初めての火の国 その2

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宇土櫓は、一歩足を踏み入れるとあまりに薄暗くて、すぐに様子がわからない。
しばらくすると目が慣れてきて、朴訥だけれど温もりもある板の間の、つるつると光っている床の感触が心地いい。
ギシギシという音を聞きながら、どんどん奥へと進む。
天守閣みたいにコンクリートもなく、明るすぎる光もなく、とにかく殆ど誰もいないのがいい。
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昔使われていた瓦や木材などが残されている展示ケースを、ぼんやりした灯りの下で見入る。
冷たい雨のせいでひんやりしてはいるが、木の造りのせいか底冷えはしない。
1階はまだ面積が広いので、ちょうど中央あたりに広い部屋がある。そこまで入っていき、床に座ってみる。板の間に座って低い視線から周りや天井を眺めてみると、立って歩いているだけではわからない光の角度や天井の高さが実感できる。
「ああ、ここで昔の人はこうやってこの床に座って何を考えていたんだろう、何を話していたんだろう」なんて思う。
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お城に付きものの急勾配の階段を昇って行くと、当然のことながら上の階へ行くほどに部屋数は少なく、狭くなっていく。
ここは本当に、昔の建物にいるんだなあという感動を味わえる。
「お城」といっても所謂キラキラした御殿じゃないから、「城塞」的な暗さと無骨さがある。
(ドイツ語でいえばSchlossじゃなくてBurgのほうね)
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さっきのぼって景色を眺めてた天守閣を、今度はこっちから逆に眺める。
最上階(5階)はこんな感じ。もちろん一部屋のみ。
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ここにも係のおじさんが1人。
窓から遠くを指差して「お天気がよければ、こっちに阿蘇山が綺麗に見えるんだけどねえ、残念だったねえ」と。
そうかあ、見たかったけど、雨にけぶる熊本の緑も情緒がある。
ここは本当に見られてよかったな、天守閣よりずうっとよかった。熊本城観光のオススメ第1位!
しばし景色を楽しんだあと、再び急な階段をえっこらさと降り地上へ。
そしてこの宇土櫓を支えている有名な大きな石垣を見たかったので、坂を降りて一旦門外へ出て(チケットは一日有効)、加藤神社のあたりへぐるっとまわって下から見上げてみる。
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圧巻だなあ!
この曲線!
この石垣、気に入った。

再び城内へ戻り、坂をのぼる。
数寄屋丸前の井戸。
城内には井戸がたくさんある。加藤清正は朝鮮出兵の折り水の欠如に苦しめられた経験から、この城内には多くの井戸を作ったと言われている。
覗いたら、水が見えた。
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熊本は昔から豊かな水に恵まれていたということを実はあまり知らなかったのだが、熊本と水は歴史的にも切っても切れない由縁があるんだね。今でも市内の水道の殆どは地下水だという。だから美味しいお米、お酒が出来るんだね。
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だんだん下りながら出口を目指す。
有名な「二様の石垣」あたりには誰も居ず、ゆっくり眺めてその角度の美しさを味わう。
手前(内側)が加藤時代の傾斜の緩いもの、奥(外側)が細川時代の急なもの。同じ「打ち込みハギ」という工法だけど、隅石の積み方が違うんだそうだ。外側は「算木積み」という、急な傾斜を作ることのできる方法らしい。
雨が降っているおかげで、石垣のあちこちで美しい水の流れを見ることができたのはむしろラッキーだったかも。
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一番美しいと思った場所。しばらくの間ずっと立ちすくんでいた。
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ずんずん下りて、櫨方門近くまで来た。ここから出れば、ついでにあの有名な「長塀」を見ながら街へ戻ることができる。
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ここにも立派な井戸。
長塀を裏から見るとこんな感じ。
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城外へ出て橋を渡り向こう側の遊歩道に。
加藤清正像にご挨拶して、川沿いを塀を見ながら歩く。
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遅めのお昼ごはんにはまだ時間があったので、ついでにお城周りの神社もぐるっと制覇。
「モヤさま」や「GRACE OF JAPAN」でも見た熊本城稲荷神社。ここは是非来てみたかった。
通り沿いに鮮やかな鳥居が目立つ。
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手水舎もかわいい。男性的な櫓を見た後で、なんだか和む。
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拝殿も、目が覚めるような朱色。
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お稲荷さんはもともとその土地の人に最も密着していて、商売繁盛とか豊穣を祈るもの。そんな、土地に根ざした庶民的な親しみ易さがここにも溢れていた。愛されてる、って感じ。
稲束をもったおじいさんとして描かれてるのが生活守護神の「白髭大神」、地元で「白髭さん」と呼ばれて親しまれているそうだ。
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ま、それが高じて・・・みたいに、おみくじが何種類もズラ〜っとあったり、恋愛成就・縁結び、火伏せ、子宝祈願、子安祈願、水子供養・・・とにかくありとあらゆるお宮がいっぱい!
ここにくればもう、何でもOK!みたいな空気(笑)。これは心強いだろうね。
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お稲荷さんを後に、これもテレビで見たお隣の「熊本大神宮」へ向かう。
そしたらお稲荷さんの隣りにもうひとつ鳥居を見つけたので、行ってみる。鳥居には「白髭大明神」。ほ〜、ここにいらしたのか。
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奥に並ぶ小さなお宮では、地元の方が丁寧にお掃除して新しい蠟燭をお供えしていた。それを待って近寄ってみる。小さな小さな、とても大事にされているお宮。
そして、「大神宮」のほうへ。
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ここは明治の頃に伊勢から勧請されたもの。落ち着いたシットリしたお宮。
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朝からここまで飲まず食わずでずいぶん歩いたけど、お城に加えて、行きたかった神社をすべて訪れることができてありがたかった。
さて、やっとごはんにありつける(笑)。

オススメ情報があったお寿司屋さんが日曜定休で行けなかったので、勝手にリサーチして馬肉を食べにいくことに。
初めて行く街では必ず、観光とご飯は「超ベタ」なものと決めている。
馬肉はそうしょっちゅう頂く機会はないけど、馬刺とか大好きだから楽しみに馬肉専門店「菅乃屋」さんへ。
何種類かあるランチ、迷ったけど結局、ステーキや馬刺が楽しめるものに。その後店内では殆ど皆さんが同じものを注文してたから、正解だったのかもね。日曜お昼だったけど、会合、会食という雰囲気のビジネスマン風の男性の団体や、商談ぽい方も多かったですね。カップルや観光客もちらほら。
まずは馬刺がやってきた。
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部位の説明をしてくれたんだけど、どれも新鮮で柔らかくて美味しい。タテガミ(手前の白いの)は初めて食べたけど、これ好きだな〜。色のせいで何やらギトギトして見えるけど、実は全く油っぽくなく、固くもなく、ほどよい歯ごたえで美味しい。それぞれ、さらしタマネギや生姜などの薬味といただきます。
熊本の甘いお醤油が合う!
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オニオンスープも自家製でいい味、サラダには熊本名物(?)のトマトドレッシングが合う。
カウンター席だったのだが、目の前にはお寿司屋さんみたいなガラスケースに馬のいろんな部位がズラッと並んでて壮観だった。厨房では大勢の料理人さんたちが寡黙にきびきび立ち働いてる。
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メインのステーキ。ミディアムレア。お箸で食べられるように切ってあるが、ホントに柔らかい。付け合わせの野菜も工夫されてて美しかった。ご飯とお漬け物も付きます。
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デザートはパンナコッタと珈琲。なるほど、洋食風ってわけですね。

満足して外へ出ると、なんと雨が上がってきた。なんだよ、今頃かよ(苦笑)。
空港行きのバスまでまだ時間があったので、上通り、下通りのアーケード街をぶらぶら。
あ、くまモン。
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雨のせいかバスが来るのがずいぶん遅れたけど、かなり早めに空港へ到着。ゆっくりお土産をみてまわる。家族や友人にいくつか見繕い、普段はまず買わない「自分」へのお土産(笑)。
ベタでしょ〜?
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その夜はもちろん、これでささやかな晩酌だったですよ。ははは。
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からし蓮根はちょびっとマヨネーズ付けると美味しいんだよねえ。
そういえば、からし蓮根は身体の弱かった細川のお殿様のために料理人たちのコンペによって決められた料理といわれてるけど、あの輪切りの面の模様って細川家の家紋そのものだよね?
それも関係あるのかな・・・よく知らないけど。

いろんなものを楽しめた、初めての熊本。
お仕事じゃなくって、またゆっくり訪ねる機会があれば、天草とか温泉とか、教会とか神社とかもっと見たいな。

今回知ったこと、いろいろ。
熊本は水の街である。
熊本の真ん中には「鶴屋」というデパートと、その隣りにパルコがある。
煮物が甘い(ホテルの朝ご飯で食べた鶏肉とタマネギの煮物が激甘でビックリ!)。
そして・・・。

隠れキリシタンが書かされた「誓約書」。
熊本城内の展示で見たのだけど、そこには「藤崎八幡宮」をはじめとする地元の寺社を信じます、それがもし嘘ならばそれらの神社仏閣の神仏の罰を受けても構いません、という誓約のみならず、なんと「この誓約がもし嘘ならば、キリスト教の神々(ここがちょっと日本ぽい感覚なのだけど)の罰を受けても当然です」と書かされていた。
私は子どもの頃、例えば踏み絵なんてその場だけ踏んでおいて、心のなかでは「神様への気持ちを守り続けるためにこうするしかなかった」的な強い思いがあればいいじゃないか、なんてズルいことを思っていたものだが、つまりこの誓約書はそんな「考えがちな方法」をも封鎖してしまう、これこそなんともずる賢い、人の心の底の底までもズタズタにしてしまう徹底的な弾圧だったわけだ。
そうだろう、私なんかが考えつくことに、当時の役人が思い至らないわけはない。
歴史として知識として知っていても、この一枚の誓約書が持つ凄まじさには到底追いつけない。

素敵な2日間 in 熊本。
いろんな人に、ありがとう。
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by saskia1217 | 2012-12-10 21:35 | 感じろ、考えろ、思え! | Comments(0)