「音のいない世界で」を観た

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先週の土曜日、東京千秋楽前日の舞台「音のいない世界で」を観てきた。
オペラシティはお馴染みの仕事場だが、新国は滅多に行く事がない。
隣り合わせなのにそこはかとなく違うあの雰囲気。
あの不思議感あふれる池のせいか?
その池のところは美しく光が差し込んで、小劇場入り口の改修中のあれこれまでもがファンタスティックに思えたひととき。

長塚圭史さんが書いて演出し、彼と共に出演するのが首藤康之さん、近藤良平さん、松たか子さんという、どの一人をとっても「みてみたい」と思わせる演劇。
一番の興味はやっぱり、この人たちを長塚さんがどう動かすのだろう、どう配置するのだろう、ということ。
(書き下ろしだと思うので当然アテ書きなんだろうなあ)

「大人のための童話」とか「子供にも楽しんでもらえるファンタジー」とかいう触れ込みが聞こえてきたが、そのへんはなんだか信用できないいつもの天の邪鬼をぶらさげて、何の予習も情報も得ずに出かける。
だって「そういうテイスト」って多いのだもの。
小林賢太郎さんの「うるう」だって、美しかったのだけど、どこか半分へそ曲がりが拭えずに観てしまった感があったしなあ。

開演ベルや注意アナウンスはあるものの、じつにツルッと劇が始まった。小劇場特有のザワザワ感と、暗闇の中にぼおっと浮き立つ白いセットが開演前から既に一体化していて、そこに全くアウフタクト感なしに、本当に絵本でみるようなモノトーンの不思議な服を着た長塚さんと良平さんが登場。
お二人がザクザクと出て来たとき、まさか下が砂利(?)とは思わなかった。(砂利=「音」のでるもの、場所ということ?)
前から4列目でよく見えなかったので、そのバリバリした音はステージにビニールでも貼ってあったのかと、お芝居がだいぶ進むまで思っていた・・。

「なくした(なくなった)ものを探しに旅に出る」のもよく聞く、よく見る話。タイトルがベタにそのものだったから、そういうおとぎ話なのかなと想像はつく。
そうか、でもそういうシンプルさがいいのかな、なんて思いながら見続ける。
時々、特に最初のほう、セリフがあるところでも、静寂の部分でも、ちょっとこらえきれない長い間が感じられて、こちらの集中がとぎれてしまいそうになった。けど、そんな部分もぐわ〜んとほっておけばよかったのかな(苦笑)。一生懸命(ある意味)観すぎていたのか?
ポータブル蓄音機=「音」をなくして、「音符」の形をしたものや「ト音記号」がどんどん出てくるという筋。途中、「指揮棒」や「巨大な笛らしきもの」など「音」「音楽」を連想させるものがつぎつぎ出てくる。

左脳人間(だと思われる自分)は「どろぼう2人は何故あの蓄音機を盗んだのか」とか(途中母親のことを話していたのだが、それが理由?)、そもそもなぜどろぼうをやってるんだとか(笑・・でも悪魔とか言ってた気もするし)、「あの貧しい夫婦がさまよってたのは四季がめぐってくるまでだったのか、それともたったの一晩だけだったのか」とか、「というより、あのふたりはどっちが先に、そして何故家を後にしたのか」とか余計なことが気になってしまう。
前後関係とか、因果関係とか、ちょっとでももやっとしたり欠けていたりすると気になってしまって。
でもたぶんこういう作品では、そんなことどうでもいいのだと思う。

「振り付け」はダンスというよりも「身のこなし」「動き」。
流れるような動きが美しい。
開幕してすぐに、松さんの手の動きなどに目が吸い寄せられる。
首藤さんや良平さんの動きの曲線はおのずから納得だけれど、それにしてもこのメンバーはやっぱり面白い。
歌、ダンス(うごき)、演技(セリフ)。
セリフを言い、歌うダンサー良平さん。(だいぶ滑舌よかったですね!)
演技がうまい首藤さん!ほんとにここでは「俳優さん」だね。歌も上手かった。
そうやって観ると、圭史さんの演技がある意味いちばん「薄い」感じを受けた。その分、コミカルさ、軽妙さが光る。自然、ともいうべきか。もしかしたら一番「客観」でいられたのか。
松さんはもともとの声がいいから、その歌と同じで滑舌が美しくどの言葉も素敵に響く。顔の表情はどうしてもどの場面も可愛さが残る(「可愛さ」を軸にそれを失うことなくその周り、という範囲で変化)けど、声(セリフ)を聴いているともっと、視覚的な印象よりも本当の表情がよく伝わる。声色は変わらないけど、どっちかというとセリフのスピード(テンポ)、間、そしてトーン。
そしてもちろん、その身のこなしも軽い。

踊らずに演技するダンサー2人、いつもより少しだけ「動き」をクローズアップさせた歌手でもある女優、脚本・演出家のイメージが強く踊らず歌わない俳優。
その各々のなかのそれぞれの要素のパーセンテージが、作者(長塚さん)によって多少の無理感(というより我慢感)でコントロールされながらも、それぞれの中のそのパーセンテージが作品の時間経過の中でくるくる変わりながら、お芝居が進んでゆく。
そのグラデーションが味わえたのが面白かった。
刻々とその「割合」が各自のなかで、そして4人のなかでゆらゆらと変化しつつ、4人、時に3人、2人の総合、そこにプラス舞台のセット、音などのトータルでバランスが保たれていたと思う。

印象に残ったこと。

「弦の国」対「管の国」の戦争、兵隊シーン。
お互いの楽器(武器)についてのののしり合いがツボを得てて面白い。
「弦」で弓をうてるのか、とか。
(げんのくに、とかんのくに←なんか昔の中国かなんかですか?・・がウケました)
衣装がおもちゃの兵隊みたいで可愛い。

そうそう、ロビーにあった青田さん(=ヨガ師匠)の絵もファンタスティックでよかったですね。
けして大きくはないけれど、大作。
モノクロなところがいいのだと思うけど、思わず色を塗りたくなった。
この舞台作品とおなじベース(波長?)で、でもそれだけでない別の世界も含んでいるような。

それまでの可憐な「セイ」役とはガラッと変わって登場する松さんの酔っぱらい羊飼いと、「メ」と短く鳴く(笑)良平さんの羊。
小道具のくるくるした早い使い方が印象的。
良平さんは、おばあさん役もよかったなあ。

スカートめくりの良平さんのシーンは、セリフの量が多く早口。
「アジタート情熱」とか「音楽用語+単語」が連発。
「リゾルート断言」が、この日最高のツボだった!
これ、今後使っていこうと思う(笑)。
(じつはこのあたり「噛んじゃう」こともあったそうなのだが、この日はバッチリ全て聞こえてていちいち可笑しくて声だして笑ってしまった)

夜のシーンで突然膨らんできたおっきなフクロウにはビックリ。
あれは夢に出る・・・。
声も怖かったし。
フクロウと月。
このあたりはたしかに、子どもの頃絵本から受けた匂い満載。
半分怖くて半分眠くて、そして惹き込まれるトロトロ感。

しかしまさか最後が歌で終わるとは。
歌手である松さんの歌が素敵なのはもちろんだが、共に歌う首藤さんの歌もいい。いつのまにか長塚さんと良平さんも歌ってたし。
4人の斉唱によるその「うまさ」がちょうどいいシンプルさ、平凡さでもあって。
そして、歌が2コーラス終わったあとにくる静寂、そして鳥の声。
歌で終わらずに、その後の蘇った鳥の声という、人の声のない静けさで終わるのは憎いね。
その「全員の歌からフェイドアウトして4人が捌けるラスト」が、モーツァルトのアンサンブルフィナーレの幕切れ、なかでも「ドン・ジョヴァンニ」のラスト(それぞれがそれぞれの方向へ帰ってゆく)を思い出させた。実際にはアンサンブルフィナーレのような派手さはないけど。

そう、そして首藤さんと良平さんが「全く踊らない」とは。
「誰が何専門だから」ということでない3人(長塚さん以外・・・彼はやっぱりどうしても「演劇の人」そのものだ。が、この場合「作った元々の人、演出した人、そして演じた人」という要の人という不動感が伝わった)が、皆流動性のある人ばかりだったからこそ出来た作品なのだろうな。
境界線のない「なにか」がステージで出来る3人。
いいよねえ、本当にあこがれる。

「子供のためにも」という作品だったみたいだけど、子供にはまた全く別のものに映っただろうなと思う。
大人は「失われた音をさがしにゆく夫婦の物語」のなかに「本当に大切なものは何?」とか「絵本みたいに美しい」とか「ほんわりできるファンタジー」とかを見つけるけど。
いや、見つけようとする、そうであるのだろうなと推察する、そういうものに違いない、そうであるはずだ、そういうものであるべきじゃない?・・・って。
そういう、無意識のうちに発生する作為的な思考回路(それもステレオタイプな)が自分のなかに意識されるとき、あああ、大人って嫌だな、と思ってウンザリしたりするよね。

なんだかんだ書いたけれど、その「やさしいお話」は十分に楽しくて肩の力が抜けて、そして何よりも年が明けてからちょっと重かった気持ちを溶かしてくれた気がした。
それにしても、ストーリーや設定や視覚的な色などに強烈な何かやメッセージみたいなものを置くことなしに、その作品や時間を尊いものにするってとてつもなく難しいのだろうなあ、と。
それが叶ったら、それはほんとにスゴイことなんだな、と。
はたして長塚さんがそれを「置かない」ことにしていたのか、いやじつは「置いていたのか」はわからないのだけど。

でもって、そうか、やっぱり「おとぎ話」は、「おにぎりとみそ汁」じゃなくて「パンとスープ」なのかあ、って・・・なんとなく(笑)。
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by saskia1217 | 2013-01-23 03:12 | 感じろ、考えろ、思え! | Comments(0)

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