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果汁100%のやさしさ〜コンドルズさいたま公演「ストロベリーフィールズ」〜

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春のひまわり、初夏のいちご。
白や黒、緑・・・さいたまで、コンドルズはいろんな色を演じてきた。
そして、黄色から赤へ。
さいたま芸術劇場って、理由は無いのだけど、なんだかモノトーン、無色のようなイメージがある。
劇場という空っぽさ、色の無さ。
そこに、コンドルズはいっつも、強烈な色をぶち込んできた感じがする。

さいたま公演はこれで9回目だそう。
2006年、その1回目の「勝利への脱出/SHUFFLE」を観た頃、私はちょうどコンドルズに取り憑かれまくっていて(笑)、もう何が何だかわからない感じだったことが懐かしい。

今日の千穐楽。
いつものような開演前SEが無い。
幕があがる少し前からやっと音が聴こえてくる。
ふーん、なんかいつもと違うんだ、と思ってたら、幕があいて、ものすっっっごくとお〜〜くのほう(さい芸のあの「ステージ後ろ半分」)の、しかもかなりの暗闇の中から、靴のすべる音がする。
誰かが踊ってる・・・けど、誰なのか、薄明かりになってもよくわからない。
天には星。アフリカ公演で彼らが体験した、満点の星のオマージュ?
そのうち、さらにもっと奥に、机に向かって座り、雑音をたてる人。
鉛筆削り?
いや、あれはジューサーだ。
ずいぶん長い時間をかけて「その人」は観客のすぐ近くに姿を現し、ピンクの学ランを着てジュース(イチゴだったのか?)を飲み干す。
そこから、奈落からせり上がってくるのはメンバーたち・・・と思わせて、それは学ランを着た案山子たち。
幾重にも続く、フレッシュな場面。
何回かのビックリの後で、ようやく、コミカルで明るく軽快な曲と群舞ダンスにすべり込んで行く。
そこからはもう、いつものコンドルズのご馳走たちがクルクルと進んでゆく。

ひとりのアーティスト、1つの団体が、長い間パフォーマンスしていくなかで、「変わる」ってことは自然でもあり、意図的でもあり、求められるものでもあり、しかもそれに流されないチカラも同時に求められる。
ときにそれはすごく難しいことだと思うけど、コンドルズは何度かそんな天晴れをやってのけてきた。
でも、そのなかでも今日観たこの新作は、本当に本当に、すばらしく宙返りしていた。
もっとスゴイと思ったのは、オープニングのそのビックリの正反対ともいえるような、それこそ数年前には見慣れていた「これぞコンドルズ」という、ガンガンロックの激しくて男性的な全員群舞が、今年ついに完全復活したようにいくつか混ざっていたこと。
これも、ああ16人いる、という感無量。

懐かしさ。
私は映像でしか知らない作品だけれど、勝山さんの学ランにコート姿。
帰国された石渕さんの、ほぼ2年ぶりに見る、ほんの一瞬だけ他の人と違うタイミングで踊るダンス。
オクダさん制作の、とてもうつくしくて色も文字もステキなメンバー紹介の映像、ロシア語や原色を使った、絵本みたいなのも。
もっと小さな、微かな一瞬にも、何かしら懐かしいもの、よくわからないけど多分良く知ってたこと、のようなものが散りばめられていて。
砂糖も、炭酸も、ミルクも、なんにも入れない、いちごのジュース。
青臭い香り、果肉のつぶつぶ、でもちっとも酸っぱくない。
そんな懐かしさ。

どこかしら「ひまわり」の続編のようなコントは、作者の小林さん不在でもいつも通りの空気感とスパイス。
今日の公演で何が一番印象的だったかって、それはたぶん、ぎたろーさんのブタ。
立ち上がってしゃべってるところよりも、四つん這いで這いつくばって、たつろうさんにすり寄るところ。
すごい。
それだけでもう、胸が痛い。
ブタのギタは、きっと、いちごを食べて育ったんだろうと思った。

そして一番鮮烈だったのは、オープニングで学ランを着ていた案山子たちが、後半それをはぎ取られて出現したときに「十字架」と化していた、あの一瞬。
十字架が並んでるって、墓場。
その、オブジェとしてのチカラって、もう強烈。
ラスト近く、近藤さんのソロもその中で踊られるのだけど、いつものように完全に無音なのではなく、途中からかすかに音がしてくる。
銃声・・・戦場の音、みたいに、私には聴こえた。
だから、ものすごく痛かった。
ソロが終わるころ、その十字架たちはひとつひとつ光ったまま、天高くつり上げられ・・・
星になるんだな、と思った瞬間、ステージ後方の「本当の夜空」にオープニングと同じ満点の星。

わたしはコンドルズの公演を、何回観たのだろうか・・
どんなに怒ってても、捻くれてても、ささくれてても、哀しくても、この世のどこにも自分の味方なんていやしないんだと思っても、もう誰にも笑いかけたりなんてするもんか、と思ったって。
コンドルズの舞台を、作品を観ると、引き戻されちゃうんだ。
ああ、ちゃんとまっすぐやっていこう。
くだらないこと考えてないで、この人たちなら信じられるじゃん、信じられる人はいっぱいいるじゃん、いい人もいっぱいいるじゃん・・・て思えてくる。

昔、初めてコンドルズを見たころ、勝山さんが当時おっしゃってたように「もう明日会社辞めてもいいや、って思わせるような舞台にしたい」、たしかにそんなエネルギーをもらっていた。
でも、今は違う。
違うって、今日思った。
慰めてもらってる。
コンドルズは、やさしい、やさしいんだよ。

それはきっと、作っている人、それをカタチにして見せてくれている人のなかに、血が流れてるってことなんだろうな。
いちごみたいな、真っ赤なね。

危険も、血も、赤いってことを、観ながら何度も目にした。
いちごの赤も、やさしいだけじゃない。
でもやっぱり、いちごは甘いんだよ。
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by saskia1217 | 2015-05-31 22:52 | コンドルズ | Comments(0)

今日もまた日が昇る・・出かけてゆこう!


by saskia1217