風強く秋声野にみつ、浮雲変幻たり

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昨夜は強い風が吹いていた。
冷たい雨も混じっていた。
いつもより早い時間にテレビを消し、それほど寒くない部屋の中で本を読んでいると、ただその音だけが耳に届いてくる。

このまま本当の冬に突入するわけでもないらしいが、この風や雨を聞いたり、広葉樹の茶色く濡れた葉を見たりするにつけ、ますます「武蔵野」に特別な愛着を持って描かれた「秋から冬にかけて」の言われ得ぬ空気感が、まさに今この数日の空気になんとぴったりすることだろうと共感することしきり。

『自分は十月二十六日の記に、林の奥に座して四顧し、傾聴し、睇視し、黙想すと書た。「あいびき」にも、自分は座して、四顧して、そして耳を傾けたとある。この耳を傾けて聞くということがどんなに秋の末から冬へかけての、今の武蔵野の心に適っていることだろう。秋ならば林のうちより起る音、冬ならば林の彼方遠く響く音。』
『もしそれ時雨の音に至てはこれほど幽寂のものはない。山家の時雨は我国でも和歌の題にまでなっているが、広い、広い、野末から野末へと林を越え、杜を越え、田を横ぎり、また林を越えて、しのびやかに通り過く時雨の音の如何に幽かで、また鷹揚な趣きがあって、優しく懐しいのは、実に武蔵のの時雨の特色であろう。』
『日が落ちる、野は風が強く吹く、林は鳴る、武蔵野は暮れんとする、寒さが身に沁む、そのときは路をいそぎたまえ、顧みて思わず新月が枯林の梢の横に寒い光を放ているのを見る。風が今にも梢から月を吹き落しそうである。』
(国木田独歩「武蔵野」岩波文庫)

今住んでいるところに林は無いし、杜も無ければ田んぼも無い。
でもこんな文面を読んでいると、遥か昔の小さい頃確かに自分のこととして起こっていた、これと寸分違わぬ風景や音が頭の中に広がるのだ。
そうそう、あと匂いも。
乾いていない黒い土と、濡れた枯れ葉と、そしてたき火のような炭のような、焦げ臭くてちょっとツンとくるような煙が、全部混じったような匂い。
それが今でも私の中にある「秋」のイメージ。

子供の頃から変わらない井の頭公園や石神井公園の茂み、吉祥寺や東久留米や所沢あたりにフッと現れる雑木林に行けば、今でもたぶん出会えるのだけれど。
六義園みたいに綺麗に整えられた庭よりも、やっぱり雑木林が好きだ。
あ〜、散歩したい。

それと。
私はずっと「冬が一番好き」と言い続けてきたが、もしかしたら厳密には「秋から冬にうつる頃」が大好きなのかもしれない。
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by saskia1217 | 2010-10-27 23:49 | 感じろ、考えろ、思え! | Comments(0)


今日もまた日が昇る・・出かけてゆこう!


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