字の海へとびこむ

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「美しい文字と好きな書に会いに」という副題で東京国立博物館開催されている「和様の書」展にいってきた。
「美しい」文字ってどういう文字のこと?
「美しい」文字が「好きな」文字とも限らないよね。
何ヶ月も前から楽しみにしていたから、うきうきして出かけた。
暑かったけど・・・。

書道とか書家とか書の歴史とか漢字の成り立ちとか、そういうことはてんでわからないんだけど、チラシやHPで見た小野道風の字が「すごく好き」だと思ったのと、大神社展で見逃しちゃった平家納経が見たかったのとで、楽しみだったんだ〜。
どれだけの展示品があるのか、目録だけじゃよくわからなかったけど、たっぷり時間とっていったから最初からゆっくり気の済むまで見ながら奥へ進んで行った。
いつもなら閉館する月曜の特別開館だったことと、お盆休みも重なって、館内は比較的空いていてラッキー!
特に小さな小さな書はケースの前に立たないとよく見えないもんね。

はぁ〜、ほんと〜にいろんな字があるなあ。
その一言。
大きく5つのテーマに分かれていて、最初のほうは殆ど漢字のもの。
信長、秀吉、家康の書もあったけど、まあ、うん、そ、そうね・・・特には・・・好きってわけでもなく。それぞれ個性はあって面白かったけど。
歴史上有名な人物だと、伊達政宗とか(伝)紀貫之とか藤原定家とか道長とか、西行とか芭蕉とか一茶とか。
膨大な書の前をじりじりと右から左へ進みながら、殆ど一文字一文字、目で追いかけてゆく。
そのうち、自分の名前の文字が出てくるかなあ?なんて思っていると、果たして意外と多かったのが「廣」の字。真ん中に横棒がないものが殆どだったけど。
いろ〜んな「廣」の字を発見しながら、自分の名前4文字のうち比較的早い時点で3文字を目撃。そして意外と(笑)なかったのが「美」。これ、じつは私の目では発見できなかった・・・。
は〜、广(マダレ)って、やっぱり横棒が短いほうがカッコいいな〜、とか。
「麻」の林の左の木の縦棒って、やっぱりちょびっと撥ねるといいのか〜、とか。

お皿、蒔絵、着物に縫い込む、銅鏡・・・あらゆるところに文字を使う発想。
草木、花、鳥、魚なんかの字が多いのも、表したいものがそういう季節や情緒であることが多いのかなあ。
しっかし、「月」は多かったぞ。
さすが、さすが日本人!

「三跡」と呼ばれる書の名手(小野道風、藤原佐里、藤原行成)のコーナーが、私にはやっぱり一番魅力的だった。
なかでもやっぱり道風の字に惹かれた。ケースに近寄るだけでなんだか「おおおおお〜!」って空気が寄せてくる。
字のもつ力ってすごいなあ。
「円珍贈法印大和尚位並智証大師諡号勅書」っていうのが素晴らしかった。道風がひとりで楷書、行書、草書を続けて書いているものなんだけど、彼の楷書というのはこれが残存する唯一のものだそう。その楷書の部分が本当に素敵だったんだ。行書も好きだったんだけどね。
藤原行成はその道風を夢にみるほど尊敬していた、っていう話もちょっとうるっとくる(!)逸話だったけど、心無しかやっぱりちょっと道風のニュアンスと共通するところがあるような気がした。
どこがどう、ってことはわからないけど。

「手鑑」と呼ばれる、いろんな人の書を集めて帖にまとめてある長〜い巻物は本当に飽きずに眺められて面白かった。
が、さすがにあまりにじっくり見てると、足よりも目がヨレヨレになってくる。
グッタリしそうになったところに、やっと平家納経があらわれた。展示換えがあるのだけど、ちょうどこの時のは「見宝塔品第十一」という、一文字一文字を銀色の丸い下地の上に書いてあるもの。これまた豪華で綺麗だったけど、書かれている文字は(ま、お経なので)一糸乱れない楷書(なのかな)だから、字そのものから受ける「力」「個性」はある意味「強烈」ではない。
「そうじゃなく書いてある」からもちろんなのだけど、鑑賞するにはちょっぴり味気ない。
己を消し、心を静めて書くお経。
文字にはその用途や目的も大きく関わってくるんだね。

ちょっと興味深かったのは「消息経」という、追善供養のために亡くなった人の手紙などを集め、その上にお経を書いたもの。平安時代以降の習慣だという。知らなかったなあ。
墨の色で書かれた手紙の上に、金色の字でお経が重ねて書いてある。そして美しい装丁。
こういう追悼の仕方、そのお経の文字のゆかしさに、いろんな心が重なっているのが見えるようだ。
うす〜い線で描かれた絵の上に字が書かれているお経もあった。

「高野切」のコーナー以降は、仮名文字が殆どになる。
10〜11世紀に仮名文字が出来てから、その使用とともに、この独特の美しさが花開いたことがよくわかる。
古今和歌集、漢字部分のあとに仮名が書かれている。う〜ん、風流。
しか〜し!!
見ていて「うつくしい!」のはわかるけど、私のような素人には「読めない」部分も多い。いや、読まなくてもいいんだけど、何が書いてあるのか「わからない」っていうのは結構つまらない(苦笑)。
しかもまたまた膨大な量の仮名文字の海。色とりどりの美しい紙に書かれた、なが〜〜〜〜い巻物の前を、右から左に、このあたりからちょっとだけスピードを速めて移動する。
「きれいきれいきれい!」っていう感じで(笑)。
自分で筆文字を練習するとき、今まだ殆ど漢字しか書いた事がないせいか、仮名文字そのものに対する興味がじつはそんなにない・・せいもあったのかな。
勿体ない見方・・。
ゴメンナサイ。

あと、ひとつの作品のなかに楷書と行書が混じって使われているものも面白かった。
楷書と行書の差ってなんとなくしかわからないけど、よ〜く見ていくと数文字ごとに明らかに違う字体がくるのがわかる。けど、何故、どういう基準で混ぜたんだろ。だって意識的にやってるわけだし・・・。

それから、右肩上がりの字、っていうのは古今東西比較的よく見るけど、とある手鑑のなかに「超左肩上がりの字」を見つけて吃驚したり!
現代じゃ「右肩上がりの字を書く人は大抵上昇志向の強い人」とか言われてるけど、左肩上がりの人はなんなんだろ(笑)。

う〜ん。
なんかしばらく頭の中が漢字でいっぱいになっちゃった(笑)。
素人が見ても十分面白かったけど、きっともっと色々知ってたらもっと楽しめるのかもしれないな。
途中でぼ〜っとしたり、メモしたり、ゆったり見てたらけっこう時間が経っちゃった。
後半けっこうサッサと観て、会場をあとに。
9月8日の終了までまだ展示換えもあるし、あともう1回くらい観にいけたらいいな〜。
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Commented by 馬酔木 at 2013-08-15 23:20 x
一日違いで私も見てきました。はあ~、字を造形美として見る、そんな見方もあるのですね。自分の名前の文字を探すとは考えつきませんでした。私は知識も中途半端で専門家とはとても言えないのですが、書の歴史も丁寧に辿ることができ、今回の展示は質量ともに圧巻でした。本館の特集展示や常設展にも関連の展示があり、なんと半日も過ごしてしまいましたよ。(あんみつも食べた。)
Commented by saskia1217 at 2013-08-17 17:09
馬酔木さま
コメントありがとうございます。一日違いでいらっしゃいましたか。
うわあ、「造形美として見る」なんて意識は全く無かったのですが・・・言われてみて初めて、そうなのかも〜、と思いました(笑)。
自分の名前の字っていうのは、今のところお稽古で自分の名前ばっかり書いているせいです、たぶん!
国文学がご専門だと、ここに名前の出て来る大家や文人などはお馴染みできっとすぐその時代がイメージできるのではと羨ましいです。
本当に半日でも足りないくらいの量でしたね〜。後半電池切れしてしまったので、もう1回行きたいと思っています。
(ということで帰る頃にはすっかりボロボロだったので、本館や常設展まで頭が回りませんでした・・・とほほ。
あんみつまで堪能されたとはさすが!
次回はそのへんまで行ってみたいです!)
by saskia1217 | 2013-08-14 02:37 | 感じろ、考えろ、思え! | Comments(2)