チェンバロの日

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東京の桜が満開になった先日の日曜日、イベントに参加するべく世田谷へ。
その名も「チェンバロの日」。
すごい(笑)。

最近「日本チェンバロ協会」というのが設立されたのだが、その発足記念イベント。
午前中にイースターの奏楽をやって、結構ヨレヨレのまま阿佐ヶ谷から成城学園へ移動。駅からバスに揺られるその道の両側には、見事な桜並木。う〜ん、なんかさすがに「世田谷の桜」って感じだ(つまりなんとなくハイソな感じ・・笑)。
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会場は世田谷区岡本にある「松本記念音楽迎賓館」
パイオニア創業者で音楽鑑賞教育振興会を作られた松本望氏の邸宅で、現在はそのご遺志により音楽の様々な用途のために開放されている。
この振興会といえば、子供の頃いつも「音楽の友」に、音楽感想文コンクールの募集が載っていたことを懐かしく思い出す。
閑静な住宅地のなかにたたずむ立派な邸宅と見事な庭園。ホールにはチェンバロやパイプオルガンもあり、お庭にはお茶室も。
バス利用なので多少行きにくい印象もあるけれど、その分「駅前」では得られない、音楽をしたり聴いたり心静かに豊かに過ごすには貴重な環境。
この日のお庭も、見事な桜越しに絶景が。
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さてさて、肝心のイベント。
協会のHPにはプログラムや当日の報告が載っているので是非ご覧いただきたいのだが、とにかくこの協会が出来たこと自体が奇跡的に素晴らしいことだと、個人的には思っている。

大体「チェンバリスト」という同業者たちが、複数同じ場所に居る、ということが珍しいのだ。
仕事の現場では大体の場合、鍵盤奏者は1人で事足りる。受難曲、オラトリオでオルガニストと2人、くらいが関の山。バッハの複数のチェンバロ協奏曲だって、コンサートのプログラムにのる機会はたぶん2年に1回くらいだろう(苦笑)。
教育現場で一緒に仕事をすることはあっても、そこでは自分たちの演奏や音楽のことよりも、学生や学校の話で精一杯なことが多いし。
過去何度かこのような会を作ろうという動きはあったらしいけれど、いつのまにかたち消えになってしまった、というのも頷ける気もする。
一緒に何かをする機会が少ない→必要がない(オルガニストのように練習楽器や練習場所の情報や便宜の面で横の繋がりを強くする必要もあまりない)→べつにいいか・・・、のような流れは容易に想像できる。

それでも今回、かなり大きな組織になったようなのは、すでに亡くなられた世代を含めて長年チェンバロやチェンバロ教育に携わってこられた先輩方や、現在の日本のチェンバロを取り囲む現状を知ろうとする危機感や未来への思いなどに突き動かされた現役の演奏家や教育者の方々、そんな思いが、有志の方たちの大変なご尽力によって今ようやく結実した、ということなのだろう。
そうだよなあ、必要かもなあ、とのんびりと感心していた私も、遅ればせながら先日やっと入会した次第。
チェンバロは好きだし、これからもチェンバロは弾いていくけど、これを機会にもうちょっと真剣にチェンバロのことを知らなきゃいけないなあ。
弾かなきゃなあ。
考えなきゃなあ。
(今頃ちょっとだけ、そんな真面目なことを考える自分に吃驚・・・苦笑)。

この日私が参加できた午後のイベントは、日本の「第一世代」と呼ばれる演奏家およびチェンバロにまつわるお仕事をされてきた先生方5人によるシンポジウム。
ランドフスカ、エタ・ハーリッヒ・シュナイダー、イゾルデ・アールグリムなどすでに「歴史上の人物」的な響きのする名前が出されて、生き字引のような方たちがリアルなエピソードを滔々と話される。お一人ずつでも3〜4時間くらいゆっくりお話を伺いたくなるような、そんな興味深くて面白いものだった。
我々の世代が教わり大変お世話になった方たちなので、お目にかかれるだけで大変懐かしく嬉しかったのだが、それぞれのご経験や若い人たちに望むことなどを伺っていると、あらためて音楽家として生きてこられた道のりと固い決意と、チェンバロという「敢えてこの楽器を選んでやってこられた」その情熱を後世にどうにかして伝えたい、という思いも感じられて、上記のような「反省」を私もちょっとしてしまったのだった。

どのジャンルでも、どの分野でも、音楽家が複数集まるというだけでそれは結構とんでもなく濃く、個人個人のキャラが強いあまり、ときには面倒くさく大変なことも多いのは承知の事実。でも実際集まってみると、やはり複数になる蓄積のメリットはものすごく、学べることがたくさんあるという経験をずいぶんしてきた。
なので、この集まりにもきっと今後、思っても見ないような素敵な化学変化、相乗効果、突然変異・・なんかが起こるのではと期待できるような気がする。

いつまでも「若手」のつもりでいたけれど、考えてみたらもちろんもうとっくに「若手」ではなくなっている。
日本の第何世代に当たるのかよくわからないけど(3代目くらいなのかな)、我々が教えた人たちはもう世の中に出ているわけだから、それを考えるともうそろそろ我々も大きな目で音楽界を見て、その中で受け継ぐべきものは受け継ぎ、新しく築かなければならないことは創造し、上の世代からも下の世代からも刺激を受けつつ仕事をしていかなければならないんだなと思う。
受け継ぐことって、もちろん「音楽」の内容とかじゃない。
日本でチェンバロを弾いてきた、弾いている、弾いてゆく、ってことの精神と心なのだと思う。

ところでこの協会、「個人会員」はプロの演奏家や製作家だけれど、それ以外プロでなくてもチェンバロを弾く方、チェンバロが好きな方などもお気軽に「サポーター」として登録していただけることになっている。
今後、コンサート、公開講座、公開レッスン、イベントなどが計画されると思うので、興味のある方は是非入会していただき、ご一緒に盛り上げていければ嬉しいと思う。
詳細はHPまで!
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by saskia1217 | 2012-04-10 15:20 | 感じろ、考えろ、思え! | Comments(0)