ノックされた心が〜エレカシ・ニューアルバム「MASTERPIECE」リリース〜

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ビックリしたよ。
裏切られないとは、どこかで当然のように思っていたけれど。
エレカシを聴きはじめてからたったの5年、でもここにくるまでずいぶんいろんなことがあった。
フラゲしようとクタクタの身体をひきずって夜遅くレコード屋に行ったり、ラジオのインタビュー聞き逃したといっては翌日まで自分を呪ったり、いつそんなことから卒業できるんだろう、と思っていたけど、大丈夫、いつだって私はちゃんと真ん中に戻れるんだってことは知ってる(笑)。
何年もかかるけどね。

今日発売になったアルバム「MASTERPIECE」は、夕方仕事から帰ったらポストに届いていた。
すぐに開けなかった。他にやることがあったから。
ご飯を食べて、デスクワークを片付けて、親に用事のメールして・・・ちっとも焦らない自分(笑)。
そんな自分が、今やっとこの作品に相応しくなったのだと思わせてくれたのが、この21枚目のアルバム、そんな気がした。
彷徨って迷走して「ストン」と、ある場所にやっと「墜ちた」・・・納得と安心と快感。

通して聴いた。
ヘッドフォンで、正座して。
今日はマジで足がしびれて、漫画みたいに立てなくなった自分に声を出して笑った。
そして思ったんだ。
そうだ、こうやって笑う日常から生まれ、その日常でいつもそこにあってくれる音と言葉なんだな、って。
壮大な絶賛とか、過度な涙とか、そんなものは最初から無い。
私がいつもエレカシの音楽を聴いてあれこれ書くこと、それはたぶん全てすごくバカらしいんだと本当に思う。書くこと自体無意味だし、ただの自己満足だ。必要ないことだ。
私はいったい誰に向かって書いてるんだろ(笑)。

でも書いちゃう。
今回はでも、本当に違うんだ、何かが。

あったかいアルバム。
愛だな〜〜。
甘い、甘いよ、ミヤジ!
曲調とか歌詞じゃない、全部が。
つくった人、演奏する人の個人的状況とかでもない。
「ラブソング」も、もしかしたらそうじゃないかもしれない曲も。
ただ「しあわせな」「しあわせを歌っている」アルバム。
「可愛い」アルバム。バカにしてる「可愛い」じゃなくて、その素直さに思わずホロッとなる。
聴いた人はみな、気づかないうちに口角が上がってる、微笑んでいる。
私はそうだった。
開かれる気がした。
身体中の緊張がほどけていく。こっちの心の扉が自然に開く。
「今回は全てをさらけ出した」という宮本さんのインタビューの言葉を思い出した。
だからなのか、聴いた人が「さらけ出せる」気になってしまうのは。
両手を広げて皆を、全てを受け止めてくれそうな、そんなイメージ。

アルバムの曲順に聴くとホントにいいよなああ、やっぱり。
とにかく今日は時間がなくて(!)聴いてない新曲だけとりあえず聴こうかなどと不謹慎なことをチラッと思ったが、シングルで聴き込んでた4曲はやっぱりどうしてもとばせなかった。
シングル曲はアルバムに入ると、もちろん感じることが少し変わってくる。強まる部分、見えなかったものが見えてくる、その前後の曲との溶け合い具合・・・。

第一印象。
「我が祈り」
一度きいて「好きだな〜」と思う。イントロのユニゾンがそれはそれはかっこいい。ドラムが特に。音源聴くとドラムにいたく胸うたれるのはなぜだろう。
長調と短調の間を行き交う宮本さんお得意のゆらゆらは、でもいつものともちょっと違う。
なるほど、声が、歌い方が今まで聴いたことないことはたしかだ。Cメロからは聴き慣れたいつもの歌声に戻る。
「俺の道」がもっともっと大人になったサウンド。
そうだね、宮本さんはやっぱり「犬」じゃあない、「猫」だよなぁ。

「Darling」
イントロ聴いた時、もうえらく懐かしい気がした。ほわ〜っと、オレンジや黄色や黄緑色と、いい匂いと、薄甘い味が自分の目の前に立ちのぼる。
とんでもないしあわせ感の中にそれでも、どうしても拭えない一縷の悲しみがあるのは、それは人生の午後にいる人にはたぶんよくわかる。
宮本さんの「ヤ行」がホントに好きなんだなあ(笑)。そしてAメロ終わりのメロディーラインが好きすぎる。なんなんだ、この懐かしさは。
最後のピアノを聴いたとき「これ宮本さん自身の演奏かな?」と思ったら、楽器全部担当されてた。
個人的には、拍と拍の隙間に空気をいっぱい含んでる宮本さんのドラムがとても好きなので、今後もアルバム中1曲はこういうのをやってくれたら嬉しい。
初夏の新緑が一番好きだという宮本さんらしい、光る緑が見える曲。

「大地のシンフォニー」
前の「Darling」が終わってすぐ、同じ調で鳴り始めるこの聞き慣れた曲。それが、聴く人を広く受け止める誘いになっている。素直に心に入ってくる。
あらためて耳を澄まして聴いていると、ベースの魅力的なことを再確認。甘さがある。
「Darling」で歌ったことが、ここで力強い足どりを得て、歩みのマーチとともに確実なものになってゆくのがわかる。

「東京からまんまで宇宙」
「大地」を受けて、ますます心がノってくる。
バンドがよりしっかりと支え、歌ともっともっと強く結ばれる。愉悦感がプラスされる。
でも何度聴いても、相変わらず「謎の合いの手」の言葉はわからないままだ(笑)。
どーでもいいことだけど。

「約束」
ここで少し心がシットリする。ドラムのミディアムな重いリズムがこちらを全開にさせる。
5月の青空の下でもいいけど、秋の空の下で聴きたい気もする。

「ココロをノックしてくれ」
イントロのリズムがいいねえ。すでにラジオで何曲か聴いていた新曲のうち、何故か一番耳に残った曲、特にサビが!
多重コーラスが美しい。アコギも美しい。
「丘」が出てくる詞に、思いを馳せる。
「時間がないんだ」、私にも無いんだ。
なぜか、どうしてもこのサビでコンドルズが踊る姿が浮かんで離れない・・・。
この曲・・・ツボなのかもしれない、実は。

「穴があったら入いりたい」
イントロからの想像を跳ね返すメロディーのあたま。声が弾んでるね。
声が自然なお芝居をしている・・・ドキュメンタリーなんだけど。
これも今までにあんまり無かった歌い方のような。
しかし。
よくもまあ、このフレーズ「穴があったら入いりたい」を「歌おう」と思ったなとあらためて思う。
♪神様、もっと光りを♪が最高。
ライブですっごく聴きたい曲だな。

「七色の虹の橋」
「穴があったら・・」と同じ調でなだれ込む。
♪きっと世界で一番♪からのサビ(?)が、世界で一番美しいメロディーと歌だ。
「赤き空よ!」で味わったのに近い、この締め付けられ感。
神保町で録ってきたという2番冒頭の街の音に、一気にワープさせられる。ほんの数秒だけなのに。
デュエットのオブリガートが常人には思いつかないうねりで、やっぱり天才だと確信する。
ラディゲでもなく、ましてやヴェルレーヌじゃなく(笑)、そうか、ボードレールなんだ・・・と勝手にちょっと頷く。

「ワインディングロード」
なんだかんだ言ってやっぱり大好きなんだ、この曲。
「七色の虹・・」での思い出の続きに目の前に広がった「振り返る時」を迎えた人の視界。後ろに出来た道、そしてまだ目の前に続く道。

「世界伝統のマスター馬鹿」
こないだラジオのバックに流れてた激しいのは、これだったんですね。
ギターがいい。時々挟まるドラムの三連符がぐっと来る。
まさにまさに「宮本さんしか歌えない曲」の最たるものかも。
これはまた別の意味で・・むき出しに「剥がれる」曲。でも激しいけど、言ってることはとっても優しい。愛を感じる。

「飛べない俺」

ここにきて・・・・ヤラレタ。

涙・・いや、そういうんじゃないんだ、なんか、上手く言えない。
「シグナル」や「通りを越え行く」や、何よりもあの「風」で経験した、内容もシチュエーションも全く違うんだけど、なんだろう、「心の持っていかれ方」が似ている。
私の葬式にはこれを流してほしい。
この美しさは異常。なんて透きとおっているんだ。
絵本みたいな、すごくカラフルな色が見える。明るくて少し深い、青と緑のグラデーション。
でも、クレーみたいにちょっと滲んでる。
宮本さんの加工された声と生の声の対比が、世界を立体的にしていて、何ともいえない生身の言葉が伝わる。
♪俺の魂がしみ込む街♪・・・「魂」という言葉が最高に相応しい場所を見つけたようだ。
個人的には、今の私そのものを歌ってくれているから・・・
ライブで聴いたら・・・ちょっとマズイ気もする。

バンド名そのものがタイトルになっていた、23年前のファーストアルバム。
「マスターピース(傑作)」というタイトルの、この21枚目のアルバム。
だけど、これが最高点でも終着点でもない。
これは「マスターピース」という名の中間点。
進化し続けるエレカシ。
日常という道端に咲く花を教えてくれるエレカシ。
すっ飛ばしてきた時をたぐり寄せて、また積み直し、重ねてゆこう。
私が真ん中に戻ってきても、そのドキドキはいつまでも変わらない。

※「追記」を付け足しました(2012.6.1)↑

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by saskia1217 | 2012-05-31 05:07 | エレファントカシマシ | Comments(0)

今日もまた日が昇る・・出かけてゆこう!
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