悲しみの果て

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「悲しみの果てに 何があるかなんて
俺は知らない 見たこともない」

あたかも誰にでも思いつきそうなのに、誰がいったいこんな詞を書けただろうか。
この曲を初めて聴いたときからずっと、そう思っていた。
昨夜のフジテレビの生番組でエレカシが歌ったのは、この「悲しみの果て」。
1996年、宮本さん29歳の時の作品。

震災後のこの国全ての人にむけての番組で、出演したアーティスト27組がそれぞれの演奏と、そして殆どが短い言葉でのメッセージを付け加えていた。
テレビに、それも生番組にあまり出ることのないエレカシの出演を、どこかに重苦しい何かを持ったままの自分は、唯一それに寄りかかるようにその出番を待っていた。
嬉しいとか、楽しみとか、期待する・・とは違うような。

槙原さんもゴスペラーズも、いい声だなあと思いながら聴いていて、CM明けにいきなり映った宮本さんの険しい表情と目に思わず身体が固くなった。
その瞬間に緊急地震速報がけたたましく鳴ったので宮本さんのコメントは殆ど聴こえず、一瞬の不穏な空気をも貫いてそのまま演奏が始まる。

(ちなみに後で「速報は大事だけどコメントが聴こえなかったのは残念だった」と話したら、ある人に「でもあの警報で、たくさんの人がテレビに集中したはず」と指摘され。
ふ〜む、なるほど、そういう考え方も・・・。そして揺れは来ませんでしたね)

まっすぐな声にまっすぐな言葉、まっすぐに見据える目の力。
宮本さんがその瞬間にどんな思いでそこに立ったのかが、想像できるような。
6人の音が、テレビを通しているとは思えないくらい届く。
特別なコメントではなく、ただ一言「俺たちの希望の歌だと思って歌っている歌です」というメッセージも、そしてオンタイムで聴いたときは何かそこに特別な気持ちや素晴らしささえ感じた「悲しみの果て」もじつは「いつもとまったく変わらない、いつもと同じように」まっすぐで真摯な、そして「不必要な衒いや力などまったくなかった」演奏も。
すべてが、ほかの誰でもないエレカシそのもので。

キャリアあるプロのミュージシャンでも、たった1曲をポッと演奏するのはたぶん、ライブの中で歌うのとは違う難しさがあるはずだ。(自分がそうなのでそう思ってるだけかな?)
あの場で、あの空気で、しかも2分半という一瞬に、もちものの最大限をバシッと出せるのは、今更ながらスゴイ。
つい2ヶ月前に同じフジの「FACTORY」で生で聴いた「悲しみの果て」を今見たら、昨日とある意味「同じ」演奏だったから、そのことに感動。
本当のプロだ。

とにかく歌が素晴らしかった。歌を、音楽を、きかせてくれた。
そして、そう思えたミュージシャンはエレカシだけではなかった。
森山直太朗さんの「桜」はアカペラからインストの入りというドラマチックなアレンジで、その力を倍増させていた。
ゆずの「Hey和」もまさに今この時に歌われるためにあるような音楽で。
尼崎のライブ会場から中継のさだまさしさんは、懐かしい「主人公」。10代の頃大好きでいつも聴いていたこの曲、久しぶりに聴いてその歌詞をあらためて味わえた。
そしてこの日、スガシカオさんがバックステージで言ってらしたという言葉。
「歌うことよりも前に、まずこの場に来る覚悟を問われる」
それを感じさせてくれた何人もの「歌係」たちの真骨頂を目の当たりにした。

番組そのもの、またその画面や演出、いろいろな捉え方があったと思う。
私自身も場面によっては違和感があった瞬間もあった。
けれど、必要としている人、力と変えることができた人がいる限り、それは提供されるべきものだ。
今日、ジブリの新作会見での宮崎駿氏の言葉を読んだ。
「いまだ埋葬できずにいる多くの人を抱え、国土の一部を失いつつあるこの国で、アニメを作っている自覚をもって仕事を続けている。文明の模索と向き合う時期を迎えたが、今は軽々しく文明論を語る時期ではない」
そう、語ったり論争したりではなく、まずそれぞれが向き合わなければ。

この番組へのエレカシの出演を知ったときは、「悲しみの果て」は短くて残念とか、(非常に失礼なことだが)その歌詞が表面的に伝わったら嫌だなあ、などという僭越な思いも無くはなかった。
ほんと、失礼極まりないぜ。
「ココロに花を」とか「友達がいるのさ」のほうがいいのに、なんて思ってたりしたのだけど。
違った。
「悲しみの果て」でよかった。いや、この曲がよかった。
これは単純な失恋の歌じゃないんだ。

「涙のあとには 笑いがあるはずさ
誰かが言ってた 本当なんだろう」

「本当さ」「本当なんだよ」じゃなく「本当なんだろう」。
そこに真実をみる。
人がどうしても振り払えない不安と悲しみと不確実さ。
だから、何かに、どこかに、いつまでも頼りないグラグラした中にでも、希望「みたいなもの」を持つ、それが人間。
どう「がんばった」って無理なんだ。
嘘はつけない。
だから・・・「さあ、がんばろうぜ」でも「明日もがんばろう」でもなく、この曲が今、この時に相応しい。

「悲しみの果て」は誰も見たことがないし、考えることもできないけれど、
「悲しみの次」なら、たぶんすこしだけ時間をかければ、きっと誰にも想像することができる。

最後に。
ラストまで残ってフィナーレを歌った宮本さん、本当にお疲れさまでした・・・
元気に仕事をしていても、本当はどこか違うところが痛んでしまっている人も多いかもしれない。
弱ってしまって仕事ができなくなってしまったミュージシャンもいます。
来月スタートするエレカシの全国ツァーが楽しみ。
メンバーもスタッフも、そしてお客さんもみんなが元気で実現できますように。


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by saskia1217 | 2011-03-28 21:50 | エレファントカシマシ | Comments(4)
Commented by スノウ at 2011-03-29 12:00 x
緊急地震速報の「あの音」が入っていない動画、ありがとうございます。やっぱりあの音だけでビクッとなる人も多いかと思います。
私も「悲しみの果て」より聴きたい曲が・・・と思っていたもので、ほんと、失礼極まりなく・・・
素晴らしかった。感謝です。元気も出たし!!
Commented by saskia1217 at 2011-03-29 12:56
あの音、怖いですよね。
スタジオの出演者には警報入りのモニターは見えてないと思いますが。何より生の最中にひどい地震がなくてよかった。
どんな経緯であれ、とにかく今テレビで歌ってくれたことが本当にありがたかったです。
明日はある、って思えました。
あしたが〜あるのさ〜♪
Commented by 馬酔木 at 2011-03-29 22:41 x
この番組を「見忘れてた!」と気づいた時はもはやフィナーレで、しまったぁぁ~、と思っていたのですが、こちらのブログで、動画がUPされていることを知りました。初めてお聴きするエレカシ様(再生回数がすごい!)のほか、(私にとって)本命のさだまさし様をおかげで堪能できました。フィナーレにいないと思ったら、コンサート会場からの中継だったのですね。森山直太朗氏の「さくら」は、ふだんでも涙がにじみそうになるのですが、これは大迫力!アカペラの後にピアノと音が合っているところ、さすがプロですね。あー全部見るべきだった…。
Commented by saskia1217 at 2011-03-29 23:24
あ、馬酔木さまはもちろんご存知だとすっかり思っておりました・・・メール差し上げればよかったですね、ごめんなさい!
エレカシも楽しみだったのですが、さださんも何を歌って下さるのかな〜と楽しみにしていたんですよ。私は最近の曲を知らないのですが、今回はおなじみの好きな曲で嬉しかったです。
動画はすべて上がっているみたいで、ご覧になれてよかった!
絡みはなかったとはいえ、この面子が一同に会するところがまた興味深かったです。


今日もまた日が昇る・・出かけてゆこう!


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