エレファントカシマシ新春コンサートin武道館

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3時間、30曲。
楽しみにしていた長い長い時間が、気がついたら既に過去になり、1月9日はもうやってきていた。

エレカシの新春武道館コンサート。
桜が終わる季節にここで彼らを聴いたのは、もう2年近く前になる。
あれからずいぶんたくさんの曲を、そして新しい曲を、その時々で聴かせてもらってきた。
静かな緊張と不思議な心静けさを感じながら、ゆっくりと田安門をくぐる。
北の丸公園の開けた空は、薄い紺青のグラデーションの中に上弦の月。
都会の冬の冷たい空気と、枯れ木の枝の美しさ。
目と耳に入ってくるもの全てが、これからの数時間に向かっている気がしてくる。

開演時間10分ほど押した頃に暗転。そして青の照明。鳴りだしたのはなんとドビュッシーの「月の光」のストリングスによるアレンジ。ほどなくして、いつのまにか登場していた蔦谷さんがキーボードでベートーヴェンのソナタ、通称「月光」の1楽章をかぶせて弾き進める。楽章半分くらい行っただろうか、突然トミのドラムが音程楽器たちを突き破るように始まり・・・
そういえば以前、エレカシも出た東京事変のSOCIETY OF THE CITIZENSの時、事変の登場シーンでマーラーの第5の4楽章「アダージエット」が同じように静かに流れたなあ。あの時も衝撃だったけど、今日のはもっと神秘的な空気。
「お〜月かぁ〜」と、当然「moonlight magic」が始まるのかと思いきや(短絡的すぎ・・)、全員でのイントロのなか最後に1人で登場した宮本さんが歌いだしたのは「奴隷天国」。
う〜ん。考えましたなぁ。
ストリングスが音量的にあまり聴こえなかったこともあって、そこに入っていることに気づかないほど全く気にならないアレンジ。

個人的にはもうすっかりお正月気分は去っていたが「イェ〜、お正月どうですか〜、エブリバディ!」と言われて、一気に目出たい気分が戻ってきた(笑)。
武道館入り口の大きな大きな門松や、特大鏡餅なども気分を盛り上げる!

今回のアルバム「悪魔のささやき」から全曲と、「starting over」以降の曲がプラスされてていいバランスだったですね。
ま、私の場合、どの時代の何の曲やってくれても、もうなんでもいいのです。どれも好きだし、どの曲でも嬉しいから。
とってもいい声が前に向かってまっすぐに出てた。あたかも声が目に見える線になって、暗闇を突進していくような、そのくらいの力。

「お正月からありがとう〜〜・・・俺たちも、たぶんみんなも楽しみにしてきて・・・見えますか〜〜っ?・・・(2階席最上部を指して)俺、あそこまで行ったんですよ。よく見えるんだよ・・・」こんなMCで始まる。
ライブ始まり定番の「今はここが真ん中さ!」に続いての「脱コミュニケーション」はイントロのギターソロのエコーがZeppの時より強かったのが良かったなあ。それだけ間も大きいから、大きい会場ではインパクト大。
「夜、ひとりでこんなふうに思っていました」と始まった、大好きな大好きな「moonlight magic」、やっとやっと生で聴けて本当に嬉しかった。アコギの響きが美しい。広い空間でやるとその神秘さがもっと広がる。
「旅」に続いてぽつりと始まった「九月の雨」は、冒頭の♪ヨロレイン♪の「音」っていうのかな、発音された声そのものが、生だととても美しかった。響きが届く感じ。印象的なドラムの合いの手が、明らかに「ドラマーのドラム」だったのが新鮮。宮本さん自身のドラムとはまたひと味違うリズム感。どっちも好きだけど。
この日私は朝から水曜本番のリハに出ていたのだが、その道中で頭のなかに鳴り響いて仕方がなく「あ〜今日、これを生で聴きたい!」と思っていた「翳りゆく部屋」。なので、単純に嬉しかった。大好きすぎる。いつものアレンジなのだけど、丁寧な言葉と絶叫の転換、場面場面のリアル感。後で考えてみたら、ライブでこれを聴いたのは一昨年の日比谷。そうか〜本当に久しぶりだったんだ。
「歩く男」そして、かなりの名演だった「珍奇男」。
「東京のね、夕日は綺麗なんです・・・ま、全国どこでも綺麗なんですけどね」と「赤き空よ!」。何度聴いてもつくづくいい曲。歌い出しからもう力がこもる。テレビの歌番組でこれ歌ってくれたらいいのになぁ、なんて。
「夜の道」、弾き語りは武道館でやるとその切々感がとんでもないものになる。口笛も強く美しく。「遠くから近くから時は流れる」が絶品すぎた。他の弾き語り曲でもそうなのだけど、宮本さんはひっそりした詩と音楽をフォルテで歌える人なんだよね。それがスゴイといつも思う。凡人なら(!)何の疑問もなく小さい声で歌うから。
「最近自分で聴いていい曲だな〜って感動しちゃって」(笑)←でもこれ基本!・・・「赤い薔薇」。ライブで聴いたのは初めてかなと思っていたら、2008年の日比谷で聴いてた。でもあの時はこの曲、知らなかった自分・・今、その首根っこ捕まえて説教したい(笑)。
「幸せよ、この指にとまれ」このあたりのシングル曲はあまりにも以前から聴きすぎているので「アルバム曲」という概念が全く無い。相変わらずいい曲だ。
そしてまた今回もお客さん全体が一気にあったかく沸いた「ハナウタ」。あの温度変化は何なんだろう、毎回「おおお?!」って思う。
今回、お客さんは全体的に静か(?お行儀いい?)だったような気がしたのは私だけか??
「彼女は買い物の帰り道」では金原さんと笠原さんがオブリガートで共演。それぞれエレクトリックの楽器を弾いてらしたんだけど、にもかかわらず私のところには殆ど聴こえてこなかった。バンドの音と宮本さんの声はかなりのレンジだったんだけど。この曲のラスト、全てのパートが最後の音を伸ばしてるときに宮本さんが小さくもう一度「愛してる〜」とエコーのようにつぶやいたのが素敵だった。
「ネヴァーエンディングストーリー」で、より琥珀色になったコンサートの空気。大人の音がする。
「シャララ」・・・この曲だったろうか?宮本さんがステージぎりぎり前方まで出てきて人差し指を口に当て「シ〜ッ」の仕草で始まったのは?・・前回の武道館でもストリングを生かした演奏で圧巻だったけど、これはやっぱり格別。一番盛り上がる♪あ〜、俺の生活は〜♪に続く蔦谷さんの華麗な半音階下降をどうしても期待してしまって(笑)自分の指が無意識に一緒に動いてるのに我ながら苦笑。途中でギターを放り捨てて歌いまくり、後奏で歌部分が少なくなったときにまたそのギターを拾い上げてがむしゃらに弾きだした宮本さん。曲が鳴っている間は最後の一音まで「なにかをやらなきゃ我慢できない」みたいに。後奏終わるまで待ってるなんて、とても出来ない。音に喰らいついて決して離さないその衝動の大きさがガンガン伝わってくる。
「明日への記憶」を聴くと、脳裏には池袋の空が浮かぶ。今日はチクタクがいっぱい。暗くはないのにどこか胸が痛む曲。
私には相変わらずイントロのリズムが捉えられない謎から解き放たれない(笑)「笑顔の未来へ」。でももう最初の音が鳴るとワクワクするこの明るさがやっぱり大好きだ。
今日はもう最初から何故か身体が軽くてずっと跳ね続けていたけれど、この曲は本当にじっとして聴いてなんかいられない幸福感が充満する。
「いつか見た夢を」はメディアでの演奏が多いせいなのだろうか、お客さんがとっても喜んでいるのがわかる。
ラストが近づいて「桜の花、舞い上がる道を」が来るとは予想だにせず。これは軽い驚き。私がエレカシに出会った頃の衝撃の数曲のうちのひとつなので、いつ聴いてもどうしても感慨深い。♪息もつかさず走り抜けた♪の言葉が胸に突き刺さる。
華やかな音が終わり「みんな、ありがとう〜!」ですぐに暗転したが、誰もハケていかないのが見える。何かが始まるのか?・・・そのうちに鳥のさえずりが聞こえクレッシェンドしてくる。「朝」だ!・・そうか、これは、来るんだな!
スクリーンに日食が映し出され、雷鳴が轟く。お客さんが叫ぶ、叫ぶ。
「悪魔メフィスト」、宮本さんは「あの声」で歌いだした。言葉はよくわかんなかったのだけど、身体をふたつに折って歌い続けるその姿と声は全てを越えてしまっていた。コーラスがなかったのがちょっと残念だったけれど。メツブシみたいな点滅系の照明炸裂も手伝ってすっかり巻き込まれる。
会場一体盛り上がって・・・一度終了。

アンコール1曲目は「平成理想主義」。石くんのギターが始まったところで、嬉しくてドキドキした。思えばこれも3年前の野音で聴いていた・・・初めて聴くせいで頭のなかを?でいっぱいにして。今では最も大切な曲のひとつ。彼らがライブでこれを演奏したのはその時以来だったと後で知った。後半が好きすぎる。身体の中で涙が滲む。
「シグナル」が続く。この攻撃はやられすぎだろう。「昔の曲で・・・といっても40になってからの曲だけど・・・大人になって思うこと云々・・」
しんみりしきっていると、急に宮本さん、こちら客席に向かって「えっと、次、何やろうか?」(笑)・・・訊かれても!
「昔契約が切れた時に作った曲で・・・いやいや今だっていつ切れるかわかんないですよっ・・」
いやいやいや(苦笑)・・で「四月の風」。これも最初の頃打ちのめされた曲。
「せっかくお正月なので・・ここで目出度い曲を歌わせてください」と久々の「俺たちの明日」。
武道館でこの曲の大サビで全開になる照明が好きだ。
どんどんどんどん、歌いつづける、弾き続けるエレカシ。巻き込まれて吸い込まれていくお客さん。
いつもの赤い照明に変わって「ガストロンジャー」。今日は宮本さんはコーラスを歌わず。おろしたての黒シャツのボタンが目の前でプッチンと飛んで行くのを見た・・・。
「ファイティングマン」と続く。いつものように客席を指して「全員ファイティングマン!」と。テンポ上げまくりでトミがフル回転。すごい。こちら側もみんな必死でついてゆくのみ。

さすがにボロボロになりかかっているのでは、大丈夫かと思わせる間もなく、ダブルアンコールに登場。
この場面にこれ以上相応しい曲はない「待つ男」。
武道館+お正月=待つ男。
日の丸の下で。
これを歌う時の宮本さんは、顔が全く違う。演歌歌手に近い表情になる。本当に気持ち良さそうだ。
ラストのラストで「2011年、ドーンと行けよ〜〜っ!」と今年最初のエールを受け、おみくじで大吉を当てたような気分にさせてもらって息をつく。
「サンキュー、ありがとう!」に、思わず「ありがとう〜っ!」と叫んでいた。

「(こないだのZeppツァーと違って)今日は、こんな感じです」と最初のほうで宮本さん自身宣言していたように、まさに武道館という、大きさも空気もある種特殊な空間での「コンサート」。
ステージの全員が身体をガンガン使いながら、走り回りながら、叫びながらの3時間。なのに、最後にこちらのココロに残る「落ち着いた気持ち」は何なのだろう。
きっとそれが、プロの持つ凄みなのだろう。
説得力。与える力。
有無を言わさず突きつけられる、時には優しく手渡される何か。

出演者はともかくこちらは疲れは微塵もなかったし、あと武道館まるまる2回分くらい立って聴き続けられそうな力が残っていた気がするが、一晩経た今は何か「前向きな廃人」といえばいいのか、充足感と幸福感と、何だかよくわからない落ち着いた気分でいっぱいで、じつはひとつひとつの思い出を書く気持ちにはなかなかなれなかったのだけど。でも書きたい気持ちはあったので、書いてみた。

日本武道館、アリーナ最前列、センターより少し上手寄り。
柵につかまって立ち尽くした。
後ろが見えないので武道館という気が全くしなかったのと、空間に余裕があったので自分の身体全てでコンサートを堪能できた。
ありがとう。
いろんなことにありがとう。

3時間やってたなんて本当に嘘みたいだった。
一瞬だった。
でもその一瞬は必ず「永遠になる」から。
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Commented by スノウ at 2011-01-12 23:01 x
3日経ちますが、saskiaさんのレポですぐあの日に戻れます。あの日を言葉に残してくれてありがとう。(・・・ていつも思ってマス)
夜の道の「遠くから近くから時は流れる」のところ、思い出してはほぅっとなります。美しかったですね。
by saskia1217 | 2011-01-10 20:00 | エレファントカシマシ | Comments(1)

今日もまた日が昇る・・出かけてゆこう!


by saskia1217