祈りの鐘

8月9日、長崎、原爆記念日。
本当は行きたかった浦上、そこが中心となって記念の催しが行われていたので、長崎の町の中心に泊まっていた私には、その3日前に広島で経験したような強烈にアクティヴな音や風景は飛び込んでこなかった。
それでも午後のGPまで時間があったので、街を歩いてみたいと朝ホテルを出た。
ベタではあるが、眼鏡橋のほうまで行ってみようと思ったのだ。地図でみたら骨董品のお店がその辺りに多いことも理由のひとつだったのだが。
見慣れぬ街を地図を片手に区画を突っ切っていく。坂が多い。そして市電の様子も広島とはまた違う。
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途中、もう中島川に近いところで小さいお社にぶつかる。
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恵美須神社(賑町の事代主神社)。少なくとも1666年前の鎮座らしい。小さいけど歴史がある。
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川まで来た。
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この辺りは川岸に古いお店がいっぱい。金物屋さん。そして骨董品(古道具)屋さんもいっぱいあるんだけど、午前中だとまだどこも開いてる雰囲気がしない・・・。
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眼鏡橋がすぐ見えてきた。想像したよりずっとこじんまりして小さい。さぞや観光客でいっぱいかと思いきや、殆どだ〜れもいない。
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前夜に仕入れた情報で、このたもとにあるカステラ屋さん「匠寛堂」でお土産を買おうと思ってたので、さっそくお店へ。店員さんに色々話をききながらカステラと冷たいお茶の試食サービスで一息。長崎を訪ねた理由をきかれて演奏会の話題になり、「もうすぐあと数分で11時2分ですね」と店員さん。
カステラを買って外に出、いくつもある橋を渡りながら両岸をかわりばんこに歩く。
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眼鏡橋に戻ってきたらいくつかのテレビカメラが、あらかじめ依頼したとおぼしき観光客のカップルの姿にしきりに焦点を合わせている最中だった。
その時、街頭スピーカーからアナウンスが始まった。原爆投下時間の11時2分が近いので、皆さんどうぞ黙祷をお願いします、と。ほどなくしてサイレンが町中に鳴り渡る。寺町のほうからお寺の鐘が、港のほうからは船の汽笛がいっせいに鳴り渡る。犬の散歩をする地元の人たち、観光客、カステラ屋さんの店員さんたち、皆ひとり残らずその場に足を留めて祈る。橋のたもとの柳の木の下で、私も目をつむった。
ちょうど数分前にそこにあった案内板を読んで、初めて知ったことがいくつかあった。当初小倉に投下される予定だった原爆が悪天候のため第二候補地であった「長崎市街地」に変更されたこと、それがちょうどこの眼鏡橋の辺りだったこと、しかし目視だったため雲の切れ間から見えた軍の施設らしきものを標的とされ、結局は浦上に落されたこと・・・
想いを巡らせつつ、1分間は過ぎ去り、すぐにまた皆が流れるように動き出した。
恥ずかしながら長崎の投下時間を意識せずに散歩に出ていたので、まさにその時間にこの場所に「連れてこられた」ことがありがたかった。
まだ少し時間があったので、川の東側の山の方、お寺がたくさん並んでいる「寺町通り」のほうに歩いていってみた。
立派な山門を持つ様々な宗派のお寺がズラッとたち並ぶ。
日蓮宗の長照寺。
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階段をあがって行くと鳥居が。う〜ん、ここでも見事な神仏習合か。護国殿。
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そして小さなお堂。
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本堂。
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庫裏。
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お隣の、曹洞宗・晧臺寺(こうたいじ)。
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サルスベリがよく映える構え。
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階段を昇りきったところにある大仏殿(華厳閣)にある昆慮舎那仏坐像。高さ3.4m。結構なインパクト。
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山門(仁王門)。1680年創建。ん〜、バッハが生まれる頃だ。
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この辺りはとにかくお寺がいっぱい。順番に全部見てまわりたかったが、時間切れでホテルに帰ることに。
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風情ある町名が多い。市内には他にも、麹屋町、魚の町、鍛冶屋町、桶屋町、出来大工町、新大工町、八百屋町、夫婦川町、銅座町、銭座町・・・キリが無い。
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途中こんな素敵な坂を通りかかる。
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幣振坂。
昔、諏訪神社の一の鳥居のための石材を切りおろしてきた時、宰領が御幣を振って人夫たちを鼓舞したというのが由来。さだまさしさんの映画「解夏」のロケにも使われたそうだ。
ああ、ここをのぼって行ってみたかった!

さて、その日夜の演奏会は浦上にほど近い長崎ブリックホール。
広島の半分の人数、約80名の合唱団が素晴らしい。
この日の語りは女優の白石加代子さん。リハの時からその印象的な声と抑揚、言葉の扱いはさすが。感銘した。特に、言葉と言葉の間合いが絶妙で・・・投下当日の長崎大学医学部の情景をよんだ詩だったのだが、何事もなかった日常に突然原爆が落されたその瞬間の、普通なら間を置いてしまいそうな擬音を、間髪入れずに読まれたのがとても印象的だった。それがどれだけ何の揺るぎもなかった日常に突然予期せず襲って来たのかを彷彿とさせた。
今回広島と長崎で演奏したモーツァルトの「レクイエム」は、指揮者カンブルラン氏の意向で最後の部分がカットされ、そのまま「アヴェ・ヴェルム・コルプス」へ流れ込むというスタイルを取っていた。希望の光、願い、望みがあるという明るさへ繋ぎたかった、という。
長崎では特に、そのアヴェ・ヴェルムの最後の和音と同時に、鐘の音(ベル)が3回鳴らされた。
リハでそれを聴いたときの、なんともいえない祈りの波。四方八方に広がってゆく鐘の音。
本番、会場中がその波に唱和してそのまま虚空に吸い込まれるような一体感に、私たちも包み込まれていた。
これで今回の「祈りの使命」は果たせたかな、と。
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少しグッタリしながら、終演後は思案橋のお寿司やさんへ。
時間が遅かったのであるものを出してもらったが、珍しい食材もあったりで楽しかった。
クジラのいろいろ。
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お刺身。
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東京では見当たらない、このいろんなものが混じった、不思議なニオイのする一角をしばらく歩き回ってからそのまま徒歩でホテルへ戻る。
猥雑で、開放的だけど秘密の匂いもして、美味しくて、お酒に溢れてて、人の渦で、蒸し暑くて、そしてちょこんとおさまっている一角。興味深い。
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最後に、思い出に老舗カステラ屋さん本店をパチリ。
文明堂。
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福砂屋。
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帰途は長崎空港から。大村の素晴らしい晴天の下。
空港でだめ押しのチャンポン&皿うどん2種。
皿うどん、やわらか麺バージョン。(具が同じなので麺を持ち上げないと差がわからないのだ・・・笑。撮影協力/首席オーボイスト)
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皿うどん、カタ麺バージョン。(撮影協力/首席コントラバシスト)
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しっかし、どれも美味しかったな〜。だめ押ししてよかった。
帰りの飛行機は、見事なお天気のおかげで雲の祭典を楽しんでたら、すぐ羽田に着いてしまった。
数々の空のドラマを振り返りつつ、今回の貴重な旅に感謝。
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Commented by 馬酔木 at 2012-08-16 23:06 x
羨ましい…長崎は未踏の地です。本当は昨春訪れる計画を立てていたのですが、3.11でその気が削がれてしまい…。さだまさしファンなのにその本拠地を知らないというのは情けない。
黙祷の時間をその地で過ごす、というのも貴重な体験ですね。練り上げられた鎮魂のコンサート、東京でやる予定はないんでしょうか。
Commented by saskia1217 at 2012-08-17 11:22
コメントありがとうございます。
天主堂の近くではさださんのお店もみかけましたよ。私ももっと見たいところはいっぱいあったのですが、長崎は本当にゆっくり時間をとらないと見られないところだなと思いました。「解夏」は観ていないのですが、景色をみたら見てみたくなりました。
読響は過去も原爆記念日に特別な演奏会を行ってきたのですが、今回はオケの50周年も兼ねての、いつもの演奏会シリーズからは独立したやはり特別な企画だったようです。東京での演奏会はありませんが、広島の演奏会はテレビで全曲放映するときいていますので是非ご覧くださいね。(月1回の日テレ「読響シンフォニックライブ」。放送日などはHPでごらんください)
by saskia1217 | 2012-08-16 03:02 | 感じろ、考えろ、思え! | Comments(2)