若さで、こんなに大きな忍耐力を身につけているという、この修行の凄さ。
3日目の夜、それまで初日からずーっと食作法の責任者をして下さっていた雲水さんが「明日の朝は自分たちが下山前の準備で他所で小食をとるため、皆さんと一緒に食べることができません。皆さんはこの3日間でだいぶ沢山のことを覚えられ身につけられたと思います。自分はそれを見届けることが残念ながらできませんが、どうか明日は皆さん自力で出来るだけ美しい作法で食事をとってください」と感慨深げに仰ったときは、かなりグッときたね。
(彼らの下山については後ほど触れます)

この秋に上山したばかりだという方も含めて、彼らの働きは本当にどこまでも素晴らしく、全てを身を以て教えてくださった気がする。
面倒な食作法は、マゴマゴしていても決して(一度も)怒ったり苛立ったり声を荒げたりせず、ひとつひとつ何度も何度も同じことを教えてくださる。手取り足取り。
お一人だけ外国の方が参加されていたのだが、その方にずっと寄り添ってすべてを通訳していた外国人の雲水さん(スイス系アメリカ人の方だったかな)も、意外と日本語がそれほど流暢ではいらっしゃらなかったが、それでも細やかに通訳をこなされていた。フランスやドイツ、そしてアメリカでも「禅」に憧れるひとは今だにあとをたたない。
「ZEN」はもう日本語じゃあないもんね。
ドイツに住んでたころ、まぁよく禅についてドイツ人から質問ぜめにあったけど、次に彼らに何かを質問されたら、前よりはちょっとだけお話できそうな気がした。

そしてもうひとつ、とてもとても忘れられない奇跡的な出来事が。
上で書いたように、その雲水さんたちのリーダー格の方お二人がなんとこの日、私達の参禅が終わる30分後に「下山(あさん)」されることになっていたこと。
1年半の修行を終えて・・・しかもこの日はお二人だけ。
普通にお参りにきても、そのシーンは滅多にお目にかかれないというレアな儀式。
解散となってから私達はそのお別れセレモニーが行われる山門へ急いだ。
そこにはもう、草鞋が二足、雨上がりの日だまりのなかに用意されていた。
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時間少し前になると、40人くらいだろうか、同期、先輩、後輩の雲水さんたちがたくさん集まって来た。
まだ少ない観光客も珍しがって足を留める。
はたしてほどなく二人が、応量器を入れた袈裟行李に記念の色紙などを入れた後附を振り分けにかけて背負い、現われる。
入門したときの恰好で、人生に二度しか通れないというこの山門を、今度は娑婆に帰ってゆく。
後輩たちに脚絆をはかせてもらってから草鞋の紐をしめる。網代笠をかぶる。
春の上山組の二人はここにやってきたとき、テレビ番組で有名な「豪雪のなか山門前に2時間立って、ようやく迎えの人が出て来た」というまさにそのパターンだったそうで、私が長いこと思い描いて来たシーンや逸話をこうして目の前で現実として見聞きするのが、今回の修行体験の一番大きな収穫のひとつだったかもしれない。

お二人自身はとても嬉しそうに満面の笑みだったが、見ている私達はなんかもう感激してしまってウルウル。
二人揃ってくるりと後ろを向き、ご本尊そしてお寺全体にむかって「お世話になりましたっっ!!」と叫んで低頭。
雲水さんたちで集合写真を撮られたり、みんなにもみくちゃにされながら記念の品などを受け取っている。
いよいよ出立。
除夜の鐘で有名な鐘楼の脇の階段を、それは晴れ晴れしい笑顔で二人仲良く下ってゆく。
見送る同期の方たちは本当に寂しそう。
そうだろうなあ、半端な大学の同級生なんかより、きっとずっと絆が深いはずだ。
下まで下った二人はちょっと振り返って小さく手を振ってから、門から姿を消した。
もし仮に彼らが、戻ってからちっともお坊さん「らしくない」身なりや見た目、生活をすることになったとしても、彼らのなかに蓄積されたものは、きっとずっとずっとその根本にあり続けるような気がする。またそう祈りたい。
いいお坊さんになってほしいなあと心から思った。偉いお坊さんになっても、いつまでも凛として歩き、そしてきちんとスリッパを揃えることを忘れないような・・・。
素晴らしい場面に立ち会えて幸せだったな。
たった4日前に知り合った他人なのに、もう泣けちゃって仕方なかった・・・

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そこから私は友達とわかれ、一般のお参りコースを最初から巡ることに。
そう、同じ釜の飯を食べ、同じ足の痛みを耐え抜いて来た仲間たち。
彼らに出会えたのも貴重なことだった。
2日目くらいまでは周りも見えないくらいの必死な状況だったので、お互い話しかけたりすることも殆ど無かったけれど、さすがにだんだん近しくなってきて、いろいろ助けていただいたり、みんなで励まし合ったり・・・東京の方は東京で会おうね!と約束して別れる。

受付で荷物を預かってもらい、こんどは完全な「ザ・観光客」になって0地点からスタート。
説明役のお坊さんが最初の部屋で大きな案内図と共に解説してくださってから、それぞれ自由に見学を始める。

階段をあがってまずは「傘松閣」
156畳敷の「絵天井の大広間」は見事。
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次に廊下を渡って再び山門へ。
さっきの興奮がウソのような、観光客で賑わう廊下。
薄あかりのなかの大好きなこの景色ももう見られないんだな・・・
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美しい緑を味わいながら、庭の先のほうに浴司を眺めつつ、庫院のほうへ。
韋駄天に合掌低頭。
(私服に着替えてるのに、叉手で歩き、合掌低頭が抜けない・・・笑)
ここでやっと有名な「大すりこぎ棒」を見たり。参禅中何度も通ったのに、これには全く意識がなかったな(笑)
ちょうど雲水さんたちの中食の前で、庫院前の廊下の天井から下がった青銅の雲版を係の方が叩くところだったので、音が鳴るのを少し待って聞いたり。
いつものようにそこから法堂までのぼる。
作務の最中で中には入れなかったけれど、もう一度、あの荘厳な朝課を思い出しつつ覗きこみ、菩薩様にご挨拶。
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そして参禅中は訪れることがなかった、一段下の仏殿へ。
床は石のため、足を壊すお坊さんが多かったことから、礼拝用の畳ができたとか。
大きな数珠。
中も外も美しい。
斜面になっているので、下るときの景色の素晴らしさに初めて気がつく。
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さて、仏殿からさらに下ろうと中雀門のあたりをフラフラしていたら、大きな太鼓の音が!
あ、中食の時間なんだ。きっと今から「ホンモノ」の五観の偈が聴ける!
僧堂前の廊下は誰もいず、小さな水路が音をたてているだけ。
入り口の前には修行を邪魔されないためだろう、1人の雲水さんが静かに背中を向けて立ち、見張り役として待機している。
果たして中からはお唱えがきこえてきた。ほ〜ほ〜、ああいうカンジなのかあ。
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廊下を歩いていたら「白山水」という場所を見つけた。
神仏習合として白山信仰と所縁の深い永平寺らしい。中には清らかな水。
帰ってきてから知ったのだが、雲水さんたちの毎朝の洗面はこの白山水を使うそうだ。
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最後に最も大事な場所である「承陽殿」へ。
道元禅師のお墓である、七堂伽藍の中でも最も大切な場所。
奥まったところにひっそりと、でも堂々と立っている。
鐘楼もいい。
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ここに合掌低頭しようとして遠くをみると、たくさんの履物を綺麗に揃える雲水さんの姿。
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帰り道、お庭を覗きながら写真撮影。
祠堂殿・舎利殿ではお焼香できるようになっていた。
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そして瑠璃聖宝閣(宝物殿)で、布教部部長さんが「必ず見て帰って下さい」と仰ってた道元自筆(コピー)である普勧坐禅儀の一部を展示してあるのを観る。
いい字だったなあ・・・

東司の烏芻沙摩明王と、遠くにみる浴司。
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4日間缶詰になってた吉祥閣。
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さあ、この山を下りるときが来た。
名残惜しいけれど、ここで起こったこと、見たこと聴いたことやったこと・・すべては下りなければわからない。
もいちど緑を深呼吸しながらトランクをガラガラひいて門に向かう。

4日前、ここに着いてこの門を見上げた時は知らなかった文字の意味。
「杓底一残水 汲流千億人」
(「谷川で口を濯いだあと、水の残りを一口川に流した」という道元の逸話。73世熊澤禅師の句より)
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さようなら、永平寺。
きっとまたくるよ。
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(つづく)











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by saskia1217 | 2016-10-12 05:09 | 感じろ、考えろ、思え! | Comments(0)
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