時が過ぎて

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先日、チェンバリスト山縣万里さんのコンサートを聴きに伺った。
彼女は私がお教えしたなかで最も初期の生徒さんのお一人で、おそらくチェンバロを専攻された最初の方だったと思う。
たぶん初めてお会いしてから17年くらい経っている。

昨年から彼女が始めた、毎回テーマを持った年一回のコンサートシリーズ。
今年は雑司ヶ谷の小さな、そしてとても素敵なギャラリーが会場。
空気の冷たい土曜の午後、大好きな雑司ヶ谷の町を歩くのも気持ちがいい。
初めて足を踏み入れた「ギャラリー鶉」は、池のある中庭を囲む何軒かの住宅群のなかの一角にある。
ちょうどハロウィーンとぶつかった日の喧噪からも遠ざかることができ、別世界のような静謐な空間。
2方がガラス張りの室内からは樹々のある庭が見え、入り口や会場内にしつらえてある生花も美しい。
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プログラムは「オスティナート」をテーマとした6曲。
今回は特に、私の大好きなL.クープランのハ長調の組曲、ケルルのパッサカリア、C.P.E.バッハのフォリアによる変奏曲などが詰まっていて、行く前からワクワクしていた。
そして一番楽しみだったのが、彼女自身の編曲によるJ.S.バッハの有名な「シャコンヌ」。

静かな口調でお客さんをリラックスさせるMCを挟んで、滔々と音楽が流れている。
お昼の回のお客さんは年齢層若干高めのご婦人方が殆ど。
皆さん、頷いたり、笑ったり、ため息をついたりしながら、ゆっくりと楽しんでいらっしゃるご様子がみてとれた。

なんというか、最近めっきりチェンバロの、しかもソロの演奏会を聴くことがなかった。
自分の思い入れの深い曲を聴いて、それらを熱愛していた当時の自分の演奏と、今それらに思う「こうありたい」という姿をイメージに持ちながら、目の前に繰り広げられる誰かの演奏を楽しむということが、今だから出来るような気がした。
昔はたぶん、そうではなかった。
自分の演奏以外、音楽以外、考えられなかった。
たしかに今でもそうなのだけれど。
そしてたぶん誰でも、どんな演奏家でも、自分が一番だと思っているはずなのだけど。
「ああ、これいいなあ」と思える演奏は今でも多くはないのだけど。
もちろん、素晴らしい演奏だったから、っていうのも、ある。

L.クープランのハ長調の組曲の最後にすえられた名曲「パッサカーユ」。
このラストを彼女がどう弾くのか、も楽しみだった。
短調で終わるのか、長調で終わるのか?
大きく終わるのか、小さく終わるのか、ぶっちぎるのか、緩やかにすべるのか?
果たして、それはとても納得できる素晴らしいラストだった。

J.S.バッハのシャコンヌ。
原曲は有名すぎるヴァイオリンソロの、演奏者自らの編曲。
レオンハルトの編曲演奏が思い出されるが、この日聴いたアレンジは、個人的にはレオンハルトのものよりステキだと思った。
そのお披露目に立ち会えて、とても嬉しかったな。
ブラボー、でした。

力が入る過ぎることもなく、美しい緊張感と、音楽と楽器への柔らかい愛情がいっぱいに感じられた、とても素敵なコンサートだった。
リサイタルって、なかなかそういうふうにいかないモノ。
飾らず、奇をてらわず、しかも1本筋が通ってる彼女らしい、気持ちのいい音楽空間でした。

落ち着いた大人っぽいコンサート・・・
したいものです。

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by saskia1217 | 2015-11-02 02:54 | 感じろ、考えろ、思え! | Comments(0)

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