よみがえり

・・・といっても、映画の話ではなく、私が今日見てきた楽器のお話。

世の中の人たちが、まず「楽器」というものをイメージした時、おそらく最初か2番目くらいに思い浮かべるであろう楽器。それは、ピアノ、だろう。
「ピアノ」のご先祖は、私がいつも弾いている「チェンバロ」なのだが、実際はチェンバロ→ピアノ、というふうに突然なにもかもが変わったわけではない。最初にピアノを造ったのは、イタリアのクリストフォリという人だといわれていて、それはだいたい1700年くらいのことだった。彼はそれまであったチェンバロをピアノを「造り変えた」のだが、現在彼が造ったオリジナルのピアノは、世界に3台残っていることが知られている。ローマ、ニューヨーク、そしてライプツィヒ。このうちライプツィヒの楽器は、留学した翌年の92年にそこの楽器博物館で見せてもらったことがある。残念ながら音は出ない状態だったが、すっかりくすんだ飴色になった姿をみて、まあよくも300年も残ってきたなあ、と本当にしみじみ思ったものだ。

今日会ってきた楽器は、久保田チェンバロ工房の久保田彰氏が、この夏完成された、このクリストフォリのピアノのレプリカ。オリジナルでは4オクターブだった音域を5オクターブに広げ、アクションも大変工夫されて、軽く弾きやすいものにされたそうだ。
こんな姿をしています。
e0081334_23592821.jpg

事前にお聞きしていたいろいろなお話から、ピアノ、そして今や普通にコンサートでも聴けるようになったモーツァルト時代の「フォルテピアノ」よりも、もっとチェンバロに近い楽器、近い音だと想像していた。ただ、やはりなかなか具体的な感じは予想できなかった。で、かなりドキドキしながら工房にお邪魔した。どんな時代の、どんな作曲家の、どんな曲がマッチするのだろうか?想定できうるあらゆるタイプの楽譜を、10冊ほどリュックに詰めて背負っていった(泣)・・・午前中に大学に用があったので、それを背負って一端上野まで行き、それから久保田工房のある新座までいった。音楽家はとにかく体力、脚力、腕力、気力(?)なのである。

木の香が心地よい工房に入ると、白木といった感じのクリストフォリピアノがいきなり目に入った。見た感じはいかにも「イタリアン・チェンバロ」そのままだ。イタリアン、って何だか美味しそうな響きだが、チェンバロにはいろんなタイプがあって、都合上国別に呼んでいるのである。
楽器の前に座って、弾いてみた。
「いや〜〜〜〜〜っっっ!!ピアノだ〜、これ」
(一同、笑)
e0081334_0173790.jpg

それは「ピアノ」だった、完全に。
もちろんチェンバロの命である「弦をはじく」機能がもはやないわけなので(ピアノは「弦をたたく」)当たり前なのだが、楽器の外観と、出てきた音の間に、最初はかなりのギャップがあった。が、この楽器が初めて造られてから、次のタイプのピアノが活躍し始める頃までの約60年間に作曲された、いろんな曲を弾いてみるうちに、なかなか気持ちよく弾けるようになってきた。

「音の出し方」が決定的に違うチェンバロとピアノ、でもそのどちらにも効果的な曲もあれば、明らかにそのどっちかでないとダメ、という曲もある。モーツァルト時代のフォルテピアノ(ワルターとかシュタインなど)でももちろんいいんだけど、ん〜、でもなんかそういう感じでもないんだなあ、という「微調整」に、このクリストフォリはぴったり収まる感じがした。
弾くのにちょっとコツはいるようだが、練習すればなんとかなるかもしれない。
e0081334_0474618.jpg


というわけで、おもしろがって弾きまくって、目がかすんできたので、ふと時計を見ると、すでに4時間半経ってしまっていた・・・。
久保田さんの工房は、窓から畑が見える、実にすか〜っとする光景の中にあって、かなりお気に入りである(・・・勝手に・・・)。薄く影ってきた夕暮れのなか、再びリュックをしょって、畑の中の道を下って工房を後にした。目の前に広がった空にはお月様、道の脇にはコスモスや菊の花、ひやっとする秋の空気、そして思わず足を止めて聞き入ってしまった美しい虫の声・・・
幸せな気分で、駅に向かうバスに乗り込んだ。

たゆまぬ研究をもとに多くの技術改良を重ねられ、素敵な楽器を造られた久保田さんに、感謝の一言。近いうち、コンサートで皆さんにもお聴きいただけることになりそうだ。予告はブログでもしますので、お楽しみに!!
e0081334_0341415.jpg

(なお、この楽器のことは、私がよくお邪魔している「某閑人」さんのブログ(http://kcia.moe-nifty.com/moxam/)の9月11日の欄にも、製作者の久保田さんと共に紹介されているので、ぜひぜひそちらもご覧下さい。
[PR]
Commented by 某閑人 at 2005-10-14 01:29 x
おー 弾きに行かれましたね!
本当に 弾きやすいクリストフォリだよね
1217さんは どんなプログラムを 組むのかな、、、
ずっと前に言ってた「アノニ○ス計画」とか
どう?
Commented by がたまり at 2005-10-14 01:42 x
へええ、なんだかすっごく興味深く読ませていただきました!
本当に見た目はチェンバロですよね。
どういう音なんだろう。。
演奏会楽しみです!わくわく☆
Commented by saskia1217 at 2005-10-14 01:44 x
いやいや〜、そういやそんな企画あったっけ。それはチェンバロ用に温存しときます。今回は1700~60年のドイツ、イタリアになりそう。でもヘンな作曲家のもやります(笑)。
Commented by saskia1217 at 2005-10-14 01:46 x
がたまり様
「遠足」仕様で学校いってごめんなさい(笑)。おもしろかったよ〜。今度一緒にいきましょう。演奏会決まったらお知らせしますね。
Commented by がたまり at 2005-10-14 02:35 x
ぜひ!楽しみにしてます!工房見学も演奏会も♪

今なんとかレポートが終わってやっと寝られます~(>_<;)
書きながら、メンデルスゾーンのPaulus(CD2枚組)を5回くらい通して聴いた気がします。。

あ、10/30の阿佐ヶ谷教会、やっぱり行けそうにありません・・・本当に残念なんですが、15時集合→ゲネなんです。。
Commented by saskia1217 at 2005-10-14 14:12 x
メンデルスゾーンのパウロ、いいよねえ。大好き。
疲れた時はメンデルスゾーンの初期のシンフォニー聴くと、すがすがしくなっていいですよ。
30日は残念ですが、音楽会はまたあると思いますので、その時はまたご案内しますね。カンタータがんばってください。
Commented by YUKI at 2005-10-15 23:35 x
いやあ!うつくしい楽器ですねー!(^^)
ご披露の際はぜひ伺いたいです。どんな曲目が上がるのか、興味津々。
Commented by saskia1217 at 2005-10-17 00:40
YUKIさま
そうですね〜、楽器ってやっぱり見た目の美しさもすごく大きいと思う。というか、やっぱり美しい音を出す楽器って、美しい形をしているように思う。逆はあてはまらないかもしれないけど。
by saskia1217 | 2005-10-14 00:47 | 感じろ、考えろ、思え! | Comments(8)

今日もまた日が昇る・・出かけてゆこう!


by saskia1217