木で出来たドアノブ〜コンドルズ「ノッキン・オン・ヘヴンズ・ドア」東京千秋楽〜

ネタバレしています。
コンドルズ「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」をこれから鑑賞される方はご注意ください。












コンドルズを、空気のように楽しめるようになったのはいつからだったろう?
前回か、前々回か・・・。
開演時間の少し前に劇場に着いて、一息おいて自分の席につき、上でも下でも右でも左でもない、真ん真ん中の白い点となって開演を待つ。
自分が自分であるままに、余計な熱量も過度な期待もなく。
ちょうどいい安らぎと期待の狭間で、こうやって静かに、そしてまっすぐに開演を待つのはいいものだ。

そうして、扉(ドアー)は開けられた。
コンドルズの2012年日本縦断ツァー「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」東京公演千秋楽。

今回ステージにのる出演者は15名。
特に2階席から奥まで見下ろすと、「あ〜なんだか圧巻だなあ」とその人数の充実ぶりを感じさせられる。
オープニングからたくさんの白いドアが使われるが、そのドアが良く出来ていていろんな使い方が繰り広げられてゆく。結局のところあそこまでに辿り着くには、きっといろんな試行錯誤もあったんだろうなあと思いつつ、テープでガシガシ固定されていた重しや、移動できる小さな車輪や、ちょっと乱暴に扱うと微妙な角度で立て付けが狂ってしまいそうな、そんなたくさんのドアをくるくると目で追っていた。
しかし8枚、時には9枚が横にズラ〜ッと並べられた光景、「野外フェスのトイレ」を思い出してしまったのは私だけじゃあないはず(すいません、正直な印象なんで・・苦笑)。

いつものように、群舞からアンサンブルへ、そしてデュエットへ、ソロへ・・・そしてコントや映像へ、とすべるように時間が移動してゆく。
映像部分もとっても良く出来ていて、とくに印象的だったのはメンバー紹介の凝った造り。すでに「天国」の「ドア」の向こうにいってしまった偉人たちに扮したメンバーが、そのコスプレで映し出される。セピア色した太宰の青田さんや、ビン底メガネが意外と似合う棟方志功のオクダさんなんかがドンピシャだったですね。背景にゆかりの作品やキーワードが何気なく仕込まれていたり。めまぐるしく変わっていってしまうのだけど、ひとつひとつをじっくり見たくなる面白さがあった。
そういえば、イスラエルの死海の映像の最初に出る「No.4126」というナンバリングなんて、ちっちゃくて見逃しちゃいそうなところまで手を抜かない徹底ぶりに、ついクスクス笑い・・・あれ、「ヨイフロ(良い風呂)」ですよね?(笑)

音楽もどれも楽しめて、曲名とかは私にはわからないものも多かったけど、ホントに全て心地よかったな。
コレッリのコンチェルトグロッソや、ショパンのノクターン、オルフのカルミナブラーナなどみんなに馴染みあるクラシックもたくさん使われてて、それが白いドアとそこに寄り添うちょっと無機的なダンスによく似合っていた。キリコの絵みたいに。
途中、ドイツ語のキャバレーソング的なのもあったりしてとっても好きだったんだけど、あれは誰の曲だったんだろ。
Radioheadも聞けて嬉しくて、その場面のダンスもとても好きだった。
音楽といえば、良平さんと石渕さんのリコーダーデュオの超絶技巧にも拍手!
なんなの、あのヴィルティオーソは。

「天国のドアを開けようとして開けられなかった4人」によるコントは、東京千秋楽だったせいもあったのか、同じテンションと内容がすこ〜し長く続きすぎるような、こちらの集中力がついて行きにくいところもあったのだけど、橋爪さんとオクダさんがもうすっかりコント部分の定番「名優」になっていて、お二人のお芝居が以前よりずっと「深く」なってて関心してました。
今回は小林顕作さんが映像のみのご出演で、過去何回かそういう公演もあったのだけど、やはりあの存在感ある顕作さんが居ないと大抵かなりの「寂しさ」(というか「居ない感」)があったのだ。
が、今回はその「欠けてる感じ」が全く無く、いかにも顕作さんにしか書きえないテイストとメッセージのコント台本だけでもう、そこに十分その存在感があって、じつはそれで十分といっていいくらいの安心感があったですね。ぎたろーさんを含めた4人が「俳優さん」然としてた。
いつもながらの余韻を残したストーリーもよかったし。
さんざんじ〜んとしたセリフを橋爪さんに語らせた後、ラストの一言「天国なんてそんなにいいもんじゃないよ」を勝山さんが担当したのが、これまたドンピシャだなと思った次第。

ダンスでは古賀さんが大活躍。
もはや定番になりつつある「スギちゃん」風の衣装で踊り狂う古賀さん・・・レベルの高いダンスからは「踊りたい!」というエネルギーが光線のように出まくってて、すごいパワーだった。
笑いすぎた・・・。
平原さんの美しい動きが今回も堪能できたのも嬉しかった。しかもコントであそこまではじけた役を割り振られたのは今回が初めてだったんじゃ?
いいよ〜、もっとやって欲しいです。

今回も照明が綺麗で見事。
床に使われた青色や、その上に照明で重ねられたいくつもの小さい長方形のシルエットが美しかった。

そしてこれも定番であり、こちらの心と身体もそこに向かってすんなり流れてゆく「コント終わり〜群舞になだれ込む〜良平さんのソロ〜全員による大団円」というラストで、やはり全体を眺められて一人一人もしっかり見える席から見ていたせいか、メンバーの姿に順繰りに目を運びながら、なぜだか感無量な気分になってしまって困った。
コンドルズ見て涙が出た、って実は今まであんまり無かったので。(一昨年の与野のラスト「moonlight magic」で泣けたのは、まあ音楽のせいもあったからあれは例外・・笑)
そして最後、「これぞコンドルズ」的な振りを満足感いっぱいで見ながら、「あ〜きっとこれからもずっと、この人たちの舞台を見てゆくんだろうなあ」という幸せが、自分の中いっぱいに広がってゆくのを感じていた。

メンバーの山本光二郎さんが、今発売中の雑誌で「(一緒に踊る時)メンバーひとりひとり、それぞれ握った手の感触、感覚が違う。」と話していたそのエピソードを、アンコールの拍手をしながら思い出していた。
引っ張る手、受け入れる手、柔らかい手、温かい手、冷静な手・・・
その「16人の手」がにぎるコンドルズのドアノブは、きっと全部、木で出来ている。
静電気を起こして、相手が思わず飛び退いてしまうような金属製じゃなくって、彼ら一人一人のそれぞれ全てがドアノブを通して、そしてドアを越えて伝わってしまうような。
押し売りでもなく、後ずさりでもない、ちゃんと「相対する命」に正面から向かってくれる、年月を経た包み込む力に満ちた、そんな手。

日常も、舞台も、にじみ出るものの責任がどうしても付いてくる今日このごろ。
「もう僕らは、扉を叩いてしまった」以上、後戻りはできない。
いつでも「ココロをノック」していいよ・・・そんなあたたかい覚悟を、また教えてもらった作品とパフォーマンス。
ありがとう、コンドルズ。
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by saskia1217 | 2012-08-29 01:50 | コンドルズ | Comments(0)