夢見る君〜「彩の国さいたま芸術劇場・光の庭プロムナードコンサート/貴方も私も風まかせ」〜

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11月3日、夜6時すぎ。
斜めに空を支える何枚ものガラスに映った、青と白のライト。
360度、まわりじゅうに反射して饒舌になった白い文字たち。
溶けるようにゆっくりと踊る近藤さん。
最前列の小さな子どもたちも、みな息を呑んで見つめている。
ラストの「トロイメライ(夢)」をことのほかゆっくり弾いちゃったのは、この時がどうか終わらないように、なんて私のどこかが囁いていたからだろう、たぶん。

彩の国さいたま芸術劇場開館20周年記念の感謝祭、1日じゅうのオープンシアター。
そのなかで「オルガン・プロムナードコンサート」のスペシャルバージョンを近藤良平さんと、というお話は本当に嬉しかった。
昨年「夏休みスペシャル」として近藤さんと出演した時よりもっと楽しく、もっと面白く、もっといいものを作りたいと思った。
そして、もうずうっと前から何とか一緒にステージが出来ないだろうかと夢見ていた安田有吾さんに、ワクワクしながら共演をお願いし、快諾していただいた。

私の仕事場になる劇場、ホールはたくさんある。
東京の多くのホールはもちろん、地方のいくつものホール、劇場にお邪魔してきた。
私にとってこの与野本町の「彩の国さいたま芸術劇場」はそんななかで特に大好きな、ちょっと特別な劇場なのだ。

夢が叶う場所。
考えてみたら、私の夢はいくつも、この劇場で叶えられてきた。
バッハ・コレギウム・ジャパン公演、バッハ「音楽の捧げもの」で師匠鈴木雅明先生と2台チェンバロ弾いたのも、ここの音楽ホール。
定期的に出演の機会があったオルガンプロムナードコンサートで、コンドルズの石渕聡さんのマンドリンとの共演が叶ったのも、この場所。その後のライブシリーズはここから始まった。
そして昨年夏に、近藤さんとコラボレーションという、文字通り夢だったことが現実になったところ。
そしてもちろん観客としても、私は何度もここに足を運んで素敵な夢をみてきた。

劇場、ホールそのものの質、そして建物全体の素晴らしさ。
くわえて、毎回関わってくださるスタッフの潤沢なことと、そのレベルの高さ(忍耐力の凄さ、プロ意識の高さ・・)。
さいたま、本当に脱帽です。こんな劇場、なかなか無い。
東京にもこんなホールがあればいいのにね。

「貴方も私も風まかせ」のタイトルどおり(?)、多忙なメンバーが同時に集まって長時間のリハができる日はごくごく少なかった。
けれど、あのオルガンで弾いたらいいだろうなーという曲を、まず私が手当たり次第にピックアップ。
ピアノ曲、チェンバロの曲、大きなオルガンで弾く曲、オケやオペラのナンバー、ポップスの名曲、自作オリジナル・・・
欲張りな私はいつもプログラムの2倍くらいの量をかき集めてしまう。それを近藤さんや安田さんに聴いてもらって削り落しながら、近藤さんの中でもテーマやストーリーが出来てゆく。
安田さんは音に加え会場を目でみて、できること、やりたいことをイメージから現実にしてゆく。
それぞれが思い描く60分×2回。
本番に向け、少ない3人の時間のなかでだんだんすり寄せ、整頓して、1回ごとのストーリーをつくる。

でも本番は生モノ。
そしてこの3人の場合、それはたぶん「限りなく原料に近いナマ」(苦笑)。
骨組みと、一緒に現場をつくってくれるスタッフさんたちに必要最小限なこと以外は、あくまでもザックリ。もう、本番開演までわからないことのほうが多い。
そこが「100回、1000回ぶっ叩かれても、何が起きても壊れないくらいガッチリしっかりびくともしないよう作り準備しておいて、本番はそれを忘れてただただ解放させる」という、普段身を置くクラシックの世界とは180度違うところ・・・ということに、もうかなり慣れた自分を楽しむ。
もはや不安や心配なんか全く無くて、ただもうワクワクと楽しくて、早くやりたくて仕方がなくて、何が起きてもへっちゃらで。
でもそれは、共演のお二人のチカラと優しさに、すべてを絶対的に委ねる事ができたからだ。
傍目にはおそらく無鉄砲に見えることをやるにもかかわらず(笑)。
ずいぶんいろんな人といろんな仕事をしてきたけど、やっぱりこんなことって滅多にない。

そんな感じだったから、特に昼本番では「三つ巴コーナー(得意分野シャッフル)」で3人でひとつの文字を書き上げるのに、へんてこりんな字が出来ちゃったり(笑)、ハプニングはあったけど、それもまた自分で楽しめちゃったり。
「子どもコーナー」では、思ったよりたくさんの子どもたちが飛び出して来て、ほんとに楽しそうに身体を動かしてくれたのが嬉しかったなあ。子どもの心と身体って、本当に素晴らしい!
それを誘導する近藤さんと安田さんまで、まるで子どものように楽しそうで、正面から見ていてふくふくしてしまいました(笑)。

普段のプロムナードコンサートでは大体100人強、多くても200人くらいの観客数が、なんとこの日は昼に1000人も集まってしまい・・・
安田さんがトップバッターでステージに出て字を書いている間、私はタイミングを見ながら柱の影でスタンバっていたのだが、完全に円になってしまった会場を見て、本当に嬉しくてため息が出た。
よーし、ここにいる皆ひとり残らず、笑顔にしよう、一緒に楽しもう!って。
そう、会場で待ってくれているお客さんが、私にはどんな栄養ドリンクよりチカラになる。

夜公演は、特に照明スタッフさんが用意してくれたアカリが楽しみで仕方がなかった。
私自身、あそこで夜弾くのは初めてだったし、夜らしくしたくて、自分の弾き語り曲「夜曲」を今回このためにオルガン伴奏バージョンにアレンジ。
もともとチェンバロ弾き語りに書いたものだったけど、じつはオルガンのほうが当初のイメージに近いものが出来たから、ラッキーだった。
惜しむらくは、やっぱりもうちょっと歌が上手くなりたい・・・むー。

ひとつ残念だったのは、安田さんが書いた文字を私はほとんど見られなかったこと、かな。
特に夜は、奇跡のように晴れた紺色の空と、青と白の照明のなか、透き通ったガラスに刻々と書かれてゆく白い字はほんとうに綺麗だっただろうなあ。
終演後スタッフさんたちの努力(!)ですっかり消された文字たち。
「音」そして「動き」と同じく、「形」も、この夜だけは儚いものとして。
そう、ラストのスヴェーリンク「我が青春は終わりぬ」で、月夜の空から舞い降りた幾百枚の「響」の文字のように。

この日思い出していたのは、今年のお正月、安田師匠の「書楽家時間」で書いた書き初め。
この1年でやるだろうこと、やろうと思ったことを、漠然となーんとなく書いた。
本当にやるかどうか、なんて考えなかったけど。
はからずも、叶えられたのかな。
初詣で絵馬に書いたお願いごとも、ね。

いつも、柔らかいアイデアと力強い動きで、共演者やお客さんを残らず笑顔にしてしまう近藤良平さん。
けして強引に前に出ないけど本当は熱くて強い想いをもち、その手から生み出される優しくあたたかい線と形は、他の誰にも真似できない安田有吾さん。
準備段階から細かいお心遣いでありったけの力を貸してくださった、さい芸のスタッフの皆様。
みなさんに、両手に抱えきれないくらいの「ありがとう」を贈ります!

やりたいことが、まだまだたくさんある。
この日また、新しく生まれた夢がある。
夢は途切れない。

劇場は、夢をみる場所、夢が叶う場所、夢を叶える場所。
私や、私たちだけじゃなく、誰にとっても。
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by saskia1217 | 2014-11-07 18:40 | 感じろ、考えろ、思え! | Comments(0)


今日もまた日が昇る・・出かけてゆこう!


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