「桜の花、舞い上がる道を」の日

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・・・っていう日を、毎年春にはな〜んとなくやることになってる(笑)。
昨日はそれに打ってつけの日だった。
初夏のような陽射し、青い空。
晴れていても空が白っぽいと、桜はあまり美しくない。
東京の桜は土日に満開という予報だったから、人混みが本当に嫌いな私はそれを避けて、幸運にもオフだった昨日、桜の旅に出かけた。

何をやるかっていうと、満開、それも風が吹くとちょっとはらはらと散るくらいの桜の樹々の下を、エレカシの「桜の花、舞い上がる道を」をたっぷりな音量で聴きながら歩く、ただそれだけなんだけど(笑)。
数年前、目白の自由学園明日館前で偶然そういう状況になった時あまりにも気持ちがよかったものだから、以降、桜の季節にはなんとなくそれをまたやってみたくなるのだ。

いつものお散歩エリアには桜の名所がたくさんありすぎてとても一日では回りきれないので、行き先に迷ったが、結局いちばんの馴染みの道へ。
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巣鴨近くのJR脇の道、駒込駅まで立派なソメイヨシノ並木が続く。巣鴨駅近くのどん詰まりには地味ながら「ソメイヨシノ」の記念碑もある。
線路の上にまたがる何箇所もの橋の上には、わざわざ大きなカメラをしつらえている人、通りかかったついでに足を止めて携帯で写真を撮る人・・・
隣り同志に立つ見ず知らずのお互いが「綺麗ですね」「いい日になりましたね」と笑顔で言葉をかわす。そこにいる皆がひとりのこらず笑顔。
普段は立ち止まる人などいない場所がそんなふうに賑わった小さな一幕が、いかにも日本の春らしい。
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染井の桜。
いつもとおり、霊園に入ったらiPodをしまう。やっぱりこの土地では、ここの空気と光、鳥の声と風の音のなかで桜に包まれたい。
霊園は毎年本当に見事だけれど、花の季節でないここの桜の樹が私は大好きで、よく見にくる。
夏、秋、冬の桜の姿が、いつも何かを語ってくる。
見よ、この大いなる幹を!
この幹あっての花の美しさだ。
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いつもは静寂に包まれているこの場所も、桜目当ての人たちが駒込駅方面からゾクゾクとやってきていた。それでもここはほどよい「静寂」の中で桜を見ることができる。
そんな中でも樹木の手入れをしている係の人の姿も。本当によく行き届いた自然だ。
「警戒」の対象になってるお前も、今日ばかりはのんびりお花見なのかい?
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江戸時代には川が流れていたこの一角にある樹々は、特に樹齢の長いものばかり。
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その並木のはずれから、お隣の慈眼寺の墓地をのぞむポイント。ここには芥川家、谷崎潤一郎、司馬江漢などが眠る。
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桜のなかを延々と歩きまわってきてふと、これだけ見てもこの花に飽きるということがないのに気がついて唖然とする。それぞれの姿は違い、その歴史に差はあれども、どこのソメイヨシノも結局のところは同じ花なのに。なのに、飽きるどころかどんどん引き摺られてゆく、殆ど「無意識」になるくらいまで。
窒息するような桜の渦に取り込まれそうになりながら、この花が「狂気」や「死」と密接に扱われる理由をあらためて体感したような気がした。
ソメイヨシノの花の色の持つ「淡いピンク色」には癒しとか安らぎの効果があるとテレビでいっていたが、安らぎを通り越したところにある沼のような心地よさが、その色の行き着くところなのではないか。
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なんて思いながら、霊園を背に桜のない道を一息つきながら歩く。
そうして辿り着いたのは、桜のある「染井稲荷神社」。
いつも見ている姿とはやはり別格かもしれない。
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目の前の道を桜見物の人が大勢行き交うのに、この神社に入る人は殆どいない。
そしてここが、元祖「ソメイヨシノ」の里、駒込小学校前の通り。
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提灯が吊るしてあるから夜はほんのり灯りがともるのだろう。
染井をあとにし、最後に「歴史的大レジャーランド」飛鳥山へ。
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さすがの「名所」は、残念ながら、というべきか、もう完全に「お花見仕様」に。
平日昼なのに(笑)ブルーシートの上の人、人、人。子供たちの歓声。食べ物の匂い。カメラの放列。お散歩犬のパレード。そして係の人が必死で作業するゴミの山。
視線を斜め上以上に保てば、そこはきっと江戸時代さながらの空と桜。いやいや、歓声やご馳走の香りはきっとそれほど変わらないだろう。上野と違ってお寺のないここは無礼講だったのだから(というかそのために作ったんだから・・・笑)。
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じつは桜の季節に飛鳥山に来るのは初めてだった。
染井で耳からはずしたiPodを、飛鳥山に足を踏み入れたときに再びオンにした。
そしてそれは正解だった。現実の音、雑踏と喧噪を避けて、視覚だけを拝借する。風だけを受け入れる。そうしておいて、この浴びるほどの桜吹雪の中で聴くのが「あの曲」には相応しい。
ベンチの端にちょっぴり空いた一角に腰をおろし夢中で書き物をしているうちに、結構時間が経ったらしい。頭上から雪のように花びらが降ってくるのに驚いて我にかえったら、陽が傾いて空がサーモン色になってきていた。

本郷通りを渡る歩道橋にのぼって、飛鳥大坂のゆるりとした通りをてっぺんからぼんやり見下ろす。気づいたらまわりにはカメラを構えた人がいっぱい。
あ、都電ね、桜をバックにね。
長いこと待って、私も一枚。
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明日はもう、雨が降って、東京の桜は散るだろう。
さよなら、桜、おつかれさま。
精一杯咲いて、疲れたね。
また来年。
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by saskia1217 | 2012-04-10 23:29 | 感じろ、考えろ、思え! | Comments(0)