旅のおもひで/その6・美しきチューリッヒ
2014年 03月 30日
えっと、どこまでいったっけ?
お天気いい、とある朝。
夜本番を気にしつつも、チューリッヒの街がみたくて、空港近くのホテルからSバーンに乗って10分ほど。チューリッヒ中央駅に降りたつ。
殆ど何も予習をしていなかったが、地図を片手に歩き出す。
ヨーロッパの街の多くは鉄道の駅が旧市街からちょっと離れたところにある。初めて訪ねる街で、駅から中心街を目指して歩くときのドキドキとワクワクは、ちょっと言葉に出来ないくらいの高揚感がある。
その街が美しければ美しいだけ、少しずつ目に飛び込んで来る景色が胸の鼓動を重ねていってくれる。
なんだろう、やっぱり身を置き慣れたドイツ語と、その言葉に培われた様々な風景に包まれた空気。
建物、街のつくり、人々の動き、聴こえてくる音、見えてくる色と文字・・・。
そこに身を委ねて探って行くことのできる愉しさ。
ほんとうに、なんて気持ちがいいのだろう!
ここまでの旅で、太陽を浴びたことが殆どなかったから、この日の光はほんとうに嬉しかった。川っぷちに沿って街の真ん中へ向かいながら、ときどき両手を広げて陽を受け止めた。
やがてそのリマト川がチューリッヒ湖に注ぐあたりまで歩いてきて、まずは目指す教会へと向かう。
市庁舎の横の大きな橋を渡り、その先、そして小高い丘の上にいくつかの尖塔が見えるほうへ。
フラウミュンスター。ここにはシャガールのステンドグラスがある。
その窓がある会堂後方の一角は特に解説がしつらえてあり、ゆっくりと腰掛けて3面を占めるシャガールの美しい色を楽しめる。しばらくそこにずっと座って、上を向いたまま見とれていた。
写真が撮れないので絵はがきを何枚かと、市内の全ての教会を案内したパンフレットを買って、再び眩しい外へ。
あれこれと目を奪われるものがたくさん。
街で一番という体で聳える尖塔を持った教会をめざし、坂をのぼってゆく。
聖ペーター教会。
ここでも何度か閉まった扉を叩いた後にやっと正面へ(笑)。
静寂の広場にクロウタドリの声が響く。春の色をした花屋の店先。教会を見に来た観光客はいるのだが、皆が静かに歩き静かに語りながら巡っている。
さらに、そのすぐ先にあるアウグスティナ教会へ。周囲の建物に組み込まれているような造りだと、入り口がなかなか見つからなくて苦労する(笑)。なかは現代的な会堂。
そのすぐ前の広場の泉には、いっぱいの薔薇の花。
夢のような色にしばし足が止まる。
網の目のような石畳の細い坂道を当てずっぽうにジグザグ歩いて、再び川辺へ。歴史的な建造物も多い街、辻々のたくさんのプレートで、様々な時代に起源をもつその謂れを知ることができる。
下へ降りると、再び高台に向かっていく道がある。駅から歩いてきたとき対岸から見えた古い城壁みたいなところへ行けそうだ!
のぼりきったところは公園のような広場になっていて、散歩の途中に休んでいる地元の人、しきりにカメラを景色に向ける観光客・・・
さあ、もう一度降りて、対岸のグロスミュンスター(大聖堂)へ行こう!
その途中、川のすぐ脇に教会を発見。ヴァッサー教会(水教会)。水から街を守る、また船乗りや漁師を守る教会。残念ながら閉まっている時間で中は見られなかったが。その横にはツヴィングリの像。
さあ、辿り着いた。
2本の塔が南ドイツやオーストリーなんかでよく見る感じで懐かしい。
中はドッシリとした空気の大聖堂。あのカール大帝の墓が発見されたという伝説の上に建つ。
地下のロマネスク様式のクリプタにはその大帝の像。
見とれていると、隣りで見ていたイタリアからの観光客らしき男性2人「この人誰だか知ってる?」と(笑)。「歴史で習ったよ」と答える。が、正直そんなに詳しくはない(笑)。見終わって帰ろうとしたら、教会巡りのパンフレットに「出口を出て右の鉄の扉を入ると回廊がある」と。
見ると小さな扉が。折しもそこから数人の人たちが出て来たところ。何があるんだろ?
そこはよく修道院にあるような中庭に、薬草みたいなものが植えられている。
廊下の壁には宗教改革に貢献した歴史上の人物たちの「ミニ博物館」。
石づくりの柱には、中世の顔、顔、顔。アメリカからの観光客がゲラゲラ爆笑しながらひとつひとつ見て回っていた。
さあ、ホテルへ帰って劇場へ行かなければ。
あと1時間くらい残っている。よし、あの名美術館を見ておこう!
名残惜しい街並をまっしぐらに急ぎ足、ちょっと離れたチューリッヒ美術館へ。
残念ながら全てをゆっくり観る時間は無いので、ネーデルランドの古い絵あたりを観ておこうと、チケット売り場のお姉さんにピンスポットで観られる場所を訊いてから部屋へむかう。
レンブラントやブリューゲル、ロイスデール。懐かしいフランケン地方(ヴュルツブルクあたり)のリーメンシュナイダーの彫刻なんかもあったり。残った時間を、これまた好きなマグリット、クレー、そして地元スイスのベックリンも堪能。
ピカソやマティス、カンディンスキー、シャガール、ココシュカ、プッサンやロラン、クールベ、マネ、セザンヌ、ドガ、ゴッホ、そしてジャコメッティ・・・
とにかくすごい美術館なんだ!
急ぎ足でも観られてよかった。後ろ髪をひかれながら、駅まではほんとうに走るように歩いて電車に間に合う。
素敵な街。今回の旅でたぶん一番好きだった街。
また訪ねるときはあるのかなあ・・・