月の輝く夜だから〜エレファントカシマシ・日比谷野音コンサート〜

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夕刻から青空が顔を出し、秋の雲が流れ始めた。
仲秋の名月に、エレカシの野音。
まったく、なんて日だ!
しかも、チケットなんて持ってやしない。

初めてエレカシの野音を聴いたときは一般発売、しかも発売後何週間も経ってから買った。
その後数年は、ファンクラブの抽選予約で聴けた。
あの頃はまだ2daysだったなあ。
豪雨でずぶ濡れもあったし、猛暑で汗だくもあったし。
もう、今は、チケットが手に入らない。

昨年初めて、どうにもこうにも入手不可能となって、とうとう「外聴き」ってのをやった。
ステージに近いところ、なるべく音のいい場所を選んで、冷たい石の上に新聞紙やレジャーシートをひいて、コンクリートの壁に向かって座る。
近くには同志がたくさん居て、コンサートが始まると皆、会場内に居るのとまったく同じリアクション。
バラードでシーンと聴き入り、外ではさすがに聞こえにくいMCを一言でも聞き取ろうと必死に耳を澄ませ、激しい曲では拳を振り上げ、合いの手を叫び、メンバーの名を呼ぶ。
昨年はそうやってかなり集中してコンサートを聴くことが出来、充実感いっぱいで帰った。

今年。
この「外聴き」のためにも、日本全国からファンが集まる。
今日も、聞いた話では軽く1000人以上、もしかしたら2000人は居た?という。
去年と同じ場所に陣取ったら、周りは去年の3倍くらいの人数で殆どビッシリ埋まった。
外聴きは所詮自由だから、ピクニック気分でシャンパンやワイン、タッパーに詰めたお料理などを持ち寄って大きなシートを広げる人たち(笑)、一人で立ち尽くしたまま下を向いてジッと聴き入る人、タバコを吸いながらブラブラ歩いて聴く人・・・いろいろだ。

昨日までの雨でジットリと湿気ているコンクリートの地面を這い出してくる、たくさんの大きな蛞蝓たちに脅かされながら、今日もリハから終演まで、宮本さんの声、エレカシの音を堪能した。
同じ日比谷公園内で韓流のイベントをやっていたらしく、20時頃までそのライブの大音響が混ざってきて辛かったけど(会場内でも聞こえていたそうで・・・お互い野外だからってどうにかならないのか?)
、そこは外聴きの弱味、耐えながら。

15時半ころ着いたら、知らない曲=新曲のリハ中。
今日は蔦谷さんが他のライブ出演のためこちらには参加されないときいていたから、鍵盤をどなたが弾かれてるのかが気になった。
新曲、かっこいい。
「俺たちの明日」「ワインディングロード」などが手際よく音出しされ、その都度宮本さんの指示が飛ぶ。
16時過ぎにはリハが終了し、心地よいSEが流れ出した。

17時半キッカリにメンバーが登場(の拍手が聞こえる)。
「おはようこんにちは」から、ぶっとく始まる。
いい声。
前半は比較的むかしの、エピックや東芝時代の曲も多い。
「誰かのささやき」「暮れゆく夕べの空」なんかは、ちょうど暮れていく時間を見計らってプログラミングしていたのだろうな。
「夢のかけら」は嬉しかった、やっぱり『愛と夢』からもたくさん歌ってほしい。

月が出て来た。
「月の夜」はものすごいピアニッシモで歌う場面が多く、韓流の爆音にずいぶんかき消されてしまったけど、曲の後半は見事にやり返してたな(笑)。
「自宅にて」もレア。
「待つ男」を珍しく早いうちに。「まだ終わりじゃないです」とMC(笑)。
いつもとはまた違ったタイプの並び順で、よかったな。

そしていきなりの「TEKUMAKUMAYAKON」。
音源聴いてかなり好きだったので、ライブでどうなるのか楽しみにしていた。
コーラスや打ち込みの多重録音だから仕方ないけど、バンドバージョンだとどうしてもちょっと音が薄く感じる。あと、演奏もちょっぴりばらつきがあって、たぶんこれからライブを重ねるうちに、ピシッとパリッとなってくるんだろうな。
やっぱり人気があるらしい、この曲・・・(とMC)。

「星の砂」では外聴き組も両手をキラキラ。
「珍奇男」では「ホームグラウンドに帰ってきました〜!」の声にお客さんの「おーー!」のレスポンス。
15曲やって第一部が終わり、一息置いて「生きている証」で次が始まる。
やっぱり『扉』はいいアルバムだ。特に秋から冬にかけて聴きたい。

いよいよ空に十五夜の月が輝いてきたころ、「月夜の散歩」と「今宵の月のように」。
繊細なハモンドの音が寄り添っている。「月夜の散歩」はキーボード入りヴァージョンが好きだ。
誰が弾いているのかな?
宮本さんの声が震えてきて、泣いているのかな?と。
MCが聞こえないので状況がわからなかったけど、当時これを一緒に録った(亡くなった)佐久間正英さんを思い出してしまった、という話をあとから聞いた。
続く「今宵」の歌い出しもまだ泣いていて、冒頭を2度歌って仕切り直し。
歳をとったから、というわけでもないだろうけれど、同年代としてはそんな感情の行方に、ちょっと心当たりがあったりする。
そんなことも素直に、涙を流す、流せるアーティストには、やっぱりスパッと距離が縮まる。

「化ケモノ青年」「ズレてる方がいい」・・・どれもナマにふさわしい、ナマでこそ生きる曲たち。
定番の赤い照明のなかでの「ガストロンジャー」(コードを引き摺りながらステージ左右いっぱいに走り回る宮本さんの姿が、容易に想像できる・・・)を挟んで、新曲。
カッコイイ。やっぱりいい。
「立っていると周りが自分をどんどん追い越して行く」みたいなことを歌った曲、だって。
歌詞は全部を聞き取れなかったけど、静かになったパートで「今までありがとう」のような言葉が耳に入って、ちょっとドキッとした。空耳かもしれないけど。
これが、11月18日に発売となる22枚目のアルバム「RAINBOW」のタイトル曲。
(つい先日どっかで「今タイトルを考えてます。カッコイイのにしたい」と話してらしたな〜。同時期の全国ツァーはアルバムツァーになるのだろうか・・・にしても、グッズが虹色になりそうな予感・・・笑)
これからあと3曲歌入れして、アルバムには11曲入るそうだから、楽しみにしていよう。

本編を「生命賛歌」でダイナミックに終わり、アンコールコーナーに突入。
久しぶりでナマを聴いた「星の降るような夜に」。
星は少ししか出ていなかったけど、宮本さんがメンバーの肩を抱いて歌っている姿が目に浮かぶ。
ついでにコンドルズのカーテンコールも脳裏に蘇る(笑)。
今日は蔦谷さんが居ないせいか、「笑顔の未来へ」「俺たちの明日」(←リハではやってたけど本番ではナシ)も無いという、昨今珍しいチョイス。これもいい。
ダブルアンコールでようやく、新シングルの目玉「愛すべき今日」を。
コンサートの終盤でこの曲を歌い上げるのは、ものすごい力が必要だろうなーと、聴きながら思う。
声が本当に滑らかで強くなった宮本さんも、最後の力を振り絞っているように熱唱していた。
「ファイティングマン」で盛り上がって、サクッと終了。

全29曲、約3時間弱。
昨年同様、コンパクトにまとまった、そして中身がギュッと詰まった、オトナっぽいコンサートだった気がする。
身の丈に合った、というのはけしてマイナスの意味ではない。
自分の良さが一番無駄無く、ストレートに伝わるバランス。
それが出来るのは、本当に成熟したアーティストだけなんだろうと思う。

素晴らしい歳のとりかた。
「中年の良さを出せ」と、だいぶ前、まだたしか30代の頃の宮本さんが記録映画の中でしきりに言っていた。
そして最近メンバーを叱咤激励する際には「ただそこにオジサンが立ってるだけのライブには、ゼッタイするな」と。

いつの間にか、あっという間に、エレカシは50歳になるのだ。
自分も歳をとるわけで。
そして、そうありたいと思う人たちが、目の前にいるわけで。
身体も心も強く、そして前を向いて、胸をはって、周りもちゃんと見て。
人生、短くはないけど、それほど長くもないんだから。

そう、今日のキーボードを弾いていたのは細海魚さんだったそうだ。
それもあって、「月の夜」でのあの涙だったのか・・・。
言われてみれば、全ての曲に寄り添うようにして、今夜は鍵盤が散りばめられていた。
ステキだった。

コンサートが終わって大量に吐き出されてくるお客さんたちが、みな立ち止まっている。
手に手にスマホを、空に掲げている。
月。
こんなに誰も彼もが、みんなしていそいそと月を撮ってる・・・
ああ、ほんと、エレカシのコンサートだなあ(笑)。

自分も月を見上げ、追いかけられながら駅まで歩いた。
今年も、今夜も、ありがとうエレカシ。
ありがとう、お月さま。
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by saskia1217 | 2015-09-28 06:03 | エレファントカシマシ | Comments(0)