うつくしい時間

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雨、緑、お茶。

あ〜あ、雨になっちゃったなあ。
「日日是好日」なんて今日ばっかりは思えないよ、と心の角がちょっとだけ欠けながら6時起床の日曜日。
「新宿区生涯学習フェスティバル〜茶の湯の会」に向かうために。
浴衣を別にすれば七五三以来着てない和服を着て、一度も習ったことのないお茶会に行くという無鉄砲極まりないことになってしまった(してしまった・・)冷たい豪雨の日。
もちろん、ずうっと楽しみにしていたから、ほんのちょっぴり付け焼き刃のお作法を夜な夜な仕込みはしてみたけど、読めば読むほど流派による違いやら本格的な茶事の厳格な決まり事やらで頭がごっちゃに・・・
日が迫ってからそれが「大寄せのお茶会」でかなり気軽なものと伺ったけど、想像のつかない世界のことだけに不安は残る。ピアノを習い始めて数週間の人がいきなりオケとコンチェルト弾くみたいな事態になったらどうしよう、みたいな不安(笑)。
まあ、とにかく行ってみなきゃ始まらないや。

着付けを終えて車で会場へ。
入った事のなかった高田馬場・茶道会館のお庭を楽しみにしていたけど、ものすごい雨でお散歩も叶わず。
ただ、敷地内のいくつかの茶室の隙間を覆う、ありったけの水に洗われた緑が本当に美しかった。
なかにはお稲荷さんもあるのよ〜。

最初に伺ったお席はすでに大勢の方が、冷たい雨を目の前に待合に列を作っている。1時間ほど待っている間、前後の方とお話。意外と皆さん初心者、未経験者が多い事が判明。なかにベテランの方がいらっしゃるとお話に耳を傾けたり・・これも一期一会の成せる技か。
やっと3グループ目にお席に入いる。
躙る必要もなく(!)すんなりと「一番安全」な中ほどの位置に座れてちょっと安心。
この会にご案内くださった、いつも書楽家時間で書を教えていただいている安田有吾先生のおうちのご一門が出されたお席で、この回は先生ご自身がお点前を披露して下さった。

お道具を持って先生が入っていらして、お点前が始まる。閉められた障子の向こうでは、雨と風が音を立てている。外からは大勢のお客様のざわめきも聞こえて来るけれど、気軽とはいえお茶室の中はそれなりの静けさと緊張感がじわっと生まれてくる。
そういう状況の中でも、おのずと皆をそうさせる何かがあるんだね。
皆が皆、お点前を凝視しているというわけでもないのだけど、やっぱりお部屋の中でいろんな視線や気持ちが向かってゆく先というのが見えて来るような。

よくわからないけれど・・・お茶室って時代が進むにつれてどんどん狭く小さくなっていったらしいけれど、天井もちょっと低いのか(というよりも、天井が本来より高く作られた「現代の」和室に慣れてしまっているせいかもしれない)、人の大きさの感覚が見ていて全く違うのにちょっと吃驚。
かといって圧迫感でもない。
自分が正座していて、立って歩いている人を見ると大きく見えるのは当然かもしれないけど(だから掛け軸なんかも座った高さから見るものだよね)、相手と同じ高さでもそう感じる瞬間もあるし、それだけではない気もする。
もちろん人の動作、所作にも依るところが大きいだろうし。
そんなこともたぶん全てが、お点前やお作法の理由にもなっているんだろうなあ。

わからないなりにも、お点前を目の前で拝見していると、ひとつひとつの動きが流れていくなかに安定した一定のリズムが脈打っているようにも見えるし、呼吸とか視線とか身体の点とか、何も考えずに見ている人にも心をおさめるような安心感、安定感みたいなものが伝わって、そこにある時を共に進めていけるような一体感を生み出しているのかもしれないなあ。
お茶を淹れてすすめて飲んでいただくという目に見える「おもてなし」と一緒に、そういう空気のような「誘(いざな)い」みたいなものが含まれているのかもしれない、なんて勝手に思ったりしていた。
境界線はあっても、突き放すのではない関係性。
ん〜、専門的には何かあるのでしょうけど、感じたのは正直そんな感覚。
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嵐の音に包まれてこの小さい空間にキュ〜ッと身を置いていることがかえって不思議な安心感になるのか、美味しくお菓子をいただく頃には気持ちも落ち着いてきて、それから運ばれたお茶もゆっくり味わえてとても満ち足りた気持ちになった。
お点前はずっと見たいし、お菓子は食べたいし、お茶も来るし、でもあんまりキョロキョロできないし(笑)・・・と若干の迷いはあったけど。
お茶をちゃんと学んで少人数の茶事に参加できるようなベテランの方は、音も空気も味も、それから人と人とを行き交う気も、きっともっと凝縮されたものが味わえるんだろうなあ。

一通りのことが済むと場が和んで皆いろいろお話したり、ご挨拶したり。
そう、もちろん先生が仰った通り非常に気軽な会だったからそんなに心配するほどのこともなかったのだけど、やっぱりなんでも「生まれて初めて」は緊張するよね。

水、味、色。

そこからあと2席をとにかく回る。
「煎茶道」というのもとても珍しかったので見てみたく、次はそこへ。
待っている間に真面目に正座していたので、お席に入る頃には少々辛いことに(笑)。
お点前するところには笹みたいな植物が立ててあって短冊?みたいなものに何か書いてある。それが示すことは「ここでお茶によって清められます」みたいな意味だとか。
結界を表す大ぶりの竹や、茶葉をはかる小さい竹のお道具、中国茶を思わせる小さい急須とお茶碗。
面白かったのは、まずお茶を一服いただき、それからお菓子、そのあとで同じ茶葉の二煎目をいただくこと。
この日ここでいただいたのは宇治の玉露を立山のお水で淹れたもの。
甘〜〜い!
ホントに甘い。
それから主菓子をいただいた後に味わったお茶は、少し渋さが出ている。さっきと同じ茶葉とは思えない。甘いお菓子の後だから、ということもあるのかな。
いろいろあるんだなあ。
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そして最後は、裏千家の立礼席へ。
ここは開場した頃とってもたくさんの人が並んでいたのだけど、たぶんそれはみんな正座が苦手だから、ってこともあるな、絶対(笑)。
椅子に座ってお点前、お茶をいただくシステム。
裏千家はお道具なども華やかで、特にそのときは(点てて下さる側が)女性ばかりだったせいか、なんだかキラキラしている印象だった。
お部屋の一角には「ミニ床の間」的な窪みがあって、そこにお軸やお花があったり。
お作法はだいたい座っている時とかわらないけど、まあ、なんというか、気が楽。
で、その分、身体も気持ちもいまひとつ弛みがち・・・たぶんちゃんとした人がちゃんとやればキチンといくものだろうけど。

この会みたいに、席主の先生がその場で歴史やお作法を話しながら進めてくださったり、(どのお席でも成り手がなかなか現れずお点前が始められないことが多そうだったから)無理を言ってお正客を引き受けて下さった方にご指導しながら進めたり、こちらからも色々質問できたり、というのはとても面白かったし、私のような未経験者には本当に興味深かったから、催しの目的は非常に果たしていていい企画だと思う。
ただ、そんな喧噪の中でもちょっとだけ垣間見えた気がした何かを、いつかちゃんと勉強する機会がもしあったとして、ほんの少しでもより多くのことができるようになれたとしたら、少なくともある程度の「静寂」のなかでお茶をいただけるような経験をしてみたいものだと、厚かましくも思ってみたり。

いいなあ。
楽しかったな。
会場を後にする頃には小雨。
うつくしい時間が終わる。

雨、緑、夢。

ありがとうございました。
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by saskia1217 | 2013-10-22 02:26 | 感じろ、考えろ、思え! | Comments(0)