人間萬事様々の

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だいすきな飛鳥山で、だいすきなお能。
今年で10年目を迎えるという「飛鳥山薪能」を、昨夜初めて観にいった。

仕舞「融」、狂言「墨塗」そして能「石橋」。
薪能は、以前観に行った根津神社につづいて二回目。
お天気に恵まれて爽やかな秋の風が吹く飛鳥山、季節を問わずただそこにいるだけで、ここに古墳が出来た頃の縄文の世や江戸庶民の行楽に一瞬にして思いを飛ばすことができる不思議な場所。
すでに暗くなっていた開演少し前に到着すると、会場は文字通り老若男女、大勢の人びとの高揚した気分で満ちていた。和服のご婦人方も多い。この日の入場者は1500人くらいだったとか。北区肝いりのこの催し、毎年かなりのプラチナチケットらしい。3ヶ月前、これを全く知らなかった私に情報をくれたお友達に感謝。

実行委員会会長さんや北区長さんの挨拶に続いて、王子神社の宮司さんによるお祓い。いつもはがら〜んとただの四角い平らな場所だったところに、この日は立派な能舞台がしつらえてある。その四方に向けて厳粛に大幣を振る。
お能が神事だという、背筋を正される一瞬。
続いて、区長さんや教育委員会関係者、区内の謡曲組合代表などによる薪の火入れ。

素晴らしい天候にもうひとつだけ、月が出てくれさえすれば完璧なロケーションだった「融」。
横浜能楽堂の副館長さんの解説にあったとおり、仕舞は、装束や面をつけるお能と違って能楽師の身体の動きそのものを味わうことができる。
「ああ、江戸の頃は大名が野外の能舞台で行われるお能を鑑賞したりしていたかなあ」などとぼんやり思いながら、ただ「風流」というだけでない、脈々と受け継がれてきた「趣」「神聖さ」「時間の流れ方、時間の使い方」などを体感していた。

演者や謡の方たちの声はマイクを通されていたのでとてもよく聴こえ、野外というストレスは全くなし。お囃子にPAがついていたのかは不明だけど、鼓も笛もいずれにしても遠くまでよく通る音。
虫の音に重なる、お囃子と謡・・・その味わい深さは言葉にできない。
本郷通りの交通量の多さのわりには車の音もそれほど気にならず。それよりも公園の上の方をキャッキャと騒ぎながら通る女子高生(?)のほうが気になる一幕も(苦笑)。でもそんなとき、ボランティアの係員の方たちがすぐさまそちらの方へ駆けつけていた模様。
そんな小さな気遣いが山ほどあっただろうなあという、この催し。

つづいての「墨塗」は野村万作、萬斎親子のご出演。
ほんとうに万作さんの存在感はすごい。
どちらかというと小柄な方なのに、舞台に出てこられるだけで視線も耳も惹き付けられる。
かなりの距離から見ているのに、オペラグラスを使わなくてもその表情を難なく捉えられる。
墨を塗るシーンでは、もっと派手に真っ黒けになるのかと思いきや、チョンチョン程度だったのがちょっと残念な気も(笑)。

休憩をはさんでの能「石橋」。
寂昭法師の演者さんは見るからにお若い方だったので、こちらが勝手にイメージしていた「僧」とのギャップがあるように感じてしまったが、考えてみたら後で登場する「仙人」との対比としても結構よかったのかもしれない。
童子、仙人、獅子などの多くの面が見られるのも楽しい。
そしてもちろん、紅白の牡丹が運び込まれた後に登場する4匹の獅子たちの活躍は、だれもが期待していたところ。
歌舞伎のような動きはないけれど、能ならではの切れ味のある舞には単なる「動」だけでない、そう、その後ろには文殊菩薩さまが控えているのだという神々しささえ感じられた。

ほ〜、それでこの後法師さんは結局この橋を渡れたのか?
文殊菩薩には会えたのか?
・・・なんて俗っぽいことを思いながら、余韻に浸る。

「人間萬事様々の。
世を渡り行く身の有様。
物毎に遮る眼の前。
光乃陰をや送るらん。」

(人というものは、それぞれにこの世の中を生き暮らしていく。
けれど皆、自分の行く手を遮るように現われる物事にだけ気を取られ、心を動かす。
そうしてその日その日を過ごしていくものなのだろう。)

そのなかの一日として、この場所と時間を与えられたことが、なんだかとても貴重だった。
一日一日、その時その時を大事に、浅はかで虚しい人間という存在ではあるけれど、できるならば大きな眼差しを持って将来という時を眺めたいものだ。
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by saskia1217 | 2012-10-14 01:30 | 感じろ、考えろ、思え! | Comments(0)


今日もまた日が昇る・・出かけてゆこう!


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