ダマされたのかなあ?〜NODA MAP「THE BEE」東京千秋楽〜

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現在公演中の舞台、NODA MAP「THE BEE」に関してネタバレがあるかもしれません。
これから鑑賞予定の方は、お気をつけください。










「水天宮ピット」って何処だ?
「水天宮」なんてちっとも見えない、ガンジガラメの高速道路のすぐ下に、それはあった。
なるほど、閉校した高校か。
その他にも、新宿の芸能花伝舎みたいに、役目を終えた校舎が演劇関係に使われるのは結構多いね。実際にそこを利用してみると、その落ち着き先としてのハマりっぷりに妙な安心感をおぼえるのが面白い。

野田秀樹さんの「NODA MAP」の番外公演「THE BEE」、東京千秋楽を観にいった。
前回2006年には観にいけず、その後の「パイパー」も見逃した。大体、野田さんが俳優として舞台に立つのは久しぶり、とかいう以前に、野田さんの作品も全く観たことがないという私、なのに今日はまたまた何の下調べもすることなく、会場に向かった。
それでも、どこからか漏れ聞いていた「THE BEE」のあらすじや舞台写真などから、何だかこれはあんまり「気持ちのよくない」お話なのか・・・という、テロンとしたイメージを持ってしまっていたので、(表面上)暗い話や怖い話や残酷な話をわざわざ体験しに劇場や映画館にまで行こうと思わない性分なもので、正直なところ今回もなんとなく躊躇していたのも事実。

でも。
全然、怖くなかった(笑)。
むしろ、おもしろかった。
コミカルな部分を残しておいてくれるからなのか、舞台の現実的な大きさや役者の動きなどが視覚的にも「こっちとは一線を画した世界」という透明なバリアが感じられてある意味「安心感」が得られるからなのか・・・

たしかに、この話で起こっていることは残酷で、醜くて、暴力的で、おどろおどろしくて、背筋がゾッとする代物。
「平凡だった主人公が、ふとしたことで狂気に陥っていき、それがエスカレートして・・」という流れは、観客からすれば予測どおりの進行でもある。観ている者が予測するとおりのことが起こり、ラストのセリフまでもが、ベタといえばベタなのだ。

とはいえ私は、野田さん演じるサラリーマンが、一刻一刻残虐性を帯びていくのを見ながら最後のほうまでずっと「自分の日常」について考えてしまっていた、まんまと。
私は毎日毎日、少しず〜ついろんな人やモノを傷つけながら、今までにもその中の何人かをすでに殺してきてしまったのかもな、しかもそれに今も気づいてないのかもしれない、と。
あるいは、今日見たストーリーのように、その「殺人」でさえも、今現在の自分の日常に、ニコニコと溶けこんでいるのではないか、と。

な〜〜〜んて、ね。
ははは。

そう、そんなことを思いながら観ているうちに、最後のほうでちょっと感じたのだ。
本も音楽も映画もそうなんだけど、特に「舞台の演劇作品」て、何かと「象徴」とか「伏線」とか「作者は何がいいたかったんだろう分析」とか、そんなことばっかり考えたり論じられたりする「イメージ」がある。頭でっかちな。
果たして、そういう思考って必要なんだろうか?
今日だって、スクリーンに映し出される「蜂」やその羽音、それに連動する野田さんの動き、それから延々と流れる「蝶々夫人」のハミングコーラスとか、何だ何だ、これは何なのか、ってすぐ思っちゃう・・・思ってしまう自分がイヤになる瞬間が、ところどころでやってくるのだ。
たしかに「ハミングコーラス」は、体温気温湿度が全て高めで、鬱陶しく息苦しく、不快な西日のような視覚的な世界に重ねられることによって、ヒッチコック的な恐怖感を思い出させるには効果的だった気がするけれど。以前、マンドリンとチェンバロのための「殺意」(組曲『夜を泳ぐイルカ』)を書いたときの感覚と同じものを感じたけれどね。

そう、よく言えば「客観的」に見ている自分。
私は本や映画やテレビドラマなんかに、ものの数分でどっぷり没入してしまうタイプなので、大抵は「まんまと」ダマされる。
のだが、今日はどこか、物理的な「舞台そのもの」を、そしてそこで起こっていることを「ふ〜ん」と観ていられる不思議さがあった。最後の最後だけで、だったけど。
それがもしかしたら、野田さんのスゴイところなんだろうか?
演劇マニアでもない私には、よくわからない。

しかし。
近藤良平さんが、あんなにしゃべっているのを初めて見た(笑)。
舞台の上の方だから、そこにいること自体の違和感はもちろん全くないし、立ち姿(特に冒頭の警官役)や、ダンスみたいな動線の動きの滑らかさにはホレボレしたのだけど。
セリフがたくさんあるから、スゴイなあ、と。
子供を演じている時など、ただひっくり返って「動かない」ときの「固くない静止」が印象的。
宮沢りえさんの切れ味、美しさ、柔らかさも素敵だったし、池田成志さんのベッタベタな刑事姿やちょっとおかしいシェフ姿も面白かった。池田さんは声が耳に残る。
いちばんビックリしたのは、野田さんの完璧な「股割り」だったけど。

おもしろい歌詞がついた「剣の舞」が、夢に出てきそう(笑)。
それが、いまのところ一番の「恐怖」。

終演後にパチリ(近藤さんのTシャツに注目!)。
楽しかったです、ありがとうございました!
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Commented at 2012-05-21 21:29 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by saskia1217 at 2012-05-21 22:06
↑Aちゃん
そうですね、すごくよく分かります。
私も同感でした。
そのニュアンスをどうもうまく言葉で説明できないんですが・・・。
「感動屋さん」もたぶん、いろんなタイプがあるのかもしれません。
最近あまり「演劇」の舞台を観ていなかったので、これからはもうちょっといろんな種類のものを観たいなと思います。
by saskia1217 | 2012-05-21 02:42 | 感じろ、考えろ、思え! | Comments(2)