最後の息を吹き込む人

e0081334_23403018.jpg

長い時間をかけた改修が終わって、再度奉献となった東京・祐天寺の聖パウロ教会のオルガン。
最初にこれを造られたのは辻宏さん。
今回の大修理は、この教会の方たちに始まって、何人ものオルガンビルダー、オルガニストたちの力が積み重なって実現したもの。
年老いたこの楽器が再び生き返って、文字通り「息を吹き返して」、そしてその一連の作業の最後の一筆を入れたのが、きっと世界中誰よりもその役目に相応しいオルガニスト、ヴォルフガング・ツェラー。私のオルガンの師匠でもある。

クリアになったオルガンの発音に、この希有なオルガニストの信じ難く美しく明晰なアーティキュレーションが、まるで複雑な鍵穴にピッタリと合う鍵のように解け合う様は、もう爽快としかいいようのない快感。
どれも素晴らしかったけれど、自分でもオルガン、チェンバロ両方でよく弾く機会のあるスヴェーリンクの「エコーファンタジー」と「へクサコードファンタジー」が絶品。
ハンブルクの小さな教会の、ストップが数えるほどしかない小さなオルガンでレッスンしていただいたとき「大きい楽器で大きい音を出すことがオルガン演奏の醍醐味じゃあない」というごくごく当たり前のことを、どんな楽器にも大きな愛情をもって接するこの見事なタッチでもって証明してくださった時の衝撃はかなりのものだった。
終演後に久しぶりにお会いしてお話したとき、そしてその後皆でお食事したとき、この方が「めちゃめちゃ素晴らしいオルガニスト」であるだけでなく、本当に誰に対しても等しく深い愛情をたたえた温かい心を持ったひとりの人間だということを再認識して、胸があつくなった。
言葉、行動、その端々に宿るその「何か」が、やっぱり彼の音楽に脈々と流れているのが、誰が聴いてもわかるんだ。

今日は全曲、人力のふいごで演奏。
e0081334_026722.jpg


このオルガンの音色は、毎月第2金曜日、12時20分〜50分の30分間「ランチタイム・コンサート」で聴くことができる。入場無料に加え、小さなお子様も参加可能。
来年3月8日(金)は私が担当なので、もしよろしければ是非!
鬼が笑うかもしれないけど・・。

明るい気持ちにさせてくれる、秋のイワシ雲に感謝。
e0081334_0144893.jpg

[PR]
by saskia1217 | 2012-10-08 00:15 | 感じろ、考えろ、思え! | Comments(0)